2014年04月30日

●4月の鑑賞記録

 4/6
 ラファエル前派展@森アーツセンターギャラリー
 歴史・宗教といったテーマ別に、関連画家を網羅的に紹介。画家・モデルの相関関係解説が生々しい。混雑度は三重の人垣くらい。破られた誓い→マリアナ→オフィーリアと続く一画が一番混んでいて30分くらいかかる。

 アンディ・ウォーホル展@森美術館
 デザイナー時代の作品から、アーティストデビューのキャンベルスープ缶、マリリンのシルクスクリーンへと至る前半が魅力的。ファクトリーから有名人ポートレイトへと続く後半は、章がとんだように感じられる。館内は親子連れが多く、ほのぼのムード。

 4/12
 浅田真央23歳の軌跡@日本橋高島屋
 幼少時からソチ五輪、世界選手権までの写真パネル、衣装、メダルがズラリ。姉との写真も。後半のソチ五輪フリーの映像に涙腺が緩む。出口のCMスポンサーの多さにびっくり。

 4/19
山の神仏@大阪市立美術館
 厨子入天川諸尊像のSD仏像群が可愛い。聖徳太子・二王子立像の太子像の眼力が迫力。那智参詣曼荼羅図の祝祭的空間描写が楽しげ。熊野速玉大神坐像の堂々たる威圧感。

 東大寺@あべのハルカス美術館
 天空に浮かぶ「国宝を展示できる箱」の開館記念展。近鉄らしく奈良をプッシュ。鮮明な絵巻物と、生気に満ちた高僧たちの像がずらりと並び、妙に生々しく感じられる。展望台の人気に負けてるけれど、今後に期待。

 アンドレアス・グルスキー展@国立国際美術館
 圧倒的な情報量と、幾何学的な美。対象が何なのか分からない混乱。作品リスト片手に、観客はオリエンテーリング気分。駆け足鑑賞になって残念。

 4/25
光琳を慕う 中村芳中@千葉市美術館
 太い輪郭線、にょろりとした外形、垂らし込まれた色面。指頭画で場を賑わす人気者のイメージが浮かぶ。琳派の巨匠光琳を前座に据えて、その後継者たちを紹介。そして芳中登場!芳中が愛されたほのぼの江戸時代に触れる好企画!

 4/26
超絶技巧!明治工芸の粋 web特別鑑賞会@三井記念美術館
 重厚な空間+最新照明で観る「明治工芸の粋」は、本当に光り輝いて美しい。わずか30年ほどで衰退し、忘れ去られた作品群が、現代を機に再発見されていく。目に焼き付けるようにして観た。

 4/27
 バルテュス展@東京都美術館
 早熟な青年期から、少女と官能性の登場。田舎の日々を経て、モチーフの発展へ。節子夫人が登場して、写真展示で幕。脚と、首筋から腕にかけての描写の美しさ。本人と夫人とのグラビアのような美しい写真が印象に残る。

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2014年04月26日

●「超絶技巧!明治工芸の粋」展web特別鑑賞会@三井記念美術館

 三井記念美術館で開催中の「超絶技巧!明治工芸の粋」。そのweb特別鑑賞会に参加しました。

注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

□ギャラリートーク
 山下裕二氏(本展監修者、明治学院大学教授)
 村田理如氏(清水三年坂美術館館長) 飛び入り参加
 小林祐子氏(三井記念美術館学芸員)

山:村田さんのコレクションは、2006年に刊行された「世界を魅了した日本の技と美 幕末・明治の工芸」(淡交社)で知った。その後、銀座1丁目の宝満堂で明治工芸がウィンドウに飾ってあったのを眺めていた際に、店主に「お好きなんですか」と声をかけられたのがきっかけで村田さんとの縁を得た。村田コレクションの展示をいくつかの美術館に提案して、今回の展示が実現した。素晴らしい展示環境があるので、断然ここが良い。

展示室1
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山:入ってすぐに独立した展示ケースがある。ここでやって良かった。ガラスに頭をぶつける人が続出。

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七宝 並河靖之「花文飾り壷」
山:宮様に仕える仕事をしていたが食えない。尾張七宝をさらに洗練して京七宝を興し、あっという間に凄い技術を身につけた。
村:ロンドンのマルコム・フェアリーで初めて並河の作品を観たが、あまりに高い。でも後に良さが分かってきた。
小:今回の展示から、照明をLEDに替えました。
山:掴みが大切。最高のクオリティを見せて、グッと掴む。

牙彫 山崎南海「自在海老」
山:象牙で作った自在。後の展示室で、実際に動かしている動画あり。展示室1では、いろんなジャンルの最高を、1点ずつじっくり観てもらう。

漆工 赤塚自得「四季草花蒔絵堤箪笥」
山:煌びやかなだけでなく、抑制が効いてる。帝室技芸院制度の存在も大きい。

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薩摩 錦光山「花見図花瓶」
山:1京薩摩。薩摩風の焼物。胴部の絵画的表現に対して、上部の透かし彫りはアール・ヌーヴォースタイルの逆輸入を思わせる。明治終わりから大正の作。

