2012年01月30日
●1月の鑑賞記録
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博物館に初もうで@東京国立博物館
毎年恒例、年始は東博で始まる。今年の干支、龍の特別展示に、雪舟に、光琳。でも、一番の驚きは「清明上河図」の140分待ちの大行列。会期初日からの猛スパートに呆然。これは必見と早期の再訪を期す。
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◎特別展「北京故宮博物院200選」@東京国立博物館平成館
開館90分前に門前に並んで、スムーズに入館。神品「清明上河図」の精緻かつ濃密な描写を堪能。。
◎建築、アートがつくりだす新しい環境 これからの"感じ"@東京都現代美術館
年をまたいで再訪。今回はロレックス・ラーニングセンターの映像をジックリと堪能。冒頭の巨大模型と、エンドの3D映像。アートと建築を同じ地平に並べ、構想と現実がファンタジックに融合する、身体感覚の拡張がとてもしっくりとくる展示だった。
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○ザ・ベスト・オブ・山種コレクション【後期】@山種美術館
山﨑館長のギャラリートークの後、ジックリと展示を観る。日本画の素材、塗りといった専門知識、祖父山﨑種二氏と画家との交流エピソードといった人との交流を交えることで、絵画が構成、線、色彩という視覚情報から抜け出てきて、とても立体的に見えた。
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脱ぐ絵画@東京国立近代美術館
モデルを継ぎ接ぎして理想美を描く黒田清輝《智・感・情》。強烈なデフォルメで偶像を破壊する(?)萬鉄五郎《裸体美人》。横向き、縦向きの意図するところ。エロも崇高も日常も同じ鍋に放り込んでグツグツ煮立てたような、濃厚でちょっと眩暈する展示だった。
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○百椿図@根津美術館
寒椿の季節に、広い第一展示室で百椿図を見る。そしてNEZU CAFEでケーキセットを食べながら、雨に濡れた庭園の美しさを見渡す。立地と季節と環境装置とコレクションの合せ技。ゆっくりと流れる時間がとても良かった。
中川正子写真展「新世界」@valveat81
赤ちゃんの成長と、光と風と水の断片をコラージュ状に並べた展示。その前を見る視線と、若い赤ちゃん連れのカップルで盛況な館内が作り出す暖かい世界がとても印象的だった。
みんな大好き!ノンタン展@松屋銀座
子供たちの人気者「のんたん」の原画展。あっかんベのイタズラ心、サンタを探し回る夢いっぱいな話など、シンプルな楽しさ満載。途中から説教っぽくなるところに、キャラクターの寿命を感じる。でも始終一貫して子供を向く視線が良かった。
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時空を越える本の旅@東洋文庫ミュージアム
去年開館した話題の美術館に初訪問。モリソン文庫の開架式展示を中心に、本に囲まれる感覚が嬉しい。知的好奇心が刺激される。中庭をはさんで対峙する、オリエントカフェで過ごすひと時も嬉しい。静かな時間が心地良い。
◎フェルメールからのラブレター展@Bunkamura ザ・ミュージアム
コミュニケーションを縦糸に、三点のフェルメール作品を横糸に紡ぐ17世紀オランダ絵画展。作品数は40点と少な目ながら、丁寧な章立てと全てが油彩画の華やかさでビジュアル的に映える。特にフェルメールからレンブラント派へと光の捉え方の変化が劇的な3章から4章にかけての展開が素晴らしい。
2012年01月22日
●第36回サンスポ千葉マリンマラソン
