2012年04月20日
●セザンヌ -パリとプロヴァンス@国立新美術館
「セザンヌ -パリとプロヴァンス」を観ました。「大回顧展モネ」で華々しく開館した国立新美術館の開館5周年展です。セザンヌといえば2008年に横浜美術館で「セザンヌ主義」が開催されていますが、内容は画家が後世に与えた影響の展覧会でした。今回は「100%セザンヌ」です。パリとプロヴァンスを軸に、セザンヌの創作の軌跡を辿ります。
I 初期
「四季」。「えっ、これがセザンヌ?」。古典的な装飾画と、若き日のセザンヌがこの絵をきっかけにパリでの美術学習を許されたというエピソードとの対比に、セザンヌも始めからセザンヌじゃなかったんだなあと納得。
II 風景
「首吊りの家」。前景の道路がV字形に沈み込み、遠景に山の水平線が広がる大胆な構図、細かく色面に再構築される画面。画面に漲る明るさが、印象派の影響を思わせます。
「サンタンリ村から見たマルセイユ湾」。寒色系で再構成される海と空、その間に大きく食い込む土と緑。
「マルヌの川岸」。水平に伸びる道と川、垂直に伸びる木、幾何学的な建物群。色面で再構築された画面の見事な統一感。
「サント=ヴィクトワール山」。空間を意識して置かれた色面が、景色を再構築し、結晶のような美しさに至る。
ただ、壁の緑色があまりに濃くて、目が疲れます。
III 身体
「3人の水浴の女たち」。単体で観るとあまりにドッシリとした女性のプロポーション。全体で観ると、色彩とタッチと構図の調和がとても美しい。
IV 肖像
「同じ姿勢をとり続ける」ことにモデルの価値を見い出すセザンヌ。モデルも大変そう。
「アンブロワーズ・ヴォラールの肖像」。そんなセザンヌを見い出す敏腕画商の肖像画。サイズも一際大きく、100回以上もポーズを変えさせられたというエピソードもさすが。
V 静物
「りんごとオレンジ」。大判のカンヴァスに緻密に仕上げられたりんごとオレンジの見事な質感、背景のプリント生地の山のような形態、前景の白布の鋭角的な折れ曲がりとダイナミックなボリューム。吸い寄せられるように見入ってしまう大作。他の作品が本作のための布石に見えるほどに、飛び抜けた存在感を放つ。
「青い花瓶」。背景の青と花瓶の青。縦に切られた瓶や斜めに横切る水平線が、眼を惹き付けて離さない。
VI 晩年
「5人の水浴の男たち」。こちらはスラリとした頭身を持つ、肉付きの良い5人の男たち。色面の溶け込むように解体気味の背景。ボリュームの捉え方が柔らかくなったような印象を受けます。
「レ・ローヴのアトリエ」。アトリエを特徴付ける側面二方向からの自然光を体験したかったです。
「100%セザンヌ」は看板に偽りなしですが、絵は小ぶりな物が多く、大回顧展というよりも「セザンヌの絵の変遷を辿る秀作展」の趣きです。正面から見ると反射で作品がとても見難い照明セッティングと、目を疲れさせる濃い緑の壁色選択という会場構成に疑問を感じました。
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