2010年12月31日
●キーワード 2010
今年のアート・街関連を三つのキーワードで振り返ってみます。(2009、2008、2007、2006)
今年は出張の多い一年でした。鑑賞記録を集計したところ、関東71件、その他(関西、東海、北海道)52件の計123件でした。
『分極化に向けて』
東京でなくてもアートイベントは成立する。そう思う機会が増えました。
マイ・フェイバリット--とある美術の検索目録/所蔵品から@京都国立近代美術館
所蔵品展を検索目録に仕立てるという発想と、そのネーミング。そしてtwitterでの熱烈なつぶやき。
没後400年 特別展覧会 長谷川等伯@京都国立博物館
大徳寺で等伯の足跡を辿り、そして京博へ。待ちに待った桃山文化の祭典、フィナーレ。
伊藤若冲 アナザーワールド@静岡県立美術館
静岡と千葉。実力派が組んだ、東京抜きの若冲展。象と鯨図屏風のお披露目。
田中一村 新たなる全貌@千葉市美術館
現代視点から再構築された一村像は、驚きと興奮に満ちている。アナザーワールドに続いて、またも千葉市美術館。
あいちアートの森 堀川プロジェクト
あいちアートの森 豊田プロジェクト 知覚の扉II@喜楽亭
あいちアートの森 豊田プロジェクト 知覚の森II@豊田市美術館
あいちトリエンナーレ2010 都市の祝祭@納屋橋会場、愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、長者町会場
名古屋開府400年記念・ミュージアムトライアングル
開府400年記念名古屋城特別展「武家と玄関 虎の美術」@名古屋城天守閣2階展示室
前段の「あいちアートの森」から、展示とパフォーマンスの連発で話題をまいた「あいちトリエンナーレ2010」。そして芦雪の虎が躍動する「ミュージアムトライアングル」。名古屋を中心に、愛知が熱かった。
BIWAKO BIENNALE 2010 玉手箱 Magical World@近江八幡
近江商人の繁栄と水郷のまちで繰り広げられた現代アートの祭典。集客面は苦戦したけれども、展示は美しかった。
山口晃 天井画@清安寺
現代の大和絵師、山口晃さんの描く五匹の龍。観たければ、その場に行くしかない。
『印象派イヤー』
オルセー美術館の改装がきっかけとなったのか、集客の見込める企画に人気が集まったのか。珠玉の印象派コレクション展、続々登場。
オルセー美術館展2010 [ポスト印象派]@国立新美術館
作品の質と物量は圧倒的。会場構成もシンプルに決めて、新美の素っ気ない大箱を上手く活用。
『美術館を開く』
美術館は単なる箱じゃない。内外を連続し、外に対して開くことが、新たな魅力を生み出す。そのいくつかの例。
「フィギュアの系譜―土偶から海洋堂まで」、「村田蓮爾:rm drawing works」@京都国際マンガミュージアム
老若男女がマンガに読み耽る廊下、都市の坪庭のような校庭の居心地の良さは最高。こんな施設が増えてほしい。
ラフェエル前派からウィリアム・モリスへ@横須賀美術館
東京湾と観音崎にはさまれた立地をさらに拡張する、立体回遊空間としての建築。
国宝燕子花図屏風@根津美術館
絵のなかに生きる 中・近世の風俗表現@根津美術館
燕子花の咲く頃に燕子花図屏風。紅葉の頃に、風俗画コレクション展。圧倒的な庭園の美しさと、時宜を得た展示の相乗効果で、美の世界に誘う。
開館記念特別展@ホキ美術館
話題性のある造形と、美味しいレストランと、採算性を意識した計画。コレクションを広く見てもらいたいというオーナーの要望に見事に答えるプログラム。その分、内装グレードは抑えめ。その結果として、この立地で驚きの大入り状態。
2010年12月30日
●12月の鑑賞記録
12/2
○カンディンスキーと青騎士@三菱一号館美術館
カンディンスキーになる前のカンディンスキーから始まり、ミュンターと出会い、ムルナウを発見し、あのコンポジションシリーズが萌芽する。そして青騎士結成。章ごとに登場人物紹介があり、ドラマを観るような面白さのある展示でした。
12/4
伊庭靖子個展@MA2ギャラリー
空間に溶け込みつつしっかりとした存在感のあるマイクロワールド。意外と質感はザラザラ。
阪本トクロウ「けだるき一日生きるだけ」@アートフロントギャラリー
色々な阪本さんが観られてお得な展示。正面から道路を見上げた絵と、信号機の入った小品が好き。
バウハウス・テイスト バウハウス・キッチン展@汐留ミュージアム
見所は女性にスポットを当てた構成と、マイスターハウスのキッチン再現展示。小物入れいっぱいの作りがそれっぽい。
12/8
○池田学「焦点」@ミヅマアートギャラリー
超絶細密技巧と美しい色彩。ファンタジーと現実が混然とする世界。好青年なご本人。私的には無敵と思える内容でした。画集も購入しました。見開きクローズアップがふんだんに載っていて嬉しいです。
12/11
トランスフォーメーション@東京都現代美術館
マシュー・バーニーの映像を見つめる観客の異様な熱気に、新たな世界を観ました。
12/13
「Reflections」-現代アート新鋭作家13人展-@アートポイントギャラリー
あおひーさんの展示。確かに、そのうち来るかもしれない。と思えるくらいにレベルの高い展示でした。
12/25
○開館記念特別展@ホキ美術館
話題性のある造形と、美味しいレストランと、採算性を意識した計画。コレクションを広く見てもらいたいというオーナーの要望に見事に答えるプログラム。その分、内装グレードは抑えめ。その結果として、この立地で驚きの大入り状態。大成功だと思った。
ギッター・コレクション展@千葉市美術館
ゆるーい感じで、若冲?蕭伯?芦雪?と首を捻る。気楽に眺めるのが吉。
12/27
○江~姫たちの戦国~内覧会@江戸東京博物館
三人娘それぞれに章を割り振る構成が上手い。信長、秀吉、家康。激動の時代を背景に生き抜き、血を残す戦国絵巻を通して、空白の江像が浮かび上がる。最後の宮殿(くうでん)が、その存在の大きさを物語る!