冷え込み厳しい小雨の中、第36回サンスポマリンマラソンを走りました。雨の予報のわりに小雨だったので、ひょっとして止むかなと期待を込めて、長袖ランニングシャツ+短パン+手袋でウォームアップ。今年はNike+GPSとRunKeeperでペースを聞きながら走ります。
10:05、雨が強まる中スタート。1kmくらいまで大混雑が続いた後、ようやく渋滞解消。7kmを30分以内で通過することを目標に、ペースを上げます。幅が広く直線の多いコースはレースに最適で、とても走りやすいです。7kmを31分ほどで通過。スタートロスが1分ほどなので、ギリギリ目標内。思うほどペースが上がりません。
第二折り返しを過ぎてもペースはさほど変わらず。12km地点で靴紐が解けたので、結びなおす。直線続きのコースに息切れ気味。公園内をグルグル回るコースに移行して、ちょっとペースを持ち直した気がする。14kmを1時間1分30秒ほどで通過。30秒のペースダウン。
17kmを過ぎる辺りで雨脚が強くなり、ペースを気にする余裕もなくゴールを目指してひたすら足を運ぶ。球場が見えてきてラストスパートと思うも、ペースは上がらずそのままゴール。
記録は1:34:08(ネットタイム1:33:00)、一般ハーフ男子の部10037人中645位でした。雨中頑張ったけれども、記録的には去年より3分弱遅かったです。やはり走り込みの結果がそのままタイムに反映されます。来季はもう少し絞りこんで大会に臨みたいです。
男子更衣スペースはマリンスタジアムの観客席。着替え中に芝生上で上位入賞者の表彰が行われていました。中央学院大の名前が何人も呼ばれて、箱根出場校はさすがに早いと思いました。
2012年01月10日
●ザ・ペスト・オブ山種コレクション(後期)@山種美術館
山種美術館で開催中の「ザ・ベスト・オブ山種コレクション」(後期)を観ました。今回はいつも御世話になっている「弐代目・青い日記帳」のTakさん企画による、山﨑館長ギャラリートークに参加しました。
ギャラリートーク
奥村土牛「醍醐」。ピンク色は、今では使われなくなった綿臙脂というカイガラムシをすり潰した絵具を使っている。御舟作品にも使われている。
東山魁夷「満ち来る潮」。山種コレクション最大の作品。この作品が収まるように展示室の幅が決められている。フットライトで照らすのは魁夷の指示。岩の黒は絵具を焼いて使う。
福田平八郎「牡丹」。裏面に金箔を貼り、裏彩色も施している。
上村松篁「白孔雀」。庭に多くの鳥を飼っていて、動物園以上に種類が豊富。胡粉は薄く何度も塗り重ねて定着させる。
平山郁夫「バビロン王城」。途中で色が変わってはいけないので、高価な青を一度に大量に購入する。薄く何度も塗り重ねるので剥落しない。
速水御舟「炎舞」。種二は画家との付き合いを大切にしたが、御舟は早逝したため会う機会がなかった。もう一度描けといわれても描けない作品。背景の黒は良く観ると紫だけれども、印刷では出せない。裏彩色かと思うほどの薄塗り。炎は仏画の炎をモチーフにしている。御舟は様々な角度から蛾をスケッチしたが、この絵では全て正面構図。
日本画の素材、塗りといった専門知識、祖父山﨑種二氏と画家との交流エピソードといった人との交流を交えることで、絵画が構成、線、色彩という視覚情報から抜け出てきて、とても立体的に見えてきます。
ギャラリートークの後に、改めて館内を回ります。
第1展示室を右に曲がると、まず洋画、そのあとに近現代日本画が登場します。右手に速水御舟「翠苔緑芝」、左手に奥村土牛「城」、「醍醐」と色彩美に優れた作品が並びます。その奥に東山魁夷「満ち来る潮」の荒々しい海が展示室幅いっぱいに広がります。さらに左に曲がると川端龍子「鳴門」の豪快な青、振り返ると奥村土牛「鳴門」の緑地に渦巻く潮。見事な潮の競演は圧巻です。
折り返して進むと、右手に福田平八郎「芙蓉」、「筍」の保守的な美しさと前衛的なデザインセンスの競演。さらに進むと東山魁夷「年暮る」、「秋彩」と淡いブルートーンの雪景と青赤黄の晴れやかなコントラストの対比が目を楽しませます。そして加山又造「満月光」の繊細な前景と雄大な後景が同居する大画面。
