2011年01月31日
●1月の鑑賞記録
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博物館に初もうで@東京国立博物館
改装した漆工展示室、秋冬山水図、檜図屏風、風神雷神図屏風。話題豊富な新年企画。「古今和歌集(元永本)」の技巧を凝らしつつも上品な存在感が素晴らしかった。でも何より驚きは、「トーハク?」効果で大入り満員だったこと。新年早々、パスポートを購入するためにチケット売場でけっこう並びました。イメージ戦略による潜在顧客層の掘り起し、大成功。
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アルブレヒト・デューラー版画・素描展@西洋美術館
Takさん企画のギャラリートーク特別版に参加させてもらい、学芸員さんの解説を聞きながら鑑賞。ドイツ絵画史におけるデューラーの位置づけから、作品の背景、見所まであっという間の1時間半でした。展示がずいぶんと違って見えました。どうもありがとうございました。
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三瀬夏之介×池田学「現代アートの衝撃波一1973年生まれの新潮流」@紀伊國屋サザンシアター
去年の年末に観た池田学「焦点」にあまりに強く惹かれたので、トークショーにも行ってみました。なんとなく予想していましたが、何らかの論理を構築しようとする三瀬さんと、あっけらかんとした池田さんのキャラクターが噛み合わない。池田さんが三瀬さんを讃えた「いい声ですね!」が一番会場が沸いた瞬間でした。ファンのためのイベント。ツイッターTL上の絶賛の嵐がすごかった。
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特別展「運慶 -中世密教と鎌倉幕府-」@神奈川県立金沢文庫
待ちに待った運慶展。初作の大日如来、最晩年の大威徳明王。風になびく衣装と彩色が美しい帝釈天。コンパクトかつ密度濃い展示でした。必見!金沢文庫は称名寺の境内奥。鴨、鳶、カワセミ。野鳥王国な境内散策も素敵。
2011年01月24日
●第35回サンスポ千葉マリンマラソン
晴天、微風、適度な冷え込み。ランニングに絶好のコンディションで迎えた1月の第4日曜日。「第35回サンスポ千葉マリンマラソン」を走りました。
メイン会場は千葉マリンスタジアム。外野席で着替えを済ませて、貴重品をウエストポーチに入れてスタート地点へ。心配した海からの風も穏やかで、走る気分が高まります。10:05に一般ハーフの部スタート。スタート直後は大混雑で、トロトロ歩くペース。1kmくらい進んだところで、ようやく渋滞解消。天候が良いので高速レースになるだろうと考えて、オーバーペース気味にどんどん前に出ます。ハーフなので、後半失速してもゴールまで辿り着けるだろうという見切り発車です。
5kmを過ぎた辺りで、急に前の人たちがコースを左に寄りだすので何事?と思ったら、高橋尚子さんがハイタッチしていました。「あっ、いいなー」と思っているうちに通り過ぎる。6kmすぎた辺りで、第1折り返し点を折り返したトップ集団を横目に見る。その距離感から、今日のペースはなかなか良いんじゃないかと思った。10kmあたりで第2折り返し。ここらでタイムを確認したかったけれども、時間表示がなくてガッカリ。ラップが全く分からないまま後半へ。
12kmあたりで苦しくなってきて、順位を落としだす。と、ここで高橋尚子さんが再登場!今度はしっかりとハイタッチ。なんか凄く気合が入って、ペースを持ち直す。稲毛海浜公園をグルグル回って、道路に戻る。一瞬見える海が印象的。18kmを過ぎた辺りから、少しペースを上げる。ゴール前の時間表示が1時間30分台なのが見えたので、もうちょっとで切れたのか!と思った直後にゴール。
記録は1時間30分57秒、ネットタイム1時間30分7秒。2年ぶりにハーフの自己記録を更新!ゴール後にもらった紅茶も美味しかった。オリンピックマラソン金メダリストのハイタッチで、記録が1分は短縮できた気がします。気象条件に恵まれて、気持ちよく走れました。
2011年01月02日
●トークイベント「三瀬夏之介×池田 学」@紀伊國屋サザンシアター
紀伊国屋サザンシアターで、トークイベント「三瀬夏之介×池田学」が開催されます。副題は「現代アートの衝撃波 1973年生まれの新潮流 」。時期を同じくして羽鳥書店より初画集を出版された若手現代画家の対談です。
日時:2011年1月14日(金)18時30分開場/19時開演
