2011年06月26日

●6月の鑑賞記録

6/1
ジパング展@日本橋高島屋
 青山さんの刺繍画。黒地に銀糸がキラキラして、とても綺麗。種を明かしてもまだ不思議なアートの玉手箱。池田さんの仏陀。気が遠くなるほどの超絶細密画。その対角に三瀬さんの大迫力壁。その回りに棚田さんの不思議少女彫刻群。黄金の国に花咲く現代アート大興行。

6/4
画家たちの二十歳の原点@平塚市美術館
 二十歳前後という作画年齢を敷居にして、明治から現代までの日本絵画を通観する展示。長寿な大家から夭折の天才まで、その後の展開は様々なれど、画家のテキストには自負心が漲る。時代を超えて、一つの水平線で通観できることが何より素晴らしい。

五十嵐淳展 状態の構築@TOTOギャラリー・間
 何もない宇宙に「状態を構築」するという宣言。そして宙に浮く木軸模型を覗き込んで、その小宇宙を一つ一つ体験する。周辺条件の解説をバッサリと切り捨て、矩形システムだけを見せる。かっこいいなあ!同名本では実空間を紹介していて、二度楽しい。

 ジュングリン@池袋西武ギャラリー
 脳が発火し「意識が動く瞬間」を発見するいうコピーがスマート。アイデアを紹介するスケッチもスマート。キレイで明快な映像展示もスマート。残念なのは作品数が6点と少なめなこと。展覧会というより、有料ショーウィンドウのようだった。

6/5
ボストン美術館浮世絵名品展 錦絵の黄金時代―清長、歌麿、写楽@千葉市美術館
 写楽展と同時期に開催されたのが効果絶大。絵の見え方がぜんぜん違う。清長のスラリとした美人、歌麿の精気あるエロさ。そして写楽のライバル、豊国の上手さと鳥文斎栄之のカッチリとした構図。わずか20年に焦点を当てることで、黄金期が濃厚に感じられた。

 岡本秋暉とその師友@千葉市美術館
 柏の誇る摘水軒コレクションを中心とした展示。樹に雉がとまっていたり、鶴が脚を揃えて屈んでいたり、鶏が異様に男前だったり。特徴ある構図と、華麗な極彩色に引き込まれた。嘴や羽の一部に用いられる赤も妙にエロチックで効果的。

6/10
名和晃平-シンセシス-@東京都現代美術館
 現代アート最強のヒーローにしてヒロインが贈る、渾身の回遊型企画展。空間の変化に合わせて作品を替え、照明を替えて構成された回廊は、見応え十分。

6/12
 写楽@東京国立博物館平成館
 集客力のあるブランド「写楽」を前面に出し、写楽とその時代の浮世絵画家を紹介する超大型企画展。この展示を見ずして今年は語れない。
 出品作品のラインナップも章構成も良いけれども、音声ガイドはかなり平坦。もう一歩踏み込む執念が欲しかった。

 レンブラント 光の探求|闇の誘惑@国立西洋美術館
 馬の向き、群衆の位置といった構図の推敲。和紙、ベェラムといった素材に応じて硬く柔らかく白く黒く変化する光。それらを見比べることで、彼の創作に立ち会っている気分でドキドキ。更に若いカップルで埋まる館内のアウェイ感がすごい。観られて本当に良かった。

6/18
森と芸術@東京都庭園美術館
 驚くほどに精緻な劇場名場面点刻版画、明るい黄色が美しいゴーギャンの油彩画、想像と妄想が膨らむメルヘン画。ダイジェスト日本編のあとに美術館の庭園。多様な森の世界を紐解き、場所の利を最大限に活かした構成がとても良かった。

歌川国芳展(前期)@太田記念美術館
 猫大好きユーモアタップリの世界を観に行ったら、実は武者絵と妖怪が跳梁跋扈する江戸版少年ジャンプの世界だった。その躍動感と濃いキャラクター群に圧倒された。猫は後期。

 五十嵐淳展 状態の構築@TOTOギャラリー・間
 無から生成される状態群としての建築。かっこ良いなあ。

不滅のシンボル 鳳凰と獅子@サントリー美術館(前期)
 「第6章 よみがえる鳳凰」が圧巻。中国から輸入されたイメージが、若冲「旭日鳳凰図」に結実する!その横に上品な雪花の鳳凰。向かいの探幽屏風には鳳凰の雛、蒔絵硯箱には鳳凰の卵まで!樹下鳥獣図の目が死んだ鳥たちは思い複雑。

6/19
パウル・クレー おわらないアトリエ@東京国立近代美術館
 創作の場、技法、特別な作品。三面からクレーの創作の秘密に迫る。その意欲はジグザグと空間を折り曲げる会場構成にも一貫している。高度に練り込まれた構成は、その是非は別として、記憶に残る。

もてなす悦び展@三菱一号館美術館
 「プロローグ あさがおの間」の爽やかな美しさに心を奪われる。「ジャポニスムの茶会」の再現テーブルセットの豪華さ、ズラリと並ぶティーカップの緻密な美しさもスゴイ。特に透かし彫りのティーカップ。邸宅型美術館の面目躍如。

