2017年03月31日
●2017年3月の鑑賞記録
3/3
◎竹中大工道具館
槍鉋と手斧で法隆寺を建てた驚き。唐招提寺屋根升斗栱の巨大さと、力の流れの美しさ。スケルトン茶室の原寸教科書的な分かり易さと、繊細さ。原寸継手を分解、組み立てることで、その複雑かつ精度の高い仕組みにビックリ。あっという間に時間切れで、再訪を期す。
ソードアート・オンライン ―オーディナル・スケール―
TVシリーズは観て、原作は未読。TVで観たかったアクションシーンが、美麗にダイナミックに展開するビジュアル面はとても素晴らしい!ラスボス戦最後の一撃のカットインは感動的。その反面、VRの後にARという技術進化の逆をいくような舞台設定、すでに無敵の主人公が終盤まで本気を出さないよう配慮されたような展開とサブキャラクターの動機。ネットゲーマーではない自分には、没入し辛く感じました。
3/4
〇ザ・コレクション@藤田美術館
建替え前、最後の展示。
今回はとにかく名品を見せる。大きい物が多く数を置けないため、前期後期でほとんど入れ替える。共通は曜変天目茶碗、金銅密教法具、玄奘三蔵絵(場面替あり)の3点のみ。前後期見れば、国宝9点は全て見られる。重文は51のうち14点。
〇台北 國立故宮博物院―北宋汝窯青磁水仙盆@大阪市立東洋陶磁美術館
神品至宝「青磁無紋水仙盆」を筆頭に、北宋女窯4点+景徳鎮官窯1点が来日。東洋陶磁所蔵の1点を加えた、水仙盆オールスター展。二度目はないかも。同時開催の「宋磁の美」でも「飛青磁花生」、「油滴天目茶碗」、「木葉天目茶碗」等がズラリと並び、本当に名品のオンパレード状態。名品とはこういうものだと、とにかく観る、観る、観るという感じ。
3/11
「君の名は。」展@松屋銀座
新海監督のインタビュー映像と設定資料を淡々と見せる構成。新海監督の目の下のクマがすごい。安藤作画監督の仕事っぷりもすごい。最後のRADWIMPSの歌詞コーナーの音楽が聴こえないのもすごい。
3/12
〇ミュシャ展@国立新美術館
スラブ叙事詩。色彩と明暗の美しさを背景に、群像と英雄と祈りが紡ぎ出す壮大な物語。音声ガイドを聴くことで、背景の読み込みもバッチリ!。あっという間に90分経っていました。大作を一堂に展示できる、新美の巨大な展示空間も大活躍!
3/16
アートフェア東京2017@東京国際フォーラム
S12ギャラリー玉英。野口哲哉さんのおじさんフィギュアと飄々したと話しっぷりが大人気。お向かいのS08香染美術。上根祐馬展 飛天の造形も良い。S14松本松栄堂。蕭白画が眼福。人通りが多く当たらないかドキドキ。N49靖雅堂 夏目美術店の村上裕二✖️ウルトラマン「恒点観測員304号、ウルトラセブン」。遠目からでも目を惹く、赤い勇姿がカッコイイ。おじさんホイホイかと思いきや、若い女性にも大人気。
3/25
内海聖史「遠くの絵画」@YCC Gallery
抽象絵画による空間アプローチ。柱を囲むように3方壁を建てた展示空間は想像以上に小さく、中心となる位置に柱があり、鑑賞には必ずしも向かない。じっと観ていると、小さな星々を散りばめた空間が立ち上がってくる気がして、興味深い。
3/30
蘇る!孤高の神絵師 渡辺省亭@加島美術
カフェのある美術館ナイト@6次元
『カフェのある美術館 (青い日記帳監修) 』の編集裏話から、青森、十和田と本書未掲載の美術館&カフェの紹介。十和田の美術に目覚めちゃったシャッター商店街店主さん、ご当地B級グルメのバラ焼きを経て、海外編へ。参加者はアートクラスターよりカフェクラスターの方が多かったようで、アウェイ感あふれる会場でした。
3/31
大英自然史博物館展@国立科学博物館
