2012年01月09日
●特別展 北京故宮博物院200選@国立東京博物館平成館
東京国立博物館平成館で開催中の「特別展 北京故宮博物院200選」を観ました。見所はなんといっても神品と讃えられる「清明上河図」。所蔵国の中国でもめったに公開されない名宝中の名宝であり、その実体は12世紀の都市風景を活写する超細密風俗画です。主催メディアの力の入れようも相当なもので、公開初日の1/2から140分待ちの報にさもありなん。1/2に出かけた「博物館に初もうで」の際にあわよくばチラ見しようという魂胆はあっさり打ち砕かれ、絶対見るぞと心を入れ替えて出かけました。
開館90分ほど前に東博の門扉前に到着、先客は20人ほどで一安心。開館前には300人くらいに増えていました。開館とともに平成館入場、そのまま清明上河図待ちの列に並び、10分ほどして感動の対面となりました。導入は郊外の風景、木立の中をロバと童子が街へと向かいます。ほどなく街の大動脈たる河川が現れ、船が停泊して荷揚げしています。左に伸びる大画面に沿って都市のパノラマが広がり、その中で活き活きと活動する人々の描写にグイグイと引き込まれます。そして虹橋が登場します。陸路である橋が海路である河と立体交差して、街の賑わいが最高潮に達します。往来を往く人人人。その下を声を上げながら船の帆を畳む人々が往きます。お互いの視線が交差し、声がかけ交わされ、通り抜けんとする船のスピード感!緻密な描写と驚くほど保存状態の良い画面が生み出す、12世紀の北宋の賑わいをそのまま持ってきたような臨場感に魅了されます。画面は街中に移り、木軸の巨大な酒楼を横目に城門をくぐって城内へと至ります。往来には店が並び、人々が行き交います。城門の石垣のシャープな直線、瓦屋根の美しい曲線、人々を活写する柔らかな線。木々は少しぼかした描写で、緻密な画面の中でもその存在感をしっかりと保ちます。まるで現代の漫画家が見聞したそのままを、入魂の思いで描写したような画面は本当にすごい。その場で立ち止まってじっくりと見たいという思いを抱えつつ、警備員の方の「立ち止まらないで下さい」という声に急かされて通り過ぎる数分の鑑賞体験でした。
その後入口に戻って、改めて展示を観ました。異様な大行列状態なのは「清明上河図」のみで、それ以外の展示は比較的ゆったりと見ることができます。
第I部 故宮博物院の至宝-皇帝たちの名品-
清明上河図を含む書画、工芸、服飾の名品展。
第II部 清朝宮廷文化の精粋
第1章 清朝の礼制文化-悠久の伝統-
「康熙帝南巡図巻」。清の康熙帝が甲南へ巡行した際の長編図巻。川沿いの庶民の活気ある生活生活、一巻丸々使っての紫禁城城下の様子。清明上河図への憧れが感じられる。
第2章 清朝の文化事業-伝統の継承と再編-
「乾隆帝是一是二図軸」。満州族の皇帝が漢族の文人に扮してコレクションを鑑賞する。コスプレすることで異民族の文化を継承し再編する。
第3章 清朝の宗教-チベット仏教がつなぐ世界-
「大威徳金剛立像」。千手を思わせる多数の手とデフォルメされたプロポーションが、愛らしさと威厳を感じさせる。
第4章 清朝の国際交流-周辺国との交流-
「乾隆帝大閲像軸」。ヨーロッパ貴族のコスプレをする皇帝像。多数のイメージを合わせ持つ皇帝像が、広大な版図におけるイメージ戦略の一端を感じさせる。
「清明上河図」で力尽きた感もありますが、いずれも劣らぬ名品の数々。できれば再訪してじっくりと観たいです。
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