2014年04月26日
●「超絶技巧!明治工芸の粋」展web特別鑑賞会@三井記念美術館
三井記念美術館で開催中の「超絶技巧!明治工芸の粋」。そのweb特別鑑賞会に参加しました。
注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
□ギャラリートーク
山下裕二氏(本展監修者、明治学院大学教授)
村田理如氏(清水三年坂美術館館長) 飛び入り参加
小林祐子氏(三井記念美術館学芸員)
山:村田さんのコレクションは、2006年に刊行された「世界を魅了した日本の技と美 幕末・明治の工芸」(淡交社)で知った。その後、銀座1丁目の宝満堂で明治工芸がウィンドウに飾ってあったのを眺めていた際に、店主に「お好きなんですか」と声をかけられたのがきっかけで村田さんとの縁を得た。村田コレクションの展示をいくつかの美術館に提案して、今回の展示が実現した。素晴らしい展示環境があるので、断然ここが良い。
展示室1
山:入ってすぐに独立した展示ケースがある。ここでやって良かった。ガラスに頭をぶつける人が続出。
七宝 並河靖之「花文飾り壷」
山:宮様に仕える仕事をしていたが食えない。尾張七宝をさらに洗練して京七宝を興し、あっという間に凄い技術を身につけた。
村:ロンドンのマルコム・フェアリーで初めて並河の作品を観たが、あまりに高い。でも後に良さが分かってきた。
小:今回の展示から、照明をLEDに替えました。
山:掴みが大切。最高のクオリティを見せて、グッと掴む。
牙彫 山崎南海「自在海老」
山:象牙で作った自在。後の展示室で、実際に動かしている動画あり。展示室1では、いろんなジャンルの最高を、1点ずつじっくり観てもらう。
漆工 赤塚自得「四季草花蒔絵堤箪笥」
山:煌びやかなだけでなく、抑制が効いてる。帝室技芸院制度の存在も大きい。
薩摩 錦光山「花見図花瓶」
山:1京薩摩。薩摩風の焼物。胴部の絵画的表現に対して、上部の透かし彫りはアール・ヌーヴォースタイルの逆輸入を思わせる。明治終わりから大正の作。
牙彫 石川光明「羊」
山:牙彫を得意とした。木彫で有名な高村光雲は教科書に載り、息子も有名。元々仏師。光明は忘れられてしまった。木彫は彫刻家、牙彫は職人という感じ。
金工 正阿弥勝義「蓮葉に蛙皿」
山:大名お抱え職人だったが、安定した身分を失う。蛙の飛び跳ねる一瞬を捉えている。
金工 正阿弥勝義「古瓦鳩香炉」
山:古瓦の上に鳩、視線の先に蜘蛛。一瞬を捉える視線は、若冲に通じる。19歳で名門正阿弥家を継ぎ、後年単身京都に出てきた。晩年若冲の絵を見ているのではないか。
漆工 白山松哉「渦文蒔絵香炉」
山:曲面に均質な線を引く技術。器物の方を動かして描いた。
薩摩 精巧山「雀蝶尽し茶碗」
山:外は雀尽くし、内は蝶尽し。肉眼ではほとんど分からない、本当に超絶技巧。彼についての研究はほとんど進んでいない。
七宝 濤川惣助「藤図花瓶」
山:無線七宝。ぼかし、にじみの効果。有線と無線が一つの中に混在している。
展示室2
牙彫 安藤緑山「竹の子、梅」
山:衝撃の竹の子。どう見ても本物にしか見えない。スーパーリアルの超絶技巧。よくこんなものを象牙で彫ろうと思うな。後でパセリが出てくるが、輸送が怖い。
村:緑山との出会いは27年前、村田製作所の社員として海外出張した際。
山:緑山は謎の人。生没年すら不明、弟子もとらない。どう染めたのか?X線分析の結果を本展図録に収録。先端じゃないとできない、特筆すべきもの。
展示室3
刺繍絵画 「瀑布図」
村:虫食い、光に弱いので美品が少ない。マルコム・フェアリーから38枚まとめて購入。オックスフォードのアシュモレアン・ミュージアムで展示。
山:光に弱いので、刺繍絵画のみ展示替あり。
展示室4
牙彫 安藤緑山「竹の子、豌豆、独活」、「玉蜀黍」、「蕪、パセリ」、等
山:ここからジャンル別展示。緑山作品と確認できているのは35点。段を変えて展示して欲しいと要望して、特注ケースを作ってもらった。まとめての展示は世界初では?茶室にも三井記念美術館所蔵の「仏手柑」を展示。パセリ、焼き栗等、よく彫ろうと思いますね。蜂の巣、蕪の髭も含めて、自立するようになっている。(「おー」と歓声)。この展覧会を機に、評価がグッと上がってくると思う。