世界が秘密に満ちていた時代に、その秘密を解き明かさんと挑んだ先人たちの挑戦と成果の記録。そして、その挑戦はこれからも続く。
来客層は、子供連れとカップルと個人が1/3づつといった感じ。特に目立つのは、目を輝かせる子供たち。さすが科博の展示と思いました。
●大英自然史博物館展@国立科学博物館
国立科学博物館で開催中の大英自然史博物館展を観ました。
会期初頭から平日でも整理券配布しているとのことで、金曜日の夜間開館を狙って出かけました。雨の夜だったせいもあってか、待ち時間なく入館。音声ガイドも借りて、準備万端。
序章 自然界の至宝~博物館への招待~
ブラシュカ(父子)によるガラス模型。生物が生きていた時の色彩を保存するために作られた、ガラス製のタコの模型。
自然史博物館って何?という観客の疑問に、大判の鳥の絵、呪われた宝石、交尾中に化石化した三葉虫、キリンの頭の剝製といったインパクトある至宝の品々が並びます。
1章 大英自然史博物館の設立
古代エジプトのネコのミイラ。博物館設立の立役者を時系列順に紹介。医師であったり王であったり、地位と財力を持ち、博物品収集に情熱を燃やした人々。その多岐多彩に渡る収集品は、リチャード・オーウェンの働きかけにより、大英自然史博物館の創建へと結実。そのオーウェンの収集物の一つ。
2章 自然史博物館を貫く精神
ウィリアム・スミス『イングランドとウェールズ及びスコットランドの一部の地層の描写図』、『ウィルトシャーの地質図』。蒸気機関の発明により、石炭需要が飛躍的に増加した時代。地層の新旧関係や化石に基づいた地層の対比により作成された、世界初の地質図。その画期的な成果にもかかわらず、下層階級出身のスミスは不遇の時代を過ごす。
ダーウィン『種の起源』手稿 本能についての章の1ページ。裕福な家庭に生まれ、生涯定職に就かず、博物学に興味を持つ。若き日のビーグル号航海で得た成果の数々。種の始まりに関するライバル、アルフレッド・ウォレスからの手紙。そして、進化論”種の起源”の発表。
始祖鳥。種の起源発表後わずか2年後に発見された、最古の鳥類化石。『恐竜と鳥類が進化的につながっている』とする進化論の中心的存在。後に石の中に頭の化石が埋もれていることが発見され、羽毛をめぐる議論も含めて、現代においてもキーストーン的役割を果たす。
3章 探検がもたらした至宝
裸子植物の葉化石グロッソプテリス。悲劇の南極探検隊スコット隊の標本採集成果の一つ。大陸移動の証拠かつ、南極がかつては緑で覆われていたことを物語る。
4章 私たちの周りの多様な世界
コガシラクワガタ、ツノをもったハエ、プラチナコガネ、ミイロタテハ。偉大な発見の歴史は3章で一区切り。4章は身の回りの世界に目を向けます。金属のような光沢を放つ、プラチナコガネ等、昆虫の数々。
サーベルタイガー。絶滅した種の化石、剥製等。異様に大きな犬歯が特徴のサーベルタイガー。
5章 これからの自然史博物館
マントルの捕獲石。地球の表皮:地殻の奥のマントルの捕獲石。世界の秘密に迫るアプローチの一つ、地球そのものの物性解明の手掛かり。
世界が秘密に満ちていた時代に、その秘密を解き明かさんと挑んだ先人たちの挑戦と成果の記録。そして、その挑戦はこれからも続く。
来客層は、子供連れとカップルと個人が1/3づつといった感じ。特に目立つのは、目を輝かせる子供たち。そこが、さすが科博の展示と思いました。
2017年03月30日
●蘇る!孤高の神絵師 渡辺省亭@加島美術
加島美術で開催中の「蘇る!孤高の神絵師 渡辺省亭」展を観ました。