牙彫 石川光明「羊」
山:牙彫を得意とした。木彫で有名な高村光雲は教科書に載り、息子も有名。元々仏師。光明は忘れられてしまった。木彫は彫刻家、牙彫は職人という感じ。

金工 正阿弥勝義「蓮葉に蛙皿」
山:大名お抱え職人だったが、安定した身分を失う。蛙の飛び跳ねる一瞬を捉えている。

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金工 正阿弥勝義「古瓦鳩香炉」
山:古瓦の上に鳩、視線の先に蜘蛛。一瞬を捉える視線は、若冲に通じる。19歳で名門正阿弥家を継ぎ、後年単身京都に出てきた。晩年若冲の絵を見ているのではないか。

漆工 白山松哉「渦文蒔絵香炉」
山:曲面に均質な線を引く技術。器物の方を動かして描いた。

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薩摩 精巧山「雀蝶尽し茶碗」
山:外は雀尽くし、内は蝶尽し。肉眼ではほとんど分からない、本当に超絶技巧。彼についての研究はほとんど進んでいない。

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七宝 濤川惣助「藤図花瓶」
山:無線七宝。ぼかし、にじみの効果。有線と無線が一つの中に混在している。

展示室2
牙彫 安藤緑山「竹の子、梅」
山:衝撃の竹の子。どう見ても本物にしか見えない。スーパーリアルの超絶技巧。よくこんなものを象牙で彫ろうと思うな。後でパセリが出てくるが、輸送が怖い。
村:緑山との出会いは27年前、村田製作所の社員として海外出張した際。
山:緑山は謎の人。生没年すら不明、弟子もとらない。どう染めたのか?X線分析の結果を本展図録に収録。先端じゃないとできない、特筆すべきもの。

展示室3
刺繍絵画 「瀑布図」
村:虫食い、光に弱いので美品が少ない。マルコム・フェアリーから38枚まとめて購入。オックスフォードのアシュモレアン・ミュージアムで展示。
山:光に弱いので、刺繍絵画のみ展示替あり。

展示室4
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牙彫 安藤緑山「竹の子、豌豆、独活」、「玉蜀黍」、「蕪、パセリ」、等
山:ここからジャンル別展示。緑山作品と確認できているのは35点。段を変えて展示して欲しいと要望して、特注ケースを作ってもらった。まとめての展示は世界初では?茶室にも三井記念美術館所蔵の「仏手柑」を展示。パセリ、焼き栗等、よく彫ろうと思いますね。蜂の巣、蕪の髭も含めて、自立するようになっている。(「おー」と歓声)。この展覧会を機に、評価がグッと上がってくると思う。

七宝 粂野締太郎「菊蝶尽し花弁形鉢」
山:単眼鏡で見ないと分からない細密さの極致。

七宝 安藤七宝店(林喜兵衛)「花鳥図対大花瓶」
山:尾張七宝は今でも銀座に安藤七宝店がある。本作は大正天皇の結婚祝いに献上されたもの。皇室から出たものもけっこうある。

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金工 村上盛之「冬瓜大香炉」
山:東照宮作った職人。海野勝珉の兄弟弟子。虫は金ムクでずしりと思い。

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金工 伝海野勝珉「蘭陵王」
山:加納夏雄、海野勝珉、本阿弥勝義の三人が飛びぬけて上手。宮内庁所蔵「蘭陵王」の試作品として伝わったもの。銘が入っていないので、伝がついている。伝とろうか。
小:とりましょうか。

金工 正阿弥勝義「瓢箪に天道虫花瓶」
山:とまったばかりで羽が閉じきっていない。一瞬を捉える目が素晴らしい。

如庵(茶室)
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牙彫 安藤緑山「仏手柑」
山:神々しい。

展示室5
自在 高瀬好山「鯉」
山:蜂は尻尾の針を格納できる。蛇はクネクネ動かせる。鯉はヒレも動かせる。好山は石川県から京都に出てきた。商社のサラリーマンだったが、後に独立して海外に輸出した。

牙彫 石川光明「蓮根に蛙」
山:実の一つ一つが動く。根付研究家によると馬の骨らしい。

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牙彫 旭玉山「葛に蜘蛛の巣図文庫」
山:花は貝?色々な材料を組み合わせて使う。象牙でなくクジラの骨という説も。

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刀装具 海野勝珉「鳳凰花桐文銀装兵庫鎖太刀拵」
山:東照宮の職人。三井家の発注で作られ、完成まで15年かかった。

展示室7
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漆工 柴田是真「青海波塗棗」
山:江戸っ子ならではの粋。シンプルで粋でカッコイイ。黒に対する感覚が独特。

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漆工 白山松哉「日月烏鷺蒔絵額」
山:美の巨人たち(5/31)放送予定

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漆工 白山松哉、守屋松亭、吉川霊華「勿来関蒔絵硯箱」
山:よりデコラティブ。
村:フタ裏の桜蒔絵の素晴らしさ。

