2011年03月22日
●生誕100年 岡本太郎展@東京国立近代美術館
東京国立近代美術館で開催中の「生誕100年 岡本太郎展」を観ました。
プロローグ:ノン!
導入部には、立体がズラリと並ぶ。独特の有機的で原始的で未来的(?)な、どこかユーモアを感じさせる造形。そしてあらゆることに「ノン」を突きつける。
《ノン》。大きな扁平頭に大きな口、小さな身体に強いメッセージ。カネゴンのようだ。
第1章:ピカソとの対決 パリ時代
修行時代がなく、いきなり始まる対決。彼の特殊な境遇を感じる。
《傷ましき腕》。大きな赤いリボン、皮膚が輪切りになった右腕。手には二本の黒線。首のない身体に、暗い背景。暗い道を一人歩く不安の表れなのか、時代を反映したのか。消失して再制作したほどなので、お気に入りだったのだろう。
第2章:「きれい」な芸術との対決 対極主義
「うまくあってはいけない。きれいであってはならない。ここちよくあってはならない。」衝撃的な言葉。
《森の掟》。青い背景、緑の森を、赤いからだに全身チャックのついた怪物が画面中央を跋扈する。何がなにやらわからないが、力強い。右にうづくまるメガネをつけた猿はどこかで見た気がする。何だっけなあ。
第3章:「わび・さび」との対決 日本再発見
一転して写真。彼の創作エネルギーに押されっぱなしだったので、ここで小休止。
《縄文土器》。刻まれたディテールを、陰影に富んだ表現で浮かび上がらせる。全体のフォルムには無頓着に思える。彼の視線に触れるようで興味深い。
第4章:「人類の進歩と調和」との対決 大阪万博
《太陽の塔》。「人類の進歩と調和」の場に提案する、原初の造形。お祭り広場の大屋根をぶち破るスケール。映像で観る岡本太郎の熱の入った語りと、それを聴く人のあきれた(あっけにとられた?)ような反応。
あれから40年。大屋根は遠になく、塔は改修されてピカピカに輝く。
第5章:戦争との対決 明日の神話
《明日の神話》下絵。全方位に突起を伸ばし、炎に包まれる白い人型。その向こうに、いくつもの黒い影。悲惨な現実と、それを超えてゆく力と。
第6章:消費社会との対決 パブリックアート、デザイン、マスメディア
「何だこれは!」。テレビの中で眼を見開き、大げさな身振りで持論を展開する岡本太郎。それに合いの手を入れて笑いを誘うタモリ。毒すら娯楽にするメディア。それでも記録は残る。
第7章:岡本太郎との対決
作家が最後まで描いた「眼」に囲まれる。
エピローグ:受け継がれる岡本太郎の精神
最後に作家の力強い言葉。
七番勝負を通して、作家のテーマ、視点を浮かび上がらせる構成はとてもよくできていると思います。またガチャガチャや言葉のお土産といった、娯楽性も兼ね備えている点も、幅広く観てもらいたいという気持ちが伝わってきます。
その上で自分の感想はと言うと、「よく分からない」。観れば観るほど重いテーマと向かい合っているように思えて、そんな簡単に分かった気になっていいんかい?と思ってしまう。明快でどこか割り切れない。そんな何かが残りました。
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