「孤高」「神」といった超絶技巧系を期待させるタイトルに加えて、チラシには「若冲に継ぐ天才画家」のフレーズ。異例の実行委員会形式+同時複数個所開催+作品集同時出版。さらにメイン会場の加島美術は、銀座線京橋駅徒歩1分。ビックリするくらいの立地の良さに加えて、段差解消のステップ等の古い建物(倉庫?)のリノベーションセンスがとてもモダン。期待が飛躍的に高まります。
1階。萩にうさぎの図。うさぎが5匹重なる構図が可愛らしく、掴みはばっちり。近づいて観ると、輪郭は博物学的な捉え方に感じられ、描線も塗りも意外とあっさり。目の描画だけ妙に生気が感じられる。勝手に期待していた超絶技巧系というよりも、とても上手な観察塗絵に近い感じ。「あれ、思っていたのとちょっと違う?」
雪月花図。雪に雀、月に花菖蒲(?)、薄墨に桜(?)。とても見栄えのする構図と色彩。近寄るとちょっとビックリするくらいに淡い描写。
さらに近づくと、雀だけは妙に写実的でしっかり描き込んであり、図鑑的。全体の詩情的な雰囲気と折り合っているような、バラバラなような不思議な按配。
2階。牡丹に蝶の図。本展のキービジュアル。遠目にも色美しく、近寄っても美しい。
牡丹の花弁の彩色の美しいこと!正に本展の華。紅白のコントラスト、白牡丹に黒蝶のコントラスト。
おそらくは本展に出ている作品は、省亭の画業のほんの一部なのでしょう。今回の再評価を機に、省亭の名品を観る機会が増えることを楽しみに待ちます。
2017年03月25日
●内海聖史「遠くの絵画」@YCC Gallery
YCC Gallery で開催中の内海聖史さんの個展「遠くの絵画」を観ました。
YCC ヨコハマ創造都市センターは、歴史的建造物「旧第一銀行横浜支店」を利用したアートスペース。玄関ドアを開いて天井の高いホールに入ると、正面にカフェ オムニバス。お茶して一休みしてから展示を観ようと、まずはギャラリーの位置を確認しようとすると、右手に小さな白いブースが。インフォメーションブースかと見ると、実はそこがYCC Gallery。「えっ、これだけ?」とちょっとびっくり。柱を囲むように3方展示壁を建てているので、中心に立つことができず、観づらい。
近寄って観ると、確かに内海さん。ひとしきり観た後に、カフェ オムニバスで休憩。ハンドドリップコーヒーとグリーンスムージーをオーダーして、内海さんのテキストを読む。
2011年の「シンプルなゲーム」は観ました。絵画の形を四角から星形にしてしまうという大胆なアプローチに驚きました。2012年の「方円の器」は残念ながら観ていませんが、再び星形を試みると。
「鑑賞者と絵が1m離れた関係性を保ったまま絵画のみが数万光年離れて輝いている」という状況設定と、それを成立させる剛腕っぷりがさすが。
高い天井のホールに仮設什器を置いただけのカフェなのに、とても居心地が良く、ドリンクも美味しい。入店したときは明るかった空が、気がつけば日が暮れて、窓の外は夜景に。展示スペースにも照明がついて、雰囲気がガラリと変わっています。照明のバラツキが星の瞬きのようで、星空っぽい。
いつも感じることですが、『近づいた時に感じる物質的な「絵具」の美しさ』と、『離れたときに感じるグラフィック的な美しさ』。この2面性がとても魅力的。
2017年03月16日
●アートフェア東京2017@東京国際フォーラム
東京国際フォーラムで開催中の「アートフェア東京2017」を観ました。
S12ギャラリー玉英。野口哲哉さんのおじさんフィギュアが大人気。ご本人が在廊で、その飄々とした話しっぷりも大人気。少しお話しできて楽しかった。
S08香染美術。いつも魅力的は造形を出展。今回は「上根祐馬展 飛天」。宇宙服を着た仏様が飛び交う。ギャラリー玉英さんのお向かいで、魅力的な立体造形ゾーンを形成していた。
