2011年12月31日
●キーワード 2011
今年のアート・街関連を三つのキーワードで振り返ってみます。(2010、2009、2008、2007、2006)
今年は東日本大震災と、それに伴う大津波と原発事故が起きました。それは、これまでの日常が二度とは戻らないと思えるほどの大きな変化を引き起こしつつあります。
『回顧と未来への視線』
そんな中で問われるのが、「回顧と未来への視線」。過去の事例に学び、未来への処方箋を引き出す前者と、変化を受け入れつつこの先の世界を創ろうという後者。明快な目的意識と、可能性を感じさせるヴィジョンに強く惹かれます。
名和晃平-シンセシス-@東京都現代美術館
現美のワンフロアを使っての個展というスケール感と、ゆず登場のサプライズを含めたライブ感。
建築、アートがつくりだす新しい環境@東京都現代美術館
ビジョンと作例と評論のバランスの取れた展示。
メタボリズムの未来都市展@森美術館
メタボリズムを題材に現代へと至る建築史の上書きを試みる野心と、メタボリスト世代の存在感の拮抗、ボリュームある展示量。
建築家 白井晟一 精神と空間@パナソニック電工 汐留ミュージアム
建築家の思想と向かい合う企画力。
『一期一会の展示』
美術館という箱の特徴を活かして、一期一会の見せ方をする展覧会が印象に残りました。
百獣の楽園 美術にすむ動物たち@京都国立博物館
コレクションにモノを言わせた動物園。
不滅のシンボル 鳳凰と獅子@サントリー美術館
あこがれのヴェネチアン・グラス@サントリー美術館
豪華ゲストを迎えての優品コレクション展の連発。
五百羅漢展@江戸東京博物館
徹底した照明演出による空間の創造的構成
森と芸術@東京都庭園美術館
春日の風景@根津美術館
花の画家 ルドゥーテ「美花選」展@Bunkamura ザ・ミュージアム
立地と建物イメージを活かした企画展
三沢厚彦 Meet The Animals-ホームルーム@京都芸術センター
動物が教壇に立つユーモア。
『千葉市美の躍進』
大型企画展が昨年のオルセー展でピークを極めた感がある中、千葉市美が美術館同士の連携をうまく活用して、魅力的な展覧会を連発しました。その観客動員数の向上は、メディアでも話題になりました。地方の伸び代を感じさせる点が素晴らしい。
酒井抱一と江戸琳派の全貌@千葉市美術館
生誕130年 橋口五葉展@千葉市美術館
ボストン美術館浮世絵名品展 錦絵の黄金時代―清長、歌麿、写楽@千葉市美術館
2011年12月30日
●12月の鑑賞記録
12/3
南蛮美術の光と影 泰西王侯騎馬図屏風の謎@サントリー美術館
南蛮屏風という変り種に焦点を当てるコンセプトが、優品屏風を多く擁するサントリー美術館ならでは。
ドラゴンクエスト展@森アーツセンターギャラリー
ドラクエ展再訪。前回とは大違いの大混雑状態。でも鳥山明の原画の美しさ、堀井雄二のシステム設計の過程は興味深くじっくりと見た。次々回はワンピース展だそうで、その集客力は本展のさらに上をいきそう。でも展示というよりは展望台のアトラクションに近いかも。
12/10
◎建築、アートがつくりだす新しい環境@東京都現代美術館
原さんの講義をじっくり聴いていたら、最後のロレックスの映像が尻切れトンボに。藤本さんの住宅の映像はCGだと思ってたら、実景らしくてビックリ。荒神さんのコンタクト・レンズは、レンズの向こうの歪んだ景色が違和感なく溶け込んでいて不思議。名和さんのピクセルと並べて観たい。石上さんのガラスのシャボン玉は、フワリと浮いたガラス膜と、割れたガラスの対比が鮮烈。面白かったので、再訪を期します。
12/11
○長谷川等伯と狩野派@出光美術館
大判屏風絵をズラリと並べ、狩野派と等伯の歴史を辿る。一族として繁栄を築いた狩野派、一代で成り上がった等伯。同じ画題を取り上げながら、双方の相違を見せる構成に、彼らの対立と同時代性が浮かび上がる。
○神戸智行展 イノセント・ワールド@佐藤美術館
白基調の独特な石の質感。水辺の青。映像で飛び交う小さな虫たち。立体の屏風に止まるカタツムリ。金銀影絵の紅白梅。平面に止まらず、立体、映像と表現が広がり、神戸さんの小さな世界が現出する。
神戸智行展 イノセント・ワールド@広田美術
作家さん在廊で、何層にも紙を重ねる画法等、色々とお話をうかがえて良かった。
12/25
○ザ・ベスト・オブ・山種コレクション(前期)@山種美術館
冒頭の又兵衛「官女観菊図」から抱一、大観、栖鳳、松園。そししてチケットにも載っている松岡映丘「春光春衣」の華麗な色彩美。第二展示室には窮屈ながら速水御舟「名樹散椿」も登場。江戸絵画から近代日本画まで、優品をギュッと圧縮した命品展。1階のカフェ椿でのタイアップメニューも美味しい。作品数は多くないけれども、コンパクトな会場にピッタリマッチ。
12/30
歌川国芳展@森アーツセンターギャラリー
太田記念美術館に続く国芳展。多章に渡る構成で、武者絵、美人画、風景画、動物画、戯画等様々な角度から国芳の画業を立体的に浮かび上がらせる。その分、武者絵と動物絵に絞った太田の展示に比べて国芳のアクが薄まった感もあり。