2012年01月10日

●ザ・ペスト・オブ山種コレクション(後期)@山種美術館

 山種美術館で開催中の「ザ・ベスト・オブ山種コレクション」(後期)を観ました。今回はいつも御世話になっている「弐代目・青い日記帳」のTakさん企画による、山﨑館長ギャラリートークに参加しました。

 ギャラリートーク
 奥村土牛「醍醐」。ピンク色は、今では使われなくなった綿臙脂というカイガラムシをすり潰した絵具を使っている。御舟作品にも使われている。
 東山魁夷「満ち来る潮」。山種コレクション最大の作品。この作品が収まるように展示室の幅が決められている。フットライトで照らすのは魁夷の指示。岩の黒は絵具を焼いて使う。
 福田平八郎「牡丹」。裏面に金箔を貼り、裏彩色も施している。
 上村松篁「白孔雀」。庭に多くの鳥を飼っていて、動物園以上に種類が豊富。胡粉は薄く何度も塗り重ねて定着させる。
  平山郁夫「バビロン王城」。途中で色が変わってはいけないので、高価な青を一度に大量に購入する。薄く何度も塗り重ねるので剥落しない。
 速水御舟「炎舞」。種二は画家との付き合いを大切にしたが、御舟は早逝したため会う機会がなかった。もう一度描けといわれても描けない作品。背景の黒は良く観ると紫だけれども、印刷では出せない。裏彩色かと思うほどの薄塗り。炎は仏画の炎をモチーフにしている。御舟は様々な角度から蛾をスケッチしたが、この絵では全て正面構図。
 日本画の素材、塗りといった専門知識、祖父山﨑種二氏と画家との交流エピソードといった人との交流を交えることで、絵画が構成、線、色彩という視覚情報から抜け出てきて、とても立体的に見えてきます。

 ギャラリートークの後に、改めて館内を回ります。
 第1展示室を右に曲がると、まず洋画、そのあとに近現代日本画が登場します。右手に速水御舟「翠苔緑芝」、左手に奥村土牛「城」「醍醐」と色彩美に優れた作品が並びます。その奥に東山魁夷「満ち来る潮」の荒々しい海が展示室幅いっぱいに広がります。さらに左に曲がると川端龍子「鳴門」の豪快な青、振り返ると奥村土牛「鳴門」の緑地に渦巻く潮。見事な潮の競演は圧巻です。
 折り返して進むと、右手に福田平八郎「芙蓉」、「筍」の保守的な美しさと前衛的なデザインセンスの競演。さらに進むと東山魁夷「年暮る」、「秋彩」と淡いブルートーンの雪景と青赤黄の晴れやかなコントラストの対比が目を楽しませます。そして加山又造「満月光」の繊細な前景と雄大な後景が同居する大画面。
 第二展示室へ。速水御舟「紅梅・白梅」。老いた紅梅と若々しい白梅の見事な描き分け。速水御舟「炎舞」。平面的な仏画の炎、正面構図の蛾の群、薄塗りの発色の妙。明確な素材と対照的に、ボンヤリと光ながら渦を巻いて上昇する火炎。

 作品数44点+下絵4点と作品数を絞り込むことで、山種美術館本来の空間の豊かさが引き出され、近代日本画の名品をゆったりと鑑賞できるのが何より良かったです。

Posted by mizdesign at 2012年01月10日 23:55
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Tracked on 2012年01月14日 00:47

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Tracked on 2012年01月14日 00:48

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