S14松本松栄堂。なんと曽我蕭白の露出展示!筆あと、墨づかいまでもが見えるようで、ガラスがないとこうも変わるのかと、ひたすら眼福。人通りが多く通路面にも掛けていて、通行人が当たらないかドキドキした。
N18アルテクラシカ。いつも素敵な鑑賞空間を用意。今回は大通りに面したブースで、落ち着いて観られずちょっと残念。遠くからでも目につくので、出展側にとっては良い選択なのかも。
N49靖雅堂 夏目美術店。村上裕二✖️ウルトラマン。「恒点観測員304号、ウルトラセブン」。遠目からでも目を惹く、赤い勇姿がカッコイイ。おじさんホイホイかと思いきや、若い女性にも大人気。
記念に野口哲哉さんのホバリングマンを購入しました。
2017年03月12日
●ミュシャ展@国立新美術館
国立新美術館で開催中のミュシャ展を観ました。アールヌーヴォーの代名詞のような、華麗な装飾女性画で今でも人気の高いアルフォンス・ミュシャ。パリでの成功の後、故郷に戻り、16年かけて描いたという畢生の超大作《スラブ叙事詩》全20作が日本で観られるとあって、公開最初の週末にもかかわらず、開館前から行列が。
叙事詩の内容理解に音声ガイド必携と聞いたので、入口で音声ガイドを借りて中へ。作品リストはA4見開き両面印刷の豪華版。全20作の配置と図版が載っているので、鑑賞にとても便利。スラブ叙事詩は全3室に分けて展示。
第1室
第1室は「神話の時代」。
01《原故郷のスラブ民族》。天井の高い新美展示室の天井に届かんばかりに巨大な画面。青トーンの美しい星空の下、画面右下に侵入者から身を隠す人々、左上に両手を広げて立つ司祭。壮大な叙事詩の世界に一気に引き込まれる。
04《ブルガリア皇帝シメオン1世》。スラブ文学の立役者シメオン皇帝の下で文献の翻訳に勤しむ学者たち。功績は素晴らしいが、その下に使える人々は過労気味に見える。
05《ボヘミア王プシェミスル・オタカル2世》。「黄金の王」オタカル2世の姪とハンガリー王子との婚礼。主役であるはずの花嫁がどこにいるのかよく分からない。
06《東ローマ皇帝として戴冠するセルビア皇帝ステファン・ドゥシャン》。東西ローマをスラブ人皇帝が治める栄光の時代。叙事詩の中で一番晴れやかに感じられる。
第2室
第2室は「フスの改革とフス戦争」。
07《クロムニェジージュのヤン・ミリーチ》。
09《ベツレヘム礼拝堂で説教をするヤン・フス師》。
10《クジーシュキでの集会》。
フス三部作。先駆者ヤン・ミリーチ、フス、フス処刑後のクジーシュキ。仮設足場を効果的に使った構図が多い。
08《グルンヴァルトの戦いの後》。
11《ヴィートコフ山の戦いの後》。
12《ヴォドニャヌイ近郊のペトル・ヘルチツキー》。
フス戦争。戦勝も敗走もある中、遺体が並び、疲れた表情の人々から悲しみと悲惨さが伝わってくる。
13《フス派の王、ポジェブラディとクシュタートのイジー》。 画面中央の大窓から射す光で満ちる空間。その中心に立つ、赤い衣装を着たローマ法王特使。画面右側、怒りのあまりに椅子を倒して立つイジー王。美しい色彩の下に繰り広げられる、緊迫した瞬間。
14《二コラ・シュビッチ・ズリンスキーによるシゲットの対トルコ防衛》。画面中央に立ち昇る黒煙。右側にトルコ軍とシゲット防衛軍。左側に火薬庫に火を放たんとする提督の妻。要塞陥落直前の異様な雰囲気に満ちている。
16《ヤン・アーモス・コメンスキーのナールデンでの最後の日々》。改革の敗北、亡命先での指導者コメンスキーの最後の日々。寒々とした画面の中で、希望のランプが灯る。
第3室
この部屋はなんと写真撮影OK!絵柄も、戦闘や死体等のない、見栄えの良い絵が並ぶ。
