2017年02月09日
●青い日記帳×オルセーのナビ派展 ブロガー特別内覧会
三菱一号館美術館で開催中の『オルセーのナビ派展:美の預言者たち-ささめきとざわめき』。その一環である『青い日記帳×オルセーのナビ派展 ブロガー特別内覧会』に参加しました。
※会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
□ギャラリーツアー
高橋明也 三菱一号館美術館館長
Tak こと 中村剛士 「青い日記帳」主宰
・ナビ派の展覧会は日本では初かも。知られているのはボナールくらい。フランスでも再評価されつつある段階。
・高橋館長はオルセー美術館開館準備室に1984~86年まで在籍。その時の同僚がコジュヴァル オルセー美術館館長。彼の専門はヴュイヤールで、オルセーのナビ派コレクションを1,000点規模で増やしてきた。昨年はナッシュビルのコレクションをフランスへ寄贈させた。
・高橋館長は国立西洋美術館勤務時にモーリス・ドニ展を企画。また松方コレクションにはドニの作品が多く含まれている。ただし、ナビ派としてというより、当時の現代作家として収集した。
・盟友コジュヴァル館長の任期最後の年に、本展が実現。フランスで開催しても、トップレベルの展覧会といえる内容。パステル画等、移動の難しい作品も持ってきた。
・フェルメール、レンブラントといった西洋画がテカテカしているのに対して、ナビ派の絵はマットな画面。浮世絵と共通しており、日本人と親和性が高い。
・ナビ派は3次元のイリュージョンを作らない。自然主義を捨てて好きなように描く。例えばフェリックス・ヴァロットン《化粧台の前のミシア》の変な手。不条理。
・かわいい。やさしい日常。裏にあるもの。ある種の不安。
・エデゥアール・ヴュイヤール《公園》は8枚のうち5枚がきている。オルセーでも実現できない平面的に並べる見せ方を実現。
・最後の部屋は見どころかも。
□特別鑑賞会
1 ゴーガンの革命
第一室はナビ派以前。『ナビ派に影響を与えた』という位置づけで、ゴーガンらの作品を紹介。
ポール・ゴーガン《《黄色いキリスト》のある自画像》。いつもは主役のゴーガンの代表作が前説を勤めることからも、本展出品作の質の高さを感じます。
第二室に移動して、ナビ派登場。
エミール・ベルナール《収穫》。美しい黄色の色面に引き寄せられる。
ポール・セリュジェ《タリスマン(護符)、愛の森を流れるアヴェン川》 。《「僕たちナビ派!」誕生ストーリー》によると、ナビ派結成の契機となった記念碑的作品。まるで暖炉の一部のようにさりげなく展示。
2 庭の女性たち
モーリス・ドニ《ミューズたち》。『オルセー美術館展2010「ポスト印象派」@国立新美術館』以来、7年目の再見。あの時は大空間の装飾壁のようだったけれども、今回は部屋の窓から外の景色を観るよう。落ち着いた装飾性が素敵。
3 親密さの詩情
小部屋を抜けて、大部屋へ。空間のスケールアップに合わせて、展示壁も青と赤の色彩を大胆に使ってパワーアップ。
アリスティード・マイヨール《女性の横顔》。配置計画上、本展の顔的位置に、大きな黄色の色面が映える。後年は彫刻家に専念したそうで、立体を平面に押し込んだような密度を感じます。
モーリス・ドニ《鳩のいる屏風》。本室の一つ目のランドマーク的位置には、ドニがアトリエで私的に使っていたという屏風。『精神と現実の融合が主題』という白い画面が、暗い展示室に浮かび上がる。
4 心のうちの言葉
再び静かな小部屋の連続する空間へ。
エドゥアール・ヴュイヤール《八角形の自画像》。ビビッドな色遣いがポップアートを思わせる。
ピエール・ボナール《格子柄のブラウス》。格子柄のブラウスをユラユラと揺れる縦分割する構成が素敵。
5 子ども時代
3階から2階へ。
フェリックス・ヴァロットン《ボール》。鳥瞰と水平、二つの視点が一見落ち着いた画面に疾走感を与えて、何とも不思議な印象を受ける。
エドゥアール・ヴュイヤール《公園》の連作。部屋いっぱいに広がる公園の眺め。まるでその中に自分も紛れ込むような気になって楽しい。
6 裏側の世界
ジョルジュ・ラコンブ《イシス》。表現の強烈さと、呪術的にも思える造形。えっ、これもナビ派なの?
□感想
ギャラリーツアー前に展示をぐるりと一周しました。前半は『平面性・豊かな色彩・装飾性』といった私が持っていたナビ派のイメージに沿った作品が多く、『魅力的な作品が多い展示』を楽しみました。後半は、「あれ、これもナビ派なの?」と思うものが色々と出てきて、最後の部屋に至っては呪術的にも見えて、「ナビ派って何だっけ?」となりました。
ギャラリーツアーを聴いた後に、再度興味深く展示を観ました。
分かったような、分からないような。でも、とても魅力ある作品が集まっている。そんな展示だと思います。
□展覧会概要
「オルセーのナビ派展:美の預言者たち ―ささやきとざわめき」
会期:2017年2月4日(土)~5月21日(日)
会場:三菱一号館美術館(東京都千代田区丸の内2-6-2)
http://mimt.jp/
主催:三菱一号館美術館、読売新聞社、オルセー美術館
公式サイト:http://mimt.jp/nabis/
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