2015年11月07日
●横浜発おもしろい画家:中島清之―日本画の迷宮@横浜美術館
横浜美術館で開催中の「横浜発おもしろい画家:中島清之―日本画の迷宮」を観ました。サブタイトルは「横浜発おもしろい画家」、「日本画の迷宮」。その意図するところは何でしょうか?
注:展示室の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
第1章 青年期の研鑽-古典との出会い
清之は京都に生まれ、16歳で横浜に引っ越してきます。彼の特徴は「スケッチ魔」と、精力的な「古画の模写」。
「胡瓜」1923年。御舟を思わせる細密描写。画家の技量が感じられます。
「横浜港風景」1920-30年頃。楽しげな港風景の活写。スケッチに励む画家の姿が浮かびます。
「庫裏」。建物による垂直性と水平性を意識した構図。
「花に寄る猫」1934年。円弧が画面を横切る大胆な構図。
第2章 戦中から戦後へ-色彩と構図の洗練
「銀座A」1936年。本展を開催するに際して画家のアトリエ調査が行なわれ、本図の元となった50枚にも及ぶスケッチが発見されたそうです。完成図とスケッチを比較すると、隣の建物を別の建物に入れ替えたり、建物に他の建物の装飾を加えたりと、画家が画面を推敲していった軌跡がうかがえます。
「方広会(ほごえ)の夜」1950年。戦争が終わって世の中が急転する中で、画家は幼い頃に親しんだ東大寺を描きます。あえて僧を描かず、縦と横で構成した画面からは威厳と荘厳さが感じられます。本図をきっかけに画家としての評価が高まったそうです。
第3章 円熟期の画業-伝統と現代の統合への、たゆみなき挑戦
「埴輪」。なぜはにわ?実は芸大講師として生徒を連れて東博に行ったことをきっかけに、古代美にも興味を抱くようになったそうです。
「顔」1960年。赤い画面に大きく仏の顔が描かれています。油絵の影響で、色面で絵を作っていくことを試みたそうです。
「喝采」1973年。当時の流行歌手の鼻の形が面白いと、テレビを見ながらスケッチを重ね、ついにはNHKホールまで出かけた完成させたそうです。なんと院展出品作。好奇心の赴くままに作品制作を続ける画家の姿が浮かんできます。
「雷神」1977。宗達、光琳、抱一が挑んだ雷神に清之も挑みます。パンツの装飾がキュート。東大寺に伝わる装飾だそうです。
中島清之は「花の画家」中島千波の父であり、片岡球子が師と慕った人物でもあります。その系譜、多彩な展開を見せる作品群がありながら、一般には知られていない横浜由縁の画家を、地元の美術館が掘り起こす。それはとても意義のあることだと思います。その一方で、作品の多彩さゆえに、その画業をどう切り取ればいいのかについては、迷いも感じられます。単に「おもしろい」ですますのはもったいない、観て楽しい展示です。
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会期:2015年11月3日(火・祝)~ 2016年1月11日(月・祝)
開館時間:10時~18時(入館は17時30分まで)
休館日:木曜日、2015年12月29日(火)~2016年1月2日(土)
会場:横浜美術館
http://yokohama.art.museum/
主催:横浜美術館(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)、神奈川新聞社、tvk(テレビ神奈川)
後援:横浜市
助成:公益財団法人三菱UFJ信託地域文化財団
協力:みなとみらい線、横浜ケーブルビジョン、FMヨコハマ、首都高速道路株式会社
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横浜美術館で開催中の
「横浜発 おもしろい画家:中島清之―日本画の迷宮」に行って来ました。
http://yokohama.art.museum/
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