館内は大入り状態でも、比較的落ち着いて鑑賞できます。新美のガランドウ大空間が大活躍。
15《イヴァンチツェの兄弟団学校》。青空と城壁と尖塔の手前に広がる緑の広場。右手の印刷所で聖書を印刷中。嵐の前の静けさのような、美しく穏やかな一枚。
19《ロシアの農奴制廃止》。スラブ叙事詩制作の資金援助をしたアメリカの資本家チャールズ・クレインが希望したテーマ。自由を獲得した瞬間にもかかわらず、宮殿は霧に霞み、色調も重く感じられる。
17《聖アトス山》。私にとっては、村上春樹の紀行文「雨天炎天」でおなじみの聖地アトス。画面下半分に修道僧、上半分に天使。斜めに光射す聖堂の中、現実と天界が重なる構図が美しい。
18《スラヴ菩提樹の下でおこなわれるオムラジナ会の誓い》。叙事詩制作時の現代を描く。顔を描いていないので未完成という扱い。
20《スラブ民族の賛歌》。青は神話、赤はフス戦争、黒は敵、帰路は自由と平和と団結をもたらす人々。叙事詩の終幕に相応しい、ヒロイックな構図と色彩。
驚くほど巨大で美しいミュシャの傑作を、新美のガランドウ大空間のおかげで、そこそこ落ち着いて鑑賞できるのが素晴らしい。一部写真撮影可の配慮もうれしい。双眼鏡をもって再訪せねば!
2017年03月04日
●台北 國立故宮博物院―北宋汝窯青磁水仙盆@大阪市立東洋陶磁美術館
藤田邸跡公園を散策した後、次の目的地へ。春の日差しが温かいので、大川沿いを歩いていくことに。川沿いをランニングする人たちが本当に気持ち良さそう。
中之島の大阪市立東洋陶磁美術館に到着。国際交流特別展「北宋汝窯青磁 - 考古発掘成果展」から7年ぶりの再訪。前回も思ったけれども、市立とは思えない立派な建物と物凄いコレクション。
特別展「台北 國立故宮博物院―北宋汝窯青磁水仙盆」を観ました。
今回は神品至宝「青磁無紋水仙盆」を筆頭に、北宋女窯4点+景徳鎮官窯1点が来日。東洋陶磁所蔵の1点を加えた、水仙盆オールスター展。二度目はないかも。
同時開催の「宋磁の美」でも「飛青磁花生」、「油滴天目茶碗」、「木葉天目茶碗」等がズラリと並び、本当に名品のオンパレード状態。名品とはこういうものだと、とにかく観る、観る、観るという感じ。
人の入りは「ちょっと混んでる」くらい。充実した作品解説を読みながら観て回るのがちょうど良い塩梅。
「人類史上最高のやきもの」、「天青色の極み」、「無銘の帝王」等、キャッチコピーも力が入っていて楽しい。
本美術館のメインコレクション「安宅コレクション」は、三井記念美術館に巡回した「安宅英一の眼」展で観ました。コレクション購入にまつわるエピソードの数々を簡潔に述べる伊藤郁太郎さんの解説が非常に興味深く、食い入るように読み、観たのを覚えています(なのに鑑賞記録を残していない。。。)。図録も後日、購入しました。同じモノを観ても、タイミングと見せ方で随分と印象が変わるものだと感じます。
●ザ・コレクション@藤田美術館
藤田美術館で始まった「ザ・コレクション」を観ました。全面的な建替え前の最後の展示です。
■2階展示
展示を観ていると、ちょうど学芸員さんの展示解説が始まったので、ありがたく拝聴。
初日にこんなに人が入るのは初めて。
今回はとにかく名品を見せる。大きい物が多く、数を置けないため、前期後期でほとんど入れ替える。共通は曜変天目茶碗、金銅密教法具、玄奘三蔵絵(場面替あり)の3点のみ。前後期見れば、国宝9点は全て見られる。重文は51点のうち19点。
《紫門新月図》。現存最古の詩画軸。下の絵の左側、去る坊さんへの惜別。
《乾漆伎楽面 酔胡従》。東大寺大仏開眼会で実際に使われた面。類例の復元物は誰も被れなかったとか。昔の日本人は今よりずっと小柄だった。