会場:紀伊國屋サザンシアター
入場料:1000円(税込/全席指定)
羽鳥書店・紀伊國屋書店共催
三瀬さんの絵は、技法的にも構図的にも大胆で枠組みに納まらない印象があります。取っ掛かりがなくて少々おっかない感じ。
池田さんの絵は、少年の心と超絶細密描画の融合。ミヅマアートギャラリーで開催中の「焦点」を観たばかりですが、前に立った瞬間からその世界に引き込まれます。こんなに心地良くって、どうしちゃったんだろうと思うくらい。
今回はこのお二人の初対談です。特に池田さんはこのあとカナダに留学されるそうで、次の個展まで二年空くそうです。せっかくの機会なので、刺激的な話題がバンバン聴けることを期待しています。
2011年01月01日
●江~姫たちの戦国~@江戸東京博物館
江戸東京博物館で明日から開催される特別展「江~姫たちの戦国~」の内覧会を観ました。今年のNHK大河ドラマの主人公「江」の時代背景と人物関係を丁寧に解き明かしていきます。音声ガイドの語りは、ドラマで江の母・お市の方を演じる鈴木保奈美さん。愛娘を愛しむようにしっとりと語られますが、女性には敬称付、男性は敬称略な語りに、本作の視点を感じます。
【I 江の父母と叔父】
江は元亀4年(1573)に、50年にわたって北近江を統治した戦国大名浅井長政と、織田信長の妹・市の間に生まれた三人姉妹の末っ子。叔父である信長の手によって浅井氏は滅亡。その信長も本能寺の変で討死。さらに柴田勝家の元に再嫁した母・市は秀吉に攻められて夫とともに自害します。
まずは序章。「姉川合戦図屏風」、「屏風賤ヶ岳合戦図屏風」、「安土城伝米倉跡出土金箔鯱瓦」。戦国時代に名高い二つの合戦と安土城遺構の周りを、主要人物肖像画と文書で固めます。実物で観る教科書。
注:会場内の写真は内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
【II 江の姉・茶々が嫁いだ豊臣家】
三人娘の長女は、かの有名な秀吉の側室、淀殿。
「聚楽第行幸図屏風」、「醍醐花見短冊」。豪華絢爛桃山文化の華といえば、この2点。信長、家康が大名の出なのに対して、秀吉は足軽の出。その負い目がバネになったのだろうか。下克上の王者が造らせた超バブル文化。その絶頂から滅亡までを、豊臣家縁の人物を紹介しながら辿ります。跡継ぎの誕生を機に、一族を根絶やしにされた「豊臣秀次・一族像」が強烈。
【III 江の姉・初と京極家】
三人娘の次女・初の嫁ぎ先は北近江の名門、京極家当主・高次。本能寺の変で明智方について失脚したり、関が原の合戦で落城寸前まで追い込まれたりするも、最後は若狭国小浜八万五千石の城主となる。その影には秀吉の側室となった高次の姉(妹?)・松の丸と、茶々の妹・初の働きかけがあったらしい。「京極高次像」の丸い顔立ちに、時代の読みがちょっと弱い良家の坊ちゃんというイメージが膨らみました。
【IV 江が嫁いだ徳川家】
そして江。二度の結婚の後、徳川家康の三男、秀忠に嫁ぎます。家康の手によって戦国時代に終止符が打たれ、徳川時代へ。長男家光は三代将軍となり、五女和子は後水尾天皇の中宮となって明正天皇を生みます。ドドーンと鎮座する「江戸図屏風」に、時代の勝者の貫禄が漂います。そんな江ですが、遺品が非常に少なく、展覧会冒頭に登場する二点(時期をずらして展示するので、観られるのは一点づつ)の書状しか残っていないそうです。
最後に登場するのが、本展の最大の見所、「崇源院宮殿(くうでん)」。真っ黒なブースに神々しく浮かび上がります。崇源院は江の死後、江に送られた諡号。宮殿(くうでん)とは、厨子の一種で、建物の屋根に類した構造を持つ形式や技法を以って制作されたモノを称するそうです。
複雑に入り組んだ人物相関展に相応しく、本作の由来もかなり複雑。将軍の後継ぎ争いに敗れた次男忠長が駿府に建立した崇源院霊廟内に安置され、享保年間以降に祐天寺に移されたモノ。さらに長い間徳川家康の宮殿と考えられていたのが、最近の修復に伴い崇源院の宮殿であることが確認されたそうです。加えて忠長は、本件が元で自害に追いやられます。
全面に施された装飾は保存状態も良好で見応えがあります。
三人姉妹ごとに章を割り振り、空白の江像を浮かび上がらせる見事な構成と、宮殿のビジュアル・インパクト。負ければ終わりの男のドラマの裏側で、政略結婚の駒として扱われながらも生き抜き、血を残す女のドラマ。とても良く出来た、歴史絵巻のテキストです。
●謹賀新年 2011
昨年は御世話になりました。
新年が皆様にとって実りある一年になりますように!