6/25
 大畑伸太郎 個展「生活」@ユカリアート・コンテンポラリー
 ザックリとした色面で再構築される美しい光景。イメージに合わせて変容する人物。感性が透けるような存在感にとても心惹かれる。色面の粗さが産みだす、平面と立体の融合ギミックも魅力的。もうちょっと作品が見たい。

青山悟 個展「芸術家は人生において6本の薔薇を真剣につくらねばならない」@ミヅマアートギャラリー
 あまりに精緻で、想像を絶する手間をかけた刺繍の薔薇。その存在感は、種を明かしても解析できない手品。そして遭遇する6本目。暗闇の中で感覚を失い、薔薇だけが存在する。実際に見ることでしか体験できない、時空間型展示。

 Art meets Life ~Kohei Nawa meets Seibu Shibuya~@渋谷西武
 基本的に写真パネル展示だけれども、やたらカッコイイ。さすが現代アート最強のヒーローにして、ヒロイン。

花の画家 ルドゥーテ「美花選」展@Bunkamura ザ・ミュージアム
 点刻彫版法、驚異の細密性と美麗な色彩に眼が釘付け。マドンナリリーを始め、白をあんなに美しく描くなんて感動。ピンクのロサ・ケンティフォリアを見て高島屋を連想する自分がちょっと残念。3時間でも足りない。ご利用は計画的に(>_<)。

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2011年06月13日

●名和晃平-シンセシス-@東京都現代美術館

 東京都現代美術館で開催中の「名和晃平-シンセシス-」を観ました。
 2年前に「Tokyo Visualist Symposium」で名和さんのトークを聞きしました。スライドを映しながら、制作動機と手法を簡潔かつ明快に話す内容がとても魅力的でした。以来、名和さんの作品は御本人のトークと合わせて観るのが一番だと思っています。
 去年、現美での個展開催がアナウンスされて以来、楽しみにしていました。そして今回運良く、プレス向け内覧会に参加することができました。メモ書き程度ですが、以下にその内容をまとめます。
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 記者会見
 美術館で初の個展
 ここでの開催が決まって、一年と一週間しかない。過去の作品と合わせて見せることも考えたが、作品のほとんどが海外にあることもあり難しい。そこで、空間に合った体験を作りたいと考えた。プランはどんどん変わっていった。

 挑戦したかったこと
 プロジェクトが舞い込んでは、ここに落とし込む。頭の中にここの図面を入れて取り組んだ。KDDI IIDAのコンセプトモデル、プサンビエンナーレ、バングラディッシュビエンナーレ、SCAI、渋谷西武、ゆずミュージックビデオ、ステージデザインなど。3Dデジタルデバイス、コンピューター制御の彫刻を作れるようになった。韓国の野外彫刻に取り組んでいる。
 スタイル、表現方法は固定されていない。今回の展示を通して、やりたいことが見えてくる。

 展示ついて
 12のゾーンを移り変わっていく。何順回っても新しいものが見えてくる。光、形態、身体スケール。是非ぐるぐる回って欲しい。
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 プレスツアー
 注:会場内の画像はプレス内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。

 1.Catalyst
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 ドローイング。どこまでも広がっていく。会期が終わったらどうする?

 2.PRISM(プリズム)
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 情報が移ろってゆく。

 3.Beads(ビーズ)
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 インターネットでモチーフを収集、彫刻フォーマットに置き換える。本当にモノがあることがどういうことか。

 4.Throne(玉座)
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 資本主義に繰り返し消費されるモノを垂直に重ねた玉座。

 5.Polygon(多面体)
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 モデルを3Dスキャンしてポリゴンデータを作成、解像度を下げる。ポーズ、サイズは同じだが、生物が情報化。

 6.Villus(ヴィラス)
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 展示がPolygonの部屋に貫入。青い光の中で、白い照明がピンクに見える。

 7.Drawing、8.Glue
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 細胞をボリュームの中で均等に配置。前者はGlueを上から見て、時間軸に沿ってあらわす。

 9.Scum(スカム)
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 あく、くず。肥大化、にぶく。ノープラン。どうしようもない怖いところに踏み込んだ。

 10.Manifold(マニホールド)
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 巨大彫刻。手に負えないくらいに巨大化したモノに、身一つで立ち会う怖さ。

 このあとにMovie、Liquidと展示は続きますが、ツアーはここまで。
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 感想
 はじめは何が見えているのか意識が追いつかず、ただ不思議な現象の数珠繋ぎに見えました。それが周回を重ねるにつれてその素材、仕掛けが見えてきて、気がつけば会場を5周ほどしていました。
 視覚を幻惑するプリズム、華麗なビーズ、グレーの世界のスローン、巨人たちが林立するポリゴン、その空間に貫入するヴィラス、平面-立体の変位が美しいグルー、見るからに無計画なスカム。空間の変化に合わせて作品を替え、照明を替えて構成された回廊は、とても見応えがあります。

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 最後に「11.Movie」の影に現れる色彩の美しさを通過して周回完了。
 本当に魅力的な展示でした。

Posted by mizdesign at 06:15 | Comments [0] | Trackbacks [1]