2013年03月31日
●3月の鑑賞記録
3/3
◎円山応挙展(前期)@愛知県美術館
大乗寺客殿の再現展示を筆頭に精選された作品群は観て楽しく、中国からの影響を実例で示す学術面もなるほどと腑に落ちる。二面構成がピシッと決まった完成度の高い企画展。
◎「円山応挙展」記念講演会「円山応挙 正統派の逆襲」
山下先生の大乗寺訪問記、作品を借りる時のエピソード、そして奇想派を煽ってきた者として、真打ち応挙再発見への願い。ユーモアと熱意とサービス精神が、本展を一層感慨深くする。意外なところで緒川たまきも登場。
3/9
◎『日本美術全集』刊行記念スペシャルトーク「若冲、プライスコレクション、奇想の系譜~それぞれの若冲体験~」
山下先生、プライス氏、狩野先生の豪華メンバーで送る、若冲再発見物語。山下先生の名司会の下、プライス氏の若冲との出会編リバイバル、狩野先生の2000年の若冲展の経緯、「若冲は旦那芸」等、興味深い話が目白押し。江戸絵画が一層好きになるひと時でした。
3/10
HOUSE VISION 2013 TOKYO EXHIBITION@青海特設会場
パーツの組み方の工夫で、これからの暮らし方を提示する展示会。全く新しいビジョンやツールを目指すのではなく、地に足をつけながら前を向こうという姿勢が現代的。
○「あれから」@オーディトリウム渋谷
東日本大震災以前と以降を、東京吉祥寺の靴屋を主舞台に描く。一見変わりない日常と、確実に流れてゆく時間。変わったモノは何だろう。主人公が行動を起こすまでを、丁寧かつコンパクトにまとめて印象深い。
3/13
○ルーベンス展「ブロガー・スペシャルナイト」@Bunkamura ザ・ミュージアム
“ルーベンスのここがすごい!! TBS小林悠アナが宮澤学芸員に直撃取材”。バロックの巨匠ルーベンスに相応しい、華のある対談。ルーベンスは美術史に出てきた数少ない天才の一人。彼が作った流れの先にルノワールが乗っている。豊かで力があって、彼なしにバロックは語れない。
3/21
○アートフェア東京2013@東京国際フォーラム
現代アートのお祭企画、今年も開催。靖山画廊「神﨑泰志 木彫展」が今回のイチオシ。作品を丁寧に解説して下さった方が作家さんご本人と知ってビックリ。
3/22
○ラファエロ展@国立西洋美術館
「自画像」。ちょっとカメラ目線な美青年。作品だけでなく、自画像もよく売れたというのが当時のメディアの特徴。「大公の聖母」。バラ色の頬と伏した目が優雅で美しい傑作。いつかはシスティーナ礼拝堂に行きたい。
○歌舞伎|江戸の芝居小屋@サントリー美術館
ガラスケース前2重の人垣と、なかなかの人出。歌舞伎という題材とアートナイト効果?仮設舞台での萌芽期から、人気歌舞伎役者のブロマイドまで。六回に渡る展示替えもクライマックス!
G-Tokyo@ミッドタウン・ホール
池田学さんと伊庭靖子さんの近作が観られて嬉しい。
◎デザインあ展@21_21 DESIGN SIGHT
「あ」れ?、「あ」ら!の記念撮影から始まり、動く「あ」や「ごちゃまぜ文庫」といった体験型展示と「お寿司のいろいろ」といった美しい鑑賞型展示がほどよく混ざった構成が楽しい!
3/31
◎狩野山楽・山雪@京都国立博物館
永徳檜図屏風の続きから始まり、天球院での継承、長恨歌図巻の裏彩色に目を奪われ、極みの山雪ワールドに張り付く。京都限定39日間の必見展示!