薩摩 錦光山「菊唐草文ティーセット」
山:ヨーロッパの需要を考えて作られた、緻密な絵付け。

山:カタログ買って下さい。日本美術史の中でも幕末・明治は書き換えられる可能性の大きな分野。国の代わりに村田さんがやってくれている。
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□感想
 三井記念美術館の重厚な空間+最新照明で観る「明治工芸の粋」は、本当に光り輝いて美しいです。わずか30年ほどで衰退し、忘れ去られた作品群が、現代を機に再発見されていく。まさにその瞬間に立ち会うような楽しさを感じながら、目に焼き付けるようにして観ました。
 技巧系の展示は「スゴイだろう」の力押しに頼りすぎると単調になると思いますが、今回は深く浅く観客の興味を惹きつけるナビゲーションが絶妙で、とても好奇心を刺激されました。その雰囲気が少しでも伝わればと、ギャラリートークの内容をメモ書きしておきます。

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□展覧会概要
「特別展 超絶技巧!明治工芸の粋 ―村田コレクション一挙公開―」

会期:2014年4月19日(土)ー7月13日(日)
会場:三井記念美術館
   東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号 三井本館7階
http://www.mitsui-museum.jp/

主催:三井記念美術館、朝日新聞社
協力:清水三年坂美術館
監修:山下裕二(明治学院大学教授)
企画協力:広瀬麻美(浅野研究所)

【巡回先】
佐野美術館(静岡県三島市)
2014年10月4日(土)~12月23日(火・祝)

山口県立美術館(山口県山口市)
2015年2月末~4月中旬

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2014年04月20日

●Life with Art 2

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 先日、作家さんの個展にうかがった際に、ふと、「朝起きて、この絵があると、毎日の生活が楽しいだろうな。」と思いました。そうすると、なんか丸っこいのもいっしょについてきました。というわけで、「アートのある暮らし その2」です。
 これからよろしくね。

Posted by mizdesign at 07:13 | Comments [0] | Trackbacks [0]

2014年04月19日

●あべのハルカス美術館-国立国際美術館

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 山の神仏 吉野・熊野・高野@大阪市立美術館
 [紀伊山地の霊場と参詣道]世界遺産登録10周年記念と銘打って、三つの山の聖地から神仏大集合。

 吉野・大峯
 蔵王権現立像の片足を上げた躍動感あるポーズ、役行者坐像のリアルな造形、前鬼・後鬼坐像のチョコンとした可愛らしさ。
 厨子入天川諸尊像。ギュッと詰め込まれたSD仏像群が可愛い。本展の持って帰りたいアイテムナンバーワン。
 聖徳太子・二王子立像。設置高さの関係で、下から見上げると、太子像の視線とがっちり噛み合います。薄暗い中で輝く眼の迫力が凄い。

 高野山
 不動明王立像(合体不動)。2mに及ぶ大きさが圧巻。大きな顔がユーモアを感じさせる。

 熊野三山
 那智参詣曼荼羅図。那智参詣の豪華プロモーショングッズ。祝祭的な空間描写が楽しげ。
 熊野速玉大神坐像。堂々たる体躯と表情。神に相応しい威圧感。

 薄暗い展示室に佇む山の神々は、表情豊かで楽しげに見えます。

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 天王寺公園を散歩して、あべのハルカスへ。

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 直通エレベーターで16階へ。阿倍野の空を見晴るかす。
 展望台エレベーターへの待機行列と、美術館と屋上庭園を詰め込んだ、賑やかなフロア。
 東大寺@あべのハルカス美術館
 天空に浮かぶ「国宝を展示できる箱」の開館記念展。近鉄らしく奈良をプッシュ。鮮明な絵巻物と、生気に満ちた高僧たちの像がずらりと並び、妙に生々しく感じられる。展望台の人気に負けてるけれど、今後に期待。

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 アンドレアス・グルスキー展@国立国際美術館
 圧倒的な情報量と、幾何学的な美。対象が何なのか分からない混乱。作品リスト片手に、観客はオリエンテーリング気分。駆け足鑑賞になって残念。

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2014年04月05日

●4月の桜 上野、千鳥ヶ渕

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 長引いた寒さがおさまったと思ったら、あっという間に桜は満開。あわてて週末の上野に出かけました。花見のピークを過ぎたせいか、人出もほどほどで観やすいです。

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 清水観音堂「月の松」越しに観る、不忍池の弁天堂。誕生仏に甘茶をかけてお堂を後にします。

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 花より団子、寛永寺近くの屋台で一休み。屋外で食べるヤキソバが美味しい!

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 不忍池をぐるりと一周。タワーマンションがにょきにょき伸びてます。

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 日が暮れた頃、千鳥ヶ淵へ足を延ばします。寒さのせいか、週末にもかかわらず、意外と空いています。

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 しかし、あまりに寒い。お堀沿いの桜を眺めて早々に引き返しました。

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