2016年10月31日
●2016年10月の鑑賞記録
10/2
〇あいちトリエンナーレ2016@東岡崎会場
石原邸
柴田眞里子さんの陶器。繊細な影を落とす作品を、あえて触って棚から棚へと移す展示。その薄く軽い質感におそるおそる触れる。
先ほどの触れる展示の隣は、土壁の納戸に瓦を積み、その中に白箱を挿入して陶器を見せる。質感対比の美が、心に届く。来て良かった。
東岡崎駅に降り立った時点で漂う、濃厚な昭和の香り。家康公ゆかりの地としてのプライドと、老朽化を隠せない現状。積み重ねた時間と現代アートががっぷり組んで、ねっとりとした体感経験が記憶に刻まれる。
あいちトリエンナーレ2016@豊橋会場
水上ビル ラウラ・リマの展示
老朽化した4階建ビルの一角を全階+屋上まで金網で囲って鳥カゴ化。100羽の小鳥が飛び回る中を、1度に10人のひとが入って散策する。鳥天国に観客は大興奮。
新幹線停車駅として綺麗に整備された駅周り会場は、清潔に漂白された表層。そこから鉛直に延びる旧市街側?会場はその裏層に見える。バラツキつつも、前者だけで完結せず後者もしっかり見せる。さらには、鳥の視点から人間を見せる。
名古屋会場の鉱石粉末の花柄神殿、岡崎会場の江戸の遺産と昭和の空気、豊橋会場の新旧の混交。3つの点をつなぐことで今の「あいち」を浮かび上がらせる構成は、トリエンナーレならではのデコボコ感とスケール感があって、楽しい経験でした。
10/3
〇春日大社の国宝@春日大社 国宝殿
展示室 神垣
漆黒の通路の先に榊。壁に質感、天井はルーバー状。左に折れると水盤《神奈備》。正面に回って腰を下ろし、天井に広がる水紋を眺める。進むと、糸で編んだスクリーンに色味ある光が移ろう《春日》。聖地と現代をつなぐアート。
鼉太鼓ホール
ここのみ撮影可。色鮮やかな王朝文化が肌で感じられるようなスケール、色彩、細工、映像に包まれる。振り返ると、外の建物(トイレ、ロッカー、自販機)も軸線を振って景色として美しい。
2階展示室
展示のほとんどが国宝。金物が金無垢と判明した金地螺鈿毛抜形太刀の輝き!藤原家プリンスの解説と、春日権現験記(複製)の鳥居と太刀が描かれた場面を添える構成があまりに素晴らしくて涙が出ました。文字通り、光り輝く展示。
10/8
◎鈴木其一展 第3期@サントリー美術館
いよいよ夏秋草渓流図屏風と風神雷神図襖が登場、日曜美術館効果で人出も増して、盛り上がってきた。渓流の鮮やかな青、琳派4代継承の構図等見応えたっぷり。惜しむらくは、美術館の箱が小さいので、絵の大きさと迫力を堰き止める。根津で観たい。
10/22
クラーナハ展@国立西洋美術館
ルカス・クラーナハ(父)の宮廷画家、商業画家、工房経営者としての活動の軌跡を6章構成で紹介。版画展開、幅広い顧客層、後世への影響等、多角的に作家像を造形。5章「誘惑する絵」のユディト、サロメが並ぶ空間が精緻かつ濃密で抜群の見応え。
10/30
◎鈴木其一展 第5期@サントリー美術館
1,1,3,5期と4回目の鑑賞。太田記念から来た扇子群が5期を彩る。正確な輪郭描写とサラッとした着色の組合せに描写精度の高さを、大輪の朝顔が円弧を描く様に構成力の凄さを感じる。其一が琳派を超えているという評は的を射ている。本日最終日!
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