●3月の桜 清水寺-産寧坂-ねねの道-円山公園
興奮冷めやらぬ京博を後にして、2年ぶりに京都夜桜鑑賞へ。まずは茶碗坂をテクテク登って、「清水寺夜間拝観」へ。桜越しに朱塗りの山門が見えてくると、テンションが上がります。
早すぎる桜の開花のせいか、意外と人波がスムーズに進みます。桜と清水の大舞台と京都の夜景。絵のような眺めです。
産寧坂を下りて四条方面へ。石畳、街並み、枝垂桜。こちらの絵も美しい。
ねねの道を抜けて円山公園を目指します。人力車のお兄さんたちが道ゆく人に声をかけますが、みんな桜に気をとられてそぞろ歩き。
円山公園の枝垂桜は満開。神秘的な美しさ。少し肌寒いので松明の灯りと暖かさがありがたいです。
●狩野山楽・山雪@京都国立博物館
第1章 京狩野の祖、山楽
山楽「松鷹図襖」。始まりは永徳「檜図屏風」との対比から。画面中央に巨大な幹が座し、双翼に枝が渦巻状に広がる構成から、両者の関係は明らか。2007年の「狩野永徳展」から6年。その正統続編がいよいよ開幕。
山楽「龍虎図屏風」。「妙心寺屏風」も勢揃い。雲海からニュッと顔を出す龍。斜め線と渦の雲海表現が、後の幾何構成を予感させる。振り返りつつ吼える虎は本物の虎!猫じゃない。牙や歯の描写も細密。豹が雌虎役なのはご愛嬌。
木村香雪「狩野山楽像」。四角く重量感のある面立ちと不敵な眼差し。豊臣から徳川へと移る乱世を生き延びた執念としたたかさを想像させる。
第2章 山楽から山雪へ
山雪筆、山楽監修という位置づけで観る、天球院襖絵。実に22年ぶりの展覧会出品。
山雪/山楽「朝顔図襖」。竹を束ねた垣の精緻な描写、水平垂直な線で平面に空間を畳み込む構成。金地を背に、朝顔の優美な曲線と色彩と絡み合う構図が重奏的で美しい。
山雪/山楽「梅花遊禽図襖」。後の「老梅図襖」へとつながる梅の幹の描写。いよいよ濃厚な京狩野が立ち上がる!
第3章 山雪の造形実験 I - 花鳥と走獣
木村香雪「狩野山雪像」。卵形の輪郭に、神経質そうな目線。学究肌という解説に合点がいく。派の隆盛は江戸狩野に譲っても、その絵の技量はスゴイ。
山雪「雪中白鷺図」。墨絵も上手い。解説の名調子も楽しい。
山雪「龍虎図」。寄り目のちょっと頼りない龍は、蕭白の元ネタを思わせる。前脚を揃えた虎は、カワイイ系の先駆け。(この絵の虎じゃなかったかも。。。)
山雪「竹虎図杉戸絵」。チョコンとたたずむ、カワイイ系虎。剥落が残念。応挙は観る機会があったのだろうか。
第4章 山雪、海外からの里帰り作品と関連作
山雪「老梅図襖」。巨大な幹がググッと鋭角に捻じ曲がりつつ画面を這う。画面上部で幹が画面からはみ出し、一度下に降りて、再びスッと立ち上がる。その凝縮された空間と漲る力感に圧倒される。50年ぶりに「群仙図襖」と表裏合わせて公開というコンセプトのために、展示空間が少々狭い。
山雪「長恨歌図巻」。色彩のあまりの美しさにビックリ。下から照明を当てているように浮かび上がる。解説によると裏彩色とのこと。精緻に描き込まれた人物、建物。驚くほどの保存状態の良さ。上下巻同時展示が嬉しい。ガラスケースに張り付いて、食い入るように観ました(初日夕方なせいか、他に人がいなかった)。超絶のオススメ作品。眼福。
第5章 山雪の造形実験 II - 山水・名所・人物
第6章 山雪と儒教・仏教
第7章 山雪の造形実験 III - 飾りと人の営み
第8章 極みの山雪ワールド
最後にドドンと濃い作品を並べる、駄目押し構成。
山雪「蘭亭曲水図屏風」。山雪お得意の平面内をジグザグに流れる水流に沿って、詩を読む人、食べ物を引き上げる子供たちなど様々な点景が連続する。
山雪「雪汀水禽図屏風」。画面に全体に広がる波紋の立体感と色合いが素晴らしい。工芸品のよう。
こんなに凄い絵師がいたのか!全編見所のものすごい展示。京都限定39日間、行くしかない!