第二展示室へ。速水御舟「紅梅・白梅」。老いた紅梅と若々しい白梅の見事な描き分け。速水御舟「炎舞」。平面的な仏画の炎、正面構図の蛾の群、薄塗りの発色の妙。明確な素材と対照的に、ボンヤリと光ながら渦を巻いて上昇する火炎。
作品数44点+下絵4点と作品数を絞り込むことで、山種美術館本来の空間の豊かさが引き出され、近代日本画の名品をゆったりと鑑賞できるのが何より良かったです。
2012年01月09日
●特別展 北京故宮博物院200選@国立東京博物館平成館
東京国立博物館平成館で開催中の「特別展 北京故宮博物院200選」を観ました。見所はなんといっても神品と讃えられる「清明上河図」。所蔵国の中国でもめったに公開されない名宝中の名宝であり、その実体は12世紀の都市風景を活写する超細密風俗画です。主催メディアの力の入れようも相当なもので、公開初日の1/2から140分待ちの報にさもありなん。1/2に出かけた「博物館に初もうで」の際にあわよくばチラ見しようという魂胆はあっさり打ち砕かれ、絶対見るぞと心を入れ替えて出かけました。
開館90分ほど前に東博の門扉前に到着、先客は20人ほどで一安心。開館前には300人くらいに増えていました。開館とともに平成館入場、そのまま清明上河図待ちの列に並び、10分ほどして感動の対面となりました。導入は郊外の風景、木立の中をロバと童子が街へと向かいます。ほどなく街の大動脈たる河川が現れ、船が停泊して荷揚げしています。左に伸びる大画面に沿って都市のパノラマが広がり、その中で活き活きと活動する人々の描写にグイグイと引き込まれます。そして虹橋が登場します。陸路である橋が海路である河と立体交差して、街の賑わいが最高潮に達します。往来を往く人人人。その下を声を上げながら船の帆を畳む人々が往きます。お互いの視線が交差し、声がかけ交わされ、通り抜けんとする船のスピード感!緻密な描写と驚くほど保存状態の良い画面が生み出す、12世紀の北宋の賑わいをそのまま持ってきたような臨場感に魅了されます。画面は街中に移り、木軸の巨大な酒楼を横目に城門をくぐって城内へと至ります。往来には店が並び、人々が行き交います。城門の石垣のシャープな直線、瓦屋根の美しい曲線、人々を活写する柔らかな線。木々は少しぼかした描写で、緻密な画面の中でもその存在感をしっかりと保ちます。まるで現代の漫画家が見聞したそのままを、入魂の思いで描写したような画面は本当にすごい。その場で立ち止まってじっくりと見たいという思いを抱えつつ、警備員の方の「立ち止まらないで下さい」という声に急かされて通り過ぎる数分の鑑賞体験でした。
その後入口に戻って、改めて展示を観ました。異様な大行列状態なのは「清明上河図」のみで、それ以外の展示は比較的ゆったりと見ることができます。
第I部 故宮博物院の至宝-皇帝たちの名品-
清明上河図を含む書画、工芸、服飾の名品展。
第II部 清朝宮廷文化の精粋
第1章 清朝の礼制文化-悠久の伝統-
「康熙帝南巡図巻」。清の康熙帝が甲南へ巡行した際の長編図巻。川沿いの庶民の活気ある生活生活、一巻丸々使っての紫禁城城下の様子。清明上河図への憧れが感じられる。
第2章 清朝の文化事業-伝統の継承と再編-
「乾隆帝是一是二図軸」。満州族の皇帝が漢族の文人に扮してコレクションを鑑賞する。コスプレすることで異民族の文化を継承し再編する。
第3章 清朝の宗教-チベット仏教がつなぐ世界-
「大威徳金剛立像」。千手を思わせる多数の手とデフォルメされたプロポーションが、愛らしさと威厳を感じさせる。
第4章 清朝の国際交流-周辺国との交流-
「乾隆帝大閲像軸」。ヨーロッパ貴族のコスプレをする皇帝像。多数のイメージを合わせ持つ皇帝像が、広大な版図におけるイメージ戦略の一端を感じさせる。
「清明上河図」で力尽きた感もありますが、いずれも劣らぬ名品の数々。できれば再訪してじっくりと観たいです。
2012年01月04日
●謹賀新年 2012
新年明けましておめでとうございます。
本年も宜しくお願いいたします。