《金銅密教法具》。一部後補あり。色で見分ける。
《小太刀 銘国行》。十数年ぶりの出展。国行銘の太刀は現存二本のみ。
《花蝶蒔絵挾軾》。長いのは前面に置いてもたれかかったから。最古の蒔絵のため、粒子が大きい。
展示解説終了後、あらためて2階展示をぐるりと鑑賞。
《法隆寺五重塔伝来塑像 童子》。細かな上塗土が見えていて、部分的に彩色が残る。柔らかな土の造形。こんなに間近で観るのは初めて。
■1階展示
《木造地蔵菩薩立像 快慶作》。細かな彩色が鮮明に残る、本当に美しい像。奈良博の快慶展にも行かねば。
《曜変天目茶碗》。椀内のる瑠璃色の斑紋が本当に美しい。
《深窓秘抄》。流れるような文字が美しい(読めないけど)。虫食いまでもが模様に見える。墨がとても鮮明。
自然空調+部分自然採光下で、名品を鑑賞する。ここでしか体験できない時間を堪能しました。後期も行かねば。
出口でアンケート用紙に、「サントリー美術館のような照明設備の整備された環境で藤田美術館の名品を観てみたい」と書きました。本エントリーを書く際に調べたら、2015年に実際に開催されていたと知ってびっくり。ブログを遡ると、確かにメモ書きが残っています。図録も買ってあります。なんでその時の鑑賞体験をあまり覚えていないのだろう?と狐につままれた気分。
藤田美術館を出た後は、藤田邸跡公園を散策。次の目的地、大阪市立東洋陶磁美術館を目指します。
2017年03月03日
●竹中大工道具館
前々から気になっていた竹中大工道具館を初訪問しました。日本で唯一の大工道具の博物館であり、かつ、日本最初の工務店、竹中工務店の博物館です。
新神戸駅から徒歩3分。のはずが、駅を出ても影も形も見えずにキョロキョロ。Google Map 片手にウロウロしてようやく到着。
門を潜ると、奥の深い庇とガラス面が水平に長く連続。一見伝統的に見えて、実は大スパンの鉄骨アーチ型架構だそうです。
閉館(16時30分)まで1時間半しかないので、1階の特別展をささっと観て、目当ての常設展目指して地下1階へ。中庭をぐるりと回るあたりで急に階段の揺れが大きくなったので、「構造が変わったのかな」と思いました。
歴史の旅へ
『釿(ちょうな)と槍鉋(やりがんな)で法隆寺を建てた』というのは、図解本で読んだことはあるけれども、実際に観ると、その凄さ、大変さが伝わってきます。鋸がまだないので、大木に楔を打ち込んで割り、あとはひたすら斫って削る。屋根の垂木等もひたすら削る。槍鉋を使っている動画を観ても、本当に大変な仕事。よくもあんなに立派な建物が建ち、1,300年を経て現役なものだと感動することしきり。また法隆寺に行きたくなりました。
サブテキストには「ほぼ日刊イトイ新聞 法隆寺へ行こう!」が最適。
右手にあるのは二人用の大鋸。葛飾北斎『富嶽三十六景 遠江山中』でお馴染みの木挽きの場面。やはり、鋸は木造作になくてはならない道具だと感じます。
棟梁に学ぶ
「最後の宮大工」西岡常一の材料見積資料。これは図版でも見たことなかったので、こうやって部材拾いをしたのかとびっくり。観られて良かったです。
唐招提寺金堂の屋根・升斗栱の原寸再現模型。その加工はもちろん槍鉋。淡く波打つ表面を観ながら、その削り出しの手間を想う。大屋根から柱へと伝わる力の流れが美しい。
道具と手仕事
原寸継手を分解、組み立てることで、その複雑かつ精度の高い仕組みにびっくり。
和の伝統美
地下2階に降りる。茶室のスケルトン模型。原寸教科書的な分かり易さと、繊細さ。中に入れるのが嬉しい。
後半駆け足で回るも、あっという間に時間切れ。上階に戻ると、ミュージアムショップも閉まっていました。次回はたっぷり時間をとって来よう。