そして特別展示館の右側には、いよいよ新平常展示館が立ち上がってきました。来年春の開館が待ち遠しいです。
2013年03月28日
●3月の桜 江戸川橋-飯田橋-千鳥ヶ渕
夕方、江戸川橋で用事を終えて外に出ると、川沿いに桜が咲いていました。
水辺の桜に誘われて、飯田橋の外濠まで散策。
ここまで来たら、やっぱり千鳥ヶ淵まで行かねば!と思って、東西線に乗って九段下へ。平日のせいか、思ったよりも空いていて意外と観やすい。
水辺、ボート、桜。特等席から観る桜はいかほどか。
見上げれば、空を覆う桜天井。桜に包まれる空間体験は本当に美しい。
ボート乗り場まで行って折り返し。桜を堪能しました。
2013年03月23日
●3月の桜 上野-乃木坂-六本木
今年の桜は超早咲き。3月半ばに咲き始め、下旬には満開を迎えました。往く春を追いかけて、久しぶりに過密スケジュールを組んで展覧会と桜をハシゴしました。
ラファエロ展@国立西洋美術館。「自画像」。ちょっとカメラ目線な美青年。作品だけでなく、自画像もよく売れたというのが当時のメディアの特徴。「大公の聖母」。バラ色の頬と伏した目が優雅で美しい傑作。いつかはシスティーナ礼拝堂に行きたい。
上野公園の桜は満開。花見の人出で大盛況。
不忍池を散策しつつ湯島駅へ。タワーマンションがずいぶんと建ちました。
湯島から千代田線に乗って乃木坂へ。
乃木神社の枝垂桜が満開!境内の桜はすでに新緑に変わっていてビックリ。
ミッドタウンの太鼓橋は桜を愛でる人で大賑わい。
A971でお昼を食べて、後半戦へ。
歌舞伎|江戸の芝居小屋@サントリー美術館。屏風と浮世絵を中心にして江戸時代の風俗を等身大で再現する構成が冴える。
G-Tokyo@ミッドタウン・ホール。池田学さんと伊庭靖子さんの近作が観られて嬉しい。
デザインあ展@21_21 DESIGN SIGHT。入場待ちの列に怯みつつも、花見の勢いで突入。実際には10分ほどの待ち時間で入場。
「あ」れ?、「あ」ら!の記念撮影から始まり、動く「あ」や「ごちゃまぜ文庫」といった体験型展示と「お寿司のいろいろ」といった美しい鑑賞型展示がほどよく混ざった構成が楽しい!
太鼓橋から眺める夜桜。春の一日を満喫しました。
2013年03月21日
●アートフェア東京2013
東京国際フォーラムで開催中の「アートフェア東京2013」を観ました。
毎年一般公開日はものすごい人なので、今年は森美術館フェロー会員の特典でオープニングプレビューに参加。それでもけっこうな人出。
靖山画廊「神﨑泰志 木彫展」。今回のイチオシ。クスノキから彫りだされた一木造の彫刻作品。真ん中に横たわる巨大な安全ピン+クリップ群が一木造りとは驚愕。(右奥のジッパーは、ジッパーパーツのみ別作り。材料がもったいないので。)
「本の虫」。本をムシャムシャ食べるオバケのような虫たち。カワイイ。これも一木造。個人的にはこれが一番好き。残念ながら売約済みでした。作品を丁寧に解説して下さった方が作家さんご本人と知ってビックリ。
西村画廊。三沢厚彦さんのシロクマ君がお出迎え。ガオーッ!
