2013年03月03日
●円山応挙展(前期)@愛知県美術館
愛知県美術館で開催中の「円山応挙展 -江戸時代絵画 真の実力者-」を観ました。
第一章 「リアルに見えること」の追求
「大石良雄図」。等身大の大きさ、着物の奥に透ける身体のライン。着衣に素足、無背景、女性と子供は誰なのか。リアルで謎めく存在感。
「驟雨江村図」。墨の濃淡だけで描く雲、風、枝、波。大気が変化する一瞬を捉える観察眼と描写力。
「西施浣紗図」と伝仇英「五仙女図」。撫で肩、顔の大きさ、髪型。応挙が熟覧した可能性が高いと言われれば、確かにと思う。
第二章 伝統としての写実
「虎嘯清風図」。フサフサの体毛、前脚を揃えて首をヒョイと捻るポーズ。カワイイなあ!
「牡丹孔雀図」と「孔雀図」。瑞祥としての前者、生物としての後者。同じ題材を書き分ける力量。首が前方に迫り出してくるような描写が圧巻。
「双鶴図」と陳伯冲「松上双鶴図」。若冲との接点であり、分岐点かも?応挙前を示すことで、応挙が美術史の中に織り込まれていく。
第三章 現実空間との連続性=トリックアート
大乗寺「松に孔雀図襖」、「郭子儀図」。精緻に再現された空間、畳に座った高さで見えるレベル設定、LED照明に照らされる再現展示は素晴らしい出来。今はもう観ることの出来ない、大乗寺の応挙空間を堪能。立ち尽くすこと30分。
「雪松図屏風」。通路奥に現れる、距離をとった観え方が新鮮で美しい。
第四章 技法への確信
「富士三保図屏風」。本作を含めて千葉市美術館の屏風二点が出ているのも、地元民として嬉しい。
「龍門鯉魚図」。黒と白の縦ストライプに見え隠れする鯉。デザイン的な表現で、水流の激しさを伝える。動と静の対比。
「白狐図」。絞り込まれた構成要素、際立つ妖艶な表情。
終章 応挙画はなぜ好かれ/嫌われたのか?
若冲、蕭白、蕪村。多彩な才能に賑わう京都に颯爽と登場して、あっという間に席巻してゆく応挙の評判記。ライブ感があって面白い切り口。
大乗寺客殿の再現展示を筆頭に精選された作品群は観て楽しく、中国からの影響を実例で示す学術面もなるほどと腑に落ちます。二面構成がピシッと決まった完成度の高い企画展。気がつけば2時間半ほど観ていました。巡回なしなので、遠征してでも観る価値のある展示だと思います。
惜しむらくは、調光のスムーズさを欠いていること。光の変化がカクカクとして、せっかくの自然光再現がコマ落ち状態に感じられます。2006年のプライスコレクション「若冲と江戸絵画」展では、蛍光灯+スムーズな調光による自然光再現に感動したので、あの感動をもう一度!という勢いで出かけた身には残念至極。願わくば、会期中に対応されますように。
2013/3/6 追記
今回の調光について専門の方から教えていただいた内容を下記にまとめます。
--まとめ ここから--
パナソニックの使っているLED素子を駆動させる電力にある程度パワーが必要となっているようで、「調光を落とすと、眼の感覚で20%以下(電気的には5%との説も)でフリック(チラツキ)始めるので、調光回路で強制的に電流を遮断する設計になっている。これは今後の検討課題になっている。」とのこと。
LED素子によっては (いわゆるハイパワーでなく小さいものが多いけれども) 0~100%の調光に追随するものもあるし、それを謳っている器具メーカーもある。
展示ケースでは動的な調光をしないのであまり問題にならないけれども、あの光量で暗転したり点灯したりは、基本的にはマズイ。
--まとめ ここまで--
鑑賞時に感じたのは、機器によるチラツキと同時に、「郭子儀図襖」、「松に孔雀図襖」、「四季耕作図襖」それぞれの照明をタイミングを少しずらして明暗させる際に、お互いの照明が隣に漏れ入ってチカチカ感が倍増している感じがすること。おそらくは光を適度に分散させるために照明位置を高めに設置した結果、隣の間まで影響を及ぼすことになったのかと。
機器の変更が難しければ、調光の下限をフリッカの発生する手前で抑えてループさせる+目立たない色の遮光性スクリーンを吊る等して漏れ入れを抑えることが次善策として検討する価値があるかと思います。
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