2017年07月31日
●2017年7月の鑑賞記録
7/11
〇レオナルド×ミケランジェロ展 ブロガー内覧会
超絶素描対決に始まり、ミケランジェロの全身彫刻「十字架を持つキリスト」で終わる。キリスト像は撮影可!(混雑状況で制限される可能性あり)
7/25
金沢21世紀美術館
Looking up from the Bottom of Leandro Erlich' s Swimming Pool.
Collection Exhibition 2 "Undying Life"
7/28
◎奈良美智 for better or worth@豊田市美術館
作家が長い学生時代を過ごした長久手からほど近い、豊田市での開催。世界の美術シーンで活躍し、30年目の卒業制作を試みる。代表作ばかりが揃い、今後も続く創作活動の、この瞬間でしか体験できない、渾身の展覧会。
導入部には、作家が子供の頃読んでいた絵本、学生時代に影響を受けた本、雑誌、画集等が並ぶ。反対側には、高校時代までに聴いたレコードジャケットがズラリと並び、音楽が流れる。若き日の作家と出会い、会場へ。
1階は初期作品。《花をあげよう》正面顔が2人に分裂。《Dead Flower》橙と緑の瞳、ナイフ、血、ランプ。《長い長い長い夜》1点だけ他より高く設置して、ポッと灯がともるよう。描き直し、つぎはぎ、荒い筆跡。
《ハートに火をつけて》立体のインパクト!正面少し歪んだバランスが、絵画の繊細さそのまま。その3方を囲むように絵画展示。ここでも《Twins I,II》が輝かんばかりに上方にポップアップ。
2階は立体。濃紺の壁、黒幕の天井空間に浮かぶ《Lonely Moon》、佇む《Rising Moon》。中には、作家の好きなものに埋め尽くされた創作現場。入場は4人まで。3階へと上がる階段の近くに瞬く星。
2017年07月11日
●レオナルド×ミケランジェロ展 ブロガー内覧会
三菱一号館美術館で開催中のレオナルド×ミケランジェロ展。そのブロガー内覧会に参加しました。
本展の見どころの一つである、ミケランジェロの全身彫刻「十字架を持つキリスト」が本日より展示されることに伴い、満を持しての開催。
今回の内覧会の見所(聴き所?)は何といっても担当学芸員さんによる展覧会の解説。
※画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
■展覧会説明
三菱一号館美術館学芸員 岩瀬 慧氏
三菱一号館美術館館長 高橋 明也氏
ナビゲーター 弐代目青い日記帳 主宰 Tak氏
展覧会について
両巨匠の作品は数が少ないので、借りるのも大変。
両者を対比する展示は日本では初めて。海外でも珍しい。
そのハイライトたるヴェッキオ宮殿での壁画対決は未完に終わったが、レオナルド、ミケランジェロの下には多くの弟子たちが集まり、世界の学堂、学び舎として機能していた。
イタリアから借りるのは大変。
前触れなくリストから落ちたり、勝手に追加されたり、また落ちたり。
作品が来ただけまし。
額縁の裏の金具が足りず、ハンズまで買いに行ったり。
序章:レオナルドとミケランジェロ-そして素描の力
右:レオナルド・ダ・ヴィンチ「少女の頭部/《岩窟の聖母》の天使のための習作」
最初の部屋は素描。
金属尖筆は地塗りした紙の上にけがく。
書き直しが難しく、技術の高さが問われる。
芸術家のファーストコンセプトが現れる。
レオナルドは左利き。右上から左下に線を引く。線を重ねて陰影をつける。
左:ミケランジェロ・ブオナローティ「《レダと白鳥》の頭部のための習作」
チョークは右利き。
頭部布はクロスハッチングが良く分かる。
《カッシーナの戦い》にも見られる、得意の削り取るような彫刻的描写。
II. 絵画と彫刻:パラゴーネ
レオナルド・ダ・ヴィンチに基づく《聖アンナと聖母子》
サライ筆とも言われるが、どれくらいホント?
聖アンナの顔の精度は高い。背景も良い。聖母の顔はやや甘い。
目の前でレオナルドから教わり描いたのだろう。
IV. 馬と建築
左:レオナルド・ダ・ヴィンチ「馬の前脚の習作/《スフォルツァ騎馬像》のための習作」
右:レオナルド・ダ・ヴィンチ「馬の後脚の習作/《トリヴォルツィオ騎馬像》のための習作」
英雄像を彫るのは誉れ高いこと。
彫刻家レオナルドの果たせぬ夢をなるべく拾い上げた。
V. レダと白鳥
左:レオナルド・ダ・ヴィンチに基づくレダと白鳥
右:フランチェスコ・ブリーナ(帰属)レダと白鳥(失われたミケランジェロ作品に基づく)
終章:肖像画
ミケランジェロ・ブオナローティ(未完成作品、17世紀の彫刻家の手で完成)十字架を持つキリスト(ジュスティニアーニのキリスト)
彫刻は二重の木箱に入れて温湿度を保って運搬するが、像がどちらを向いているのか、運搬の責任者に聞いても分からなかった。
破損のリスク軽減のため、なるべく動かす回数を減らすために1階に設置を計画したけれども、箱を開けてみたら反対だったので、結局向きを直した。
現場に入らないと分からないことが多々あった。
いわくつきの彫刻。
ローマのサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ聖堂のキリスト像の第一バージョン。
製作中に左の頬に黒い疵が出たため、ミケランジェロは制作を放棄。
後にベルニーニが彫り込んだとも言われる。
ミケランジェロ彫刻の全身像が日本に来るのは初めて。
左足に重心をかけ、胴をカーブさせる。コントラポスト。
左足、脚部、左手がミケランジェロの手による部分か?
背中、右手、顔は後世の手?
全裸。古代彫刻を意識。
図録はほぼ全て日本で書き下ろし。
イタリアはエッセイ1本のみ。
■感想
本展の特徴は何と言っても、冒頭の超絶素描対決。図版として何度も目にしてきた名品中の名品。その実物を日本で観る機会がくるとは思いませんでした。赤と緑の色面で明確に区分けする構成も美しい。
そしてミケランジェロの彫刻。小品2点に加えて、高さ2mを超える全身像が来日。しかも自然光の展示室。質も量も見応えたっぷり。
そんな展覧会を、企画した学芸員さんの解説を聴きながら廻れるのはありがたいかぎり。
目も耳も満喫しました。
「十字架を持つキリスト」に関しては、一般の方も撮影可能だそうです。
(ただし、混雑状況によっては制限する可能性あり)
■展覧会概要
「レオナルド×ミケランジェロ展」
会期:2017年6月17日(土)~9月24日(日)
開館時間:10:00~18:00
(祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は20:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜休館(但し、祝日は開館)
会場:三菱一号館美術館(東京都千代田区丸の内2-6-2)
http://mimt.jp/
主催:三菱一号館美術館、日本経済新聞社、テレビ朝日
後援:駐日イタリア大使館
協賛:損保ジャパン日本興亜、大日本印刷
協力:アリタリア-イタリア航空
公式サイト:http://mimt.jp/lemi