井上オリエンタルアート「百の五寸」。100枚の古染付五寸皿百枚をビニルチューブに包んでズラリと壁面に吊る展示が異色。骨董パーツ屋。
泰明画廊「今井喬裕 夢幻変奏曲」。西洋風の面立ちの少女が様々な衣装でたたずむ。メイド、巫女といったかなりキャッチーな題材が、油彩画の質感に違和感なくおさまっていて惹き付けられる。
ART GALLERY X at Takashimaya「井上裕起 salamander」。大胆なFRP造形とウレタン塗装によるテカッとした仕上がり。ウーパールーパーのような愛嬌と、完成度の高い立体の組合せが魅力的。
「KITTE」に咲く枝垂れ桜を眺めつつ帰路。
2013年03月13日
●ルーベンス展「ブロガー・スペシャルナイト」@Bunkamura ザ・ミュージアム
Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中のルーベンス展。そのブロガー・スペシャルナイトに参加しました。
注:展示会場の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
“ルーベンスのここがすごい!! TBS小林悠アナが宮澤学芸員に直撃取材”
本物に囲まれて話すのはとても贅沢なこと。小声で話さないといけない。
宮澤学芸員はルーベンスの活躍したアントワープに10年間ほど住んでおり、ガイドの仕事もしていた。
フランドルはゲルマンとラテンの食文化の両方が入っていて、とても美味しい。豊かだからこそ奪い合いで戦場になった。
フランダースの犬はイギリスの作家の作品なので、現地では有名ではない。けれども、日本人観光客が足跡を辿りたがるので銅像を作ってくれた。
ルーベンスは教養豊かで、外交官のような仕事もした。
ラテン語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、英語も話せた。
イタリアに8年間留学した後、母親の危篤を聞いて帰国。イタリア滞在時から活躍しており、ほどなく宮廷画家になった。
ルーベンスは人物画家。故郷に戻りアントワープに工房を開く。
宗教改革においてカトリックが挽回を図る時期であり、「キリスト教はこんなにすごいんだぞ」ということを絵にする仕事を手がけた。教会も戦場になり、その復興もあってすごい量の注文を請ける。
代表作としてルーブル美術館にあるメディチ家の天井画がある。とても一人では書けない。顔はルーベンスが描く。工房作でもルーベンスがチェックしており、質を保っている。人物がちゃんと描いてあるかがポイント。
工房にはヴァン・ダイクやヨルダーンスといった、後に有名画家になる弟子もいた。
ルーベンスは人物画家。風景に時間をかけたくなかった。動物も同様。なので専門画家と共同制作を行った。スネイデルスは狩猟画の専門家。あちらの家では死んだ動物が普通においてある。ベルギーに行ってビックリしたのは、豚の頭の半割をラップに包んで売っていること。当時の文化が分かって面白い。
当時の庶民はルーベンスの作品を観られない。教会に行けば大きな宗教画の傑作は観られた。版画は庶民が観るための手法。ルーベンスは版画の仕上がりにも細かく注文をつけた。上から筆で修正させたものもある。
ルーベンスは国によっては、絵画を版画にする権利を取っていた。
ルーベンスの肖像画も大人気。それほど当時のスターだった。
画家、教養のある人、万能の天才。家族思いの面もあり、若くして亡くなったお兄さんの子供を引き取って育てた。「眠る二人の子供」はその子達を描いたといわれている。一人目の奥さんと三人の子を、二人目の奥さんと五人の子供をもうけた。二人目の奥さんとは彼女が16、7歳のときに結婚している。若い子も一緒にいて楽しいおじさんだったのだろう。
イタリア美術からの着想
右「毛皮をまとった婦人像(ティツィアーノ作品の模写)」
小林アナが好きな絵に上げた作品。ティッツィアーノの絵を模写しつつ、ハイライトを足し、肉付きも良くしている。この絵の発展形として、後に裸に毛皮を羽織る若奥さんを描いちゃう。太陽のような健康美。
「ロムルスとレムスの発見」
宮澤学芸員が特にブログで書いて欲しい絵として上げた作品。人物表現がすごい。若いときの作品なので、動物も全部自分で描いている。真ん中が空いていて視線がグルグルと動く。構図として上手い。
ルーベンスとアントワープの工房
右「復活のキリスト」
小物は弟子作?左の天使も?人物はちゃんと描いてある。
左「ヘクトルを打ち倒すアキレス」
宮澤学芸員リクエストその2。真ん中の戦闘シーンはルーベンスの筆。勢いがあって良い。上手い絵、惹きこまれる。
ルーベンスと版画制作
「キリスト降架」
TBSで番宣を作る際に、フランダースの犬に登場する「キリスト降架」が版画になってきていることを伝えるために、原画から版画へとフェードアウトする映像を作ろうとした。ところが実際には版画は左右が反転していて作れなかった。意外とこだわっていない?
