2015年02月24日
●青い日記帳×ワシントン・ナショナル・ギャラリー展ブロガー特別内覧会@三菱一号館美術館
三菱一号館美術館で開催中の「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」。そのブロガー向けイベント青い日記帳×ワシントン・ナショナル・ギャラリー展ブロガー特別内覧会に参加しました。
注:展示室の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
□高橋明也館長挨拶
今度の4月で開館5周年。本展で17本目の展覧会。充実感があった。ヘビーな展覧会も十数本開催。続けるのは大変。
ワシントン・ナショナル・ギャラリー展は国際巡回展。日本では3回目の開催。巡回展は内容よりも開催することを優先されがちだけれども、本展は前々回、前回とは違う。
作品サイズが小さく、統一されている。そのサイズが本館の大きさとあっている。
印象派の特徴は親しみやすさ。今では当たり前だけれども、当時の絵画は権威、宗教のために描いていた。
□ギャラリーツアー
杉山菜穂子(本展担当学芸員)
モデレーター:Tak(「青い日記帳」主宰)
2章 友人とモデル
左 エドガー・ドガ「競馬」、右 エドゥアール・マネ「競馬のレース」。
ドガとマネの見比べ。競馬は当時の流行の最先端。ドガはノルマンディの競馬場。遠景の教会はルーアン大聖堂。レース前のパドックののんびりした人々。マネはロンシャンの競馬場。シカゴにある大作のバリエーション。現場で描いたわけではないが、レース中の砂埃、臨場感。パリの上流階級が着飾った社交場。
マネの絵は、実は図録の図版の方が大きい。土煙や着飾った貴婦人もくっきり。
右 ピエール=オーギュスト・ルノワール「花摘み」、左 「ブドウの収穫」。
右は、ルノワールが庭を気に入って買ったといわれている家。田舎っぽい、ワイルドな感じが気に入ったといわれている。同じ庭でも、右と左で随分と描き方が違う。細かい筆致で、ふるえる光の表現。女の子をナンパ中のような微笑ましい風景。
フィンセント・ヴァン・ゴッホ「オランダの花壇」。
振り返る、ゴッホ。パリに出る前の精神的に穏やかな時期。明るい穏やかな色遣い。いつも曇っているのがオランダらしい。
左 オディロン・ルドン「ブルターニュの村」、 右 「ブルターニュの海沿いの村」。
右へ移動。本展はモネ、ピサロ、シスレーの風景画で始まり、屋外で描く先駆けであるブータンの作品が8点並びます。それに続くのが、印象派第二世代ともいえるルドン、スーラ。ルドンは黒の版画と並行して美しい風景画を描いており、色数少なく、完成されています。スーラの絵はアメリカマーケット向けに装飾的な枠に変えられている。元々はシンプルな枠だったので、画家は絵にそぐわないこの枠を嫌っていた。粗目のドットが抽象画のよう。
右 ピエール=オーギュスト・ルノワール「猫を抱く女性」、中 「少女の頭部」、左 「アンリオ夫人」。
再び後ろを振り返って、ルノワールのきれいな女の子のコーナー。
本展のメインビジュアルでもある「猫を抱く女性」は画家お気に入りのモデル。服装によって印象が全然違う。猫の手のフワフワとした触感が感じられる。本展には動物コーナーがあり、マネの描いた犬(タマ)も出展されている。
「アンリオ夫人」。モデルは当時の人気女優。画家からモデルに贈られ、彼女の手元に最後まで残されていた。彼女を描いた絵が、クラークコレクション展にも出展されていた。背景表現が前出の風景画と比べて抽象的。画家がモネと交流していた時期に描かれた。
最後のナビ派の部屋「ボナールとヴュイヤール」がおススメ。
食べ物を集めた部屋もある。http://www.mizdesign.com/mt/mt.cgi#
本展は、所蔵元のワシントン・ナショナル・ギャラリーが改修の間に、世界巡回する展示の1つ。テキサス、日本、シアトル、ワシントンと巡回する。ギャラリーのスタッフが本館を下見して気に入ってくれた。
絵の小ささを意識して、キャプションも小さい。作品リストも小さくなるよう工夫。
日本展だけ特別に、コレクターに焦点をあてた作品解説を追加。
□特別鑑賞会
1時間ほどの自由鑑賞会へ。
ギャラリーツアーで2章を堪能しましたが、他の章も見所満載。
三菱一号館美術館のコレクション
オディロン・ルドン「グラン・ブーケ」。
3章と4章の間に、三菱一号館美術館の所蔵品(寄託品含む)の展示。先ほどの色数抑えた風景画とは対照的に、華やかな色彩の巨大な花束。暗闇に浮かぶ様が美しい。
4章 静物画
ポール・セザンヌ「牛乳入れと果物のある静物」。
個人的に一番印象に残ったのは、セザンヌの作品。額縁という窓を通して、絵の中に広がる世界に惹き込まれるような錯覚を感じました。小品でも物凄い吸引力。
5章 ボナールとヴュイヤール
右 ピエール・ボナール「庭のテーブルセット」、左 「画家の庭の階段」。
緑のスクリーン越しに陽光を感じつつ、木陰のテーブルセットが気持ちよさそう。
□感想
珠玉の印象派コレクション持つコレクターの邸宅にお邪魔しているような、作品と展示空間のスケール感が何より素晴らしいです。ただの白い箱ではない三菱一号館美術館だからこそできる、絵画との親密な距離感。どこを見ても見所ばかりの充実した作品ラインナップ。絵画を観る幸せにひたれるひと時でした。
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