2012年11月08日
●美術にぶるっ!@東京国立近代美術館 夜間特別観覧会
東京国立近代美術館で開催中の「日本美術にぶるっ!」。その夜間特別観覧会に参加しました。
※注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
□ミニレクチャー/講師:鈴木勝雄主任研究員
・4F~1F全てを使って500点以上を展示。
・賛否両論
・「ぶるっ」と震えたことありますか?作品を観たときの「オッ!」という感じ、小さな違和感
・ギャラリーリニューアル
ハイライトコーナー/眺めのよい部屋/スツール/小区切りの空間
・第I部 MOMAT コレクションスペシャル
重文13点。
・第II部 実験場 1950s
東近美が誕生した1952年を再現展示しつつ、2012年の日本に伝えたい。メッセージの込められた大きな企画展。
「戦争の世紀に」→実験場1950s→「疑うことと信じること」。ジャンル横断的な場。
□特別観覧会
エレベーターで4Fに上がって、展覧会場へ。
○第 I 部 MOMAT コレクションスペシャル
エレベーターで4Fに上がって、左に折れると、「ハイライトコーナー」。黒に近い濃紺の空間に、白い展示ケースが浮かび上がります。一番手前に狩野芳崖「仁王捉鬼図」のギョロリと愛嬌のある目。突き当りには原田直次郎「騎龍観音」のつぶらな瞳。見た目はステキですが、照明が反射して意外と観難いのが玉に瑕。
ハイライトコーナーの裏手に「眺めのいい部屋」。皇居は闇に沈み、オフィスビルの夜景が広がる。ドラマのワンシーンのよう。日中にノンビリと過ごしたい。
ハイライトコーナーの反対側に続く展示室。展示室を小分けにしたことで、1室ごとのテーマ性が明確に。高村光太郎「手」、岸田劉生「道路と土手と塀(切通之写生)」など、教科書で見た名品がザックザック登場。
3Fに降りて、左手に広がる「日本画コーナー」。本展のキービジュアルになっている上村松園「母子」、個人的に一番ぶるっとくる福田平八郎「雨」等がズラリと並ぶ壁面の横を潜ると、円弧状に展示空間が広がります。中央の柱を囲むように散りばめられたスツールが、良い感じに空間の緊張感を和らげます。当初の構想にあった畳コーナーも体験してみたかった。今回のリニューアルで一番好きな空間です。
2Fで第I部は終了で、続けて1Fに降りて第II部へ。
○第II部 実験場1950s
展示室入って正面の液晶スクリーンに映し出される朝日ニュース第363号「原爆犠牲第一号」。原爆の瓦礫の焼け野原の映像に、鑑賞気分が吹っ飛ぶ。先日出張で東北に行った際に見た、建物二階外壁に残る津波の跡が思い起こされて、言葉を失って見入る。
亀井文夫「流血の記録 砂川」。測量を阻止せんとする農民たちと警官隊との衝突。警官隊の登場後も、フィルムは意外と朗らかに粘り強く続く。思わず長居。
東山魁夷「道」。重く苦しいトーンの展示が続く中で、一服の清涼剤のよう。
東近美が誕生した1952年を再現展示しつつ、2012年の現代へのメッセージを投げかける。その世相は暗く、混迷の中で、多様な表現が模索されたように見えます。構成はかなり刺激的。一見平和で繁栄を享受する現代もまた、頻発する地震や未曾有の津波と原発事故、領土問題等が影を落とします。1950年代から60年代へと続く道筋を辿ることは、これからの時代を考える上で重なる部分があると感じました。
第I部、第II部ともに非常に見応えのある展示です。ただし、内容の連続性は希薄です。またそれぞれに非常にボリュームがあります。できれば、2回に分けて鑑賞することをお薦めします。
□展覧会概要
東京国立近代美術館 60周年記念特別展
美術にぶるっ! ベストセレクション 日本近代美術の100年
Art Will Thrill You! : The Essence of Modern Japanese Art
会場:東京国立近代美術館
会期:2012年10月16日(火)~2013年1月14日(月)
開館時間:10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)
※入館はそれぞれ閉館の30分前まで
休館日:毎週月曜日(ただし12月24日と1月14日は開館)と、年末年始(12月28日~1月1日)。
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