工房の画家たち
アントーン・ヴァン・ダイク「悔悛のマグダラのマリア」
小林アナが好きな絵に上げた作品その2。赤い目の水分の盛り上がり。髪の毛の艶感。本物じゃないと分からない。
専門画家たちとの共同制作
ルーベンスは美術史に出てきた数少ない天才の一人。彼が作った流れの先にルノワールが乗っている。豊かで力があって、彼なしにバロックは語れない。
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「ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア」
Rubens: Inspired by Italy and Established in Antwerp
会期:2013年3月9日(土)~4月21日(日)
開催期間中無休
開館時間:10:00-19:00(入館は18:30まで)
毎週金・土曜日21:00まで(入館は20:30まで)
会場:Bunkamuraザ・ミュージアム
http://www.bunkamura.co.jp/museum/
主催:Bunkamura、毎日新聞社、TBS
後援:外務省、イタリア大使館、オーストラリア大使館、ベルギー大使館、ベルギー・フランダース政府観光局、フランダースセンター
協賛:損保ジャパン、第一生命保険、大日本印刷、三菱商事
協力:アリタリア-イタリア航空、エールフランス航空/KLMオランダ航空
監修:中村俊春(京都大学大学院文学研究科教授)
2013年03月10日
●HOUSE VISION 2013 TOKYO EXHIBITION
青海駅前の特設会場で開催中の「HOUSE VISION 2013 TOKYO EXHIBITION」を観ました。
0 [会場構成] 隈研吾
木組みによる通路+ベンチ。
1 [住の先へ] LIXIL×伊東豊雄
格子戸を現代風にアレンジした「可変縦型ルーバー」で光と風とプライバシーを調節する半屋外空間。透明カーテンで囲われたトイレ+シャワー、かまどや囲炉裏のあるキッチンテーブル。建材メーカーLIXILの最新パーツを使って、モックアップをそれらしく構成。マンションでも使用可能を謳うのであれば、床防水への対応も示して欲しかった。
2 [移動とエネルギーの家] Honda×藤本壮介
エネルギーを結節点として車と共生する家。三層の入れ子構造の家屋と、段階ごとに変化する乗り物形態が特徴。層間の仕切りは省略して、コンセプトコラージュとして表現。コンパニオンの方がUNI-CABに腰掛けながらキッチンをスイー、スイー、と移動するパフォーマンスと、泡風呂の泡の実演が面白い。白く塗った建屋がCGのよう。
3 [地域社会圏] 未来生活研究所×山本理顕、末光弘和、仲俊治
500人共生コミュニティーを1/5モデルでビジュアル化。東雲キャナルコート1街区の発展形のような感じ。東雲が内部と外部のシャッフルだったのに対して、今回はプライベートとパブリックのシャッフル。スケルトンの巨大さが気になるけれども、立地が良ければ住んでみたいと思う。
4 [数寄の家] 住友林業×杉本博司
ゆったりとした間取りで快適さを演出する「数寄の家」と、古物と技法で価値を作り出す茶室「雨聴天」。先日の狩野先生の「若冲は旦那芸」という発言を思い出して、これも旦那芸だなと思う。
5 [家具の家] 無印良品×坂茂
先日の講演会で話しに出ていた製品版「家具の家」。良品計画の家具で埋め尽くされた内部は、当たり前だけれども良品計画の店舗みたい。坂さんの大胆さが意外と感じられないのは、埋立地のスケールに負けてるからか。ワンルームに洗面・トイレ・浴槽をまとめる間取りは疑問。
6 [極上の間] TOTO・YKK AP×成瀬友梨・猪熊純
外部を白く、内部を緑化の対比を徹底した計画。内部空間に立ち入れないので、緑化したトイレが心地良いか今一つ実感できない。ビジュアル的な面白さを優先した感じ。
7 [編集の家] 蔦屋書店×東京R不動産
マンションリノベーションのIKEA。有料パビリオンとしては空間的な魅力に欠けると思うけれども、来場者の方たちの反応は上々。パーツ一つ一つの値段を吟味しながら作るプロセスが大切。
パーツの組み方の工夫で、これからの暮らし方を提示する展示会。全く新しいビジョンやツールを目指すのではなく、地に足をつけながら前を向こうという姿勢が現代的。
2013年03月03日
●円山応挙展(前期)@愛知県美術館
愛知県美術館で開催中の「円山応挙展 -江戸時代絵画 真の実力者-」を観ました。
第一章 「リアルに見えること」の追求
「大石良雄図」。等身大の大きさ、着物の奥に透ける身体のライン。着衣に素足、無背景、女性と子供は誰なのか。リアルで謎めく存在感。
「驟雨江村図」。墨の濃淡だけで描く雲、風、枝、波。大気が変化する一瞬を捉える観察眼と描写力。
「西施浣紗図」と伝仇英「五仙女図」。撫で肩、顔の大きさ、髪型。応挙が熟覧した可能性が高いと言われれば、確かにと思う。
第二章 伝統としての写実
「虎嘯清風図」。フサフサの体毛、前脚を揃えて首をヒョイと捻るポーズ。カワイイなあ!