七宝 粂野締太郎「菊蝶尽し花弁形鉢」
山:単眼鏡で見ないと分からない細密さの極致。
七宝 安藤七宝店(林喜兵衛)「花鳥図対大花瓶」
山:尾張七宝は今でも銀座に安藤七宝店がある。本作は大正天皇の結婚祝いに献上されたもの。皇室から出たものもけっこうある。
金工 村上盛之「冬瓜大香炉」
山:東照宮作った職人。海野勝珉の兄弟弟子。虫は金ムクでずしりと思い。
金工 伝海野勝珉「蘭陵王」
山:加納夏雄、海野勝珉、本阿弥勝義の三人が飛びぬけて上手。宮内庁所蔵「蘭陵王」の試作品として伝わったもの。銘が入っていないので、伝がついている。伝とろうか。
小:とりましょうか。
金工 正阿弥勝義「瓢箪に天道虫花瓶」
山:とまったばかりで羽が閉じきっていない。一瞬を捉える目が素晴らしい。
如庵(茶室)
牙彫 安藤緑山「仏手柑」
山:神々しい。
展示室5
自在 高瀬好山「鯉」
山:蜂は尻尾の針を格納できる。蛇はクネクネ動かせる。鯉はヒレも動かせる。好山は石川県から京都に出てきた。商社のサラリーマンだったが、後に独立して海外に輸出した。
牙彫 石川光明「蓮根に蛙」
山:実の一つ一つが動く。根付研究家によると馬の骨らしい。
牙彫 旭玉山「葛に蜘蛛の巣図文庫」
山:花は貝?色々な材料を組み合わせて使う。象牙でなくクジラの骨という説も。
刀装具 海野勝珉「鳳凰花桐文銀装兵庫鎖太刀拵」
山:東照宮の職人。三井家の発注で作られ、完成まで15年かかった。
展示室7
漆工 柴田是真「青海波塗棗」
山:江戸っ子ならではの粋。シンプルで粋でカッコイイ。黒に対する感覚が独特。
漆工 白山松哉「日月烏鷺蒔絵額」
山:美の巨人たち(5/31)放送予定。
漆工 白山松哉、守屋松亭、吉川霊華「勿来関蒔絵硯箱」
山:よりデコラティブ。
村:フタ裏の桜蒔絵の素晴らしさ。
薩摩 錦光山「菊唐草文ティーセット」
山:ヨーロッパの需要を考えて作られた、緻密な絵付け。
山:カタログ買って下さい。日本美術史の中でも幕末・明治は書き換えられる可能性の大きな分野。国の代わりに村田さんがやってくれている。
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□感想
三井記念美術館の重厚な空間+最新照明で観る「明治工芸の粋」は、本当に光り輝いて美しいです。わずか30年ほどで衰退し、忘れ去られた作品群が、現代を機に再発見されていく。まさにその瞬間に立ち会うような楽しさを感じながら、目に焼き付けるようにして観ました。
技巧系の展示は「スゴイだろう」の力押しに頼りすぎると単調になると思いますが、今回は深く浅く観客の興味を惹きつけるナビゲーションが絶妙で、とても好奇心を刺激されました。その雰囲気が少しでも伝わればと、ギャラリートークの内容をメモ書きしておきます。
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□展覧会概要
「特別展 超絶技巧!明治工芸の粋 ―村田コレクション一挙公開―」
会期:2014年4月19日(土)ー7月13日(日)
会場:三井記念美術館
東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号 三井本館7階
http://www.mitsui-museum.jp/
主催:三井記念美術館、朝日新聞社
協力:清水三年坂美術館
監修:山下裕二(明治学院大学教授)
企画協力:広瀬麻美(浅野研究所)
【巡回先】
佐野美術館(静岡県三島市)
2014年10月4日(土)~12月23日(火・祝)
山口県立美術館(山口県山口市)
2015年2月末~4月中旬
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? 「超絶技巧!明治工芸の粋」 from 弐代目・青い日記帳
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特別展「超絶技巧!明治工芸の粋―村田コレクション一挙公開―」に行って来ました。
http://www.mitsui-mus... [続きを読む]