「牡丹孔雀図」と「孔雀図」。瑞祥としての前者、生物としての後者。同じ題材を書き分ける力量。首が前方に迫り出してくるような描写が圧巻。
「双鶴図」と陳伯冲「松上双鶴図」。若冲との接点であり、分岐点かも?応挙前を示すことで、応挙が美術史の中に織り込まれていく。
第三章 現実空間との連続性=トリックアート
大乗寺「松に孔雀図襖」、「郭子儀図」。精緻に再現された空間、畳に座った高さで見えるレベル設定、LED照明に照らされる再現展示は素晴らしい出来。今はもう観ることの出来ない、大乗寺の応挙空間を堪能。立ち尽くすこと30分。
「雪松図屏風」。通路奥に現れる、距離をとった観え方が新鮮で美しい。
第四章 技法への確信
「富士三保図屏風」。本作を含めて千葉市美術館の屏風二点が出ているのも、地元民として嬉しい。
「龍門鯉魚図」。黒と白の縦ストライプに見え隠れする鯉。デザイン的な表現で、水流の激しさを伝える。動と静の対比。
「白狐図」。絞り込まれた構成要素、際立つ妖艶な表情。
終章 応挙画はなぜ好かれ/嫌われたのか?
若冲、蕭白、蕪村。多彩な才能に賑わう京都に颯爽と登場して、あっという間に席巻してゆく応挙の評判記。ライブ感があって面白い切り口。
大乗寺客殿の再現展示を筆頭に精選された作品群は観て楽しく、中国からの影響を実例で示す学術面もなるほどと腑に落ちます。二面構成がピシッと決まった完成度の高い企画展。気がつけば2時間半ほど観ていました。巡回なしなので、遠征してでも観る価値のある展示だと思います。
惜しむらくは、調光のスムーズさを欠いていること。光の変化がカクカクとして、せっかくの自然光再現がコマ落ち状態に感じられます。2006年のプライスコレクション「若冲と江戸絵画」展では、蛍光灯+スムーズな調光による自然光再現に感動したので、あの感動をもう一度!という勢いで出かけた身には残念至極。願わくば、会期中に対応されますように。
2013/3/6 追記
今回の調光について専門の方から教えていただいた内容を下記にまとめます。
--まとめ ここから--
パナソニックの使っているLED素子を駆動させる電力にある程度パワーが必要となっているようで、「調光を落とすと、眼の感覚で20%以下(電気的には5%との説も)でフリック(チラツキ)始めるので、調光回路で強制的に電流を遮断する設計になっている。これは今後の検討課題になっている。」とのこと。
LED素子によっては (いわゆるハイパワーでなく小さいものが多いけれども) 0~100%の調光に追随するものもあるし、それを謳っている器具メーカーもある。
展示ケースでは動的な調光をしないのであまり問題にならないけれども、あの光量で暗転したり点灯したりは、基本的にはマズイ。
--まとめ ここまで--
鑑賞時に感じたのは、機器によるチラツキと同時に、「郭子儀図襖」、「松に孔雀図襖」、「四季耕作図襖」それぞれの照明をタイミングを少しずらして明暗させる際に、お互いの照明が隣に漏れ入ってチカチカ感が倍増している感じがすること。おそらくは光を適度に分散させるために照明位置を高めに設置した結果、隣の間まで影響を及ぼすことになったのかと。
機器の変更が難しければ、調光の下限をフリッカの発生する手前で抑えてループさせる+目立たない色の遮光性スクリーンを吊る等して漏れ入れを抑えることが次善策として検討する価値があるかと思います。