12/28
○山口晃展~東京旅ノ介@三越銀座
5つの東京の景から日本橋三越へと至る、華麗なる山口商業画の世界。ガイドのお絵かきが登場して、のんびりムードの水景、あっと驚きの露電10系!エンターテイメント性の高い前半、旧作と写真でマッタリ気味の後半。楽しゅうございました。
2010年12月01日
●11月の鑑賞記録
11/3
ULTRA003 ノヴェンバー・サイド@スパイラル
05. 島田恒平(ギャラリー椿 / 東京)のイタ車、18. 杉田竜平(ギャラリーモモ / 東京)の緑の連作、19. 岩瀬幸子(日動コンテンポラリーアート / 東京)の一枚もの大作が良かった。ベストウォールは18に投票。オクトーバーサイドも観たかった。
○その名は蔦屋重三郎@サントリー美術館
吉原を拠点とし、そのガイドブック権益を独占する蔦重。黒地に赤のアクセントで統一された展示空間が、夜の街のエロチックさを感じさせてとても良い。経営基盤の強化、読者参加型企画で辣腕を振るう章立ても良い。後半、歌麿、写楽展はやや大味。
11/12
建築とITのフォーラム2010 環境建築 木材会館からバイオスキンへ@木材会館
話題作を次々に手がける山梨知彦さんの講演会。最後にホキ美術館の宣伝。内装も構造体も外装もスチール。絵はマグネットで壁に付いている。50mm径に45度首の振れるLED照明を納める。20-40灯で一枚を照らす。展示作に物故作家が一人もいない。整理された内容をアウトプットするマシーンのようだった。
11/16
◎山口晃 切り捨て御免トークショー@ミヅマアートギャラリー
アートブロガー「弐代目・青い日記帳」のTakさんが主催で、「山口晃展 いのち丸」を会場にして、作家ご本人のトークショーを開催。告知手段はTwitterで、USTREAMの実況あり。「アートと人と技術が有機反応する。そんな場に立ち会えるのではないか。」というワクワク感で一杯。
11/21
◎至高なる風景の輝き-バルビゾンからの贈りもの@府中市美術館
バルビゾン派の屋外写生と色彩の発見の喜びに満ちた1章。舞台を日本に移しつつ、その感動にオーバーラップする2章。人物に視点を移し、最後に集大成を見せて大団円。府中自慢の桜並木の晩秋の景も相まって、素晴らしく引き込まれる展示だった。木立、羊、麦藁、夕暮れ。叙情的なトーンを基調としながらも、さりげなく挿入されるクールベの鹿、野十郎のNY風景。その大気を切り裂くような厳しさがピリリと効いて良かった。
ドミニク・ペロー 都市というランドスケープ@オペラシティアートギャラリー
コンセプト、実現への置換、実現風景。会場自体をランドスケープに見立てた構成。処女作は刑務所のようだったと語るインタビュー映像が興味深い。そこからランドスケープへと鮮やかな飛翔。物質化の要は金属メッシュ。空間としてはザックリしてる。
収蔵品展 紙の上の競演@オペラシティアートギャラリー
伊庭さんのシルクスクリーンが3点出てます。トイレットペーパーと洗面台と椅子のクッション部のクローズアップ。純化することで豊穣さを引き出すような画面に、もう目が釘付け。MA2ギャラリーも行かなきゃ!
11/22
ラフェエル前派からウィリアム・モリスへ@横須賀美術館
横須賀美術館、初訪問。「海の広場」、「山の広場」、「美術館」という面構成。展示空間+レストラン+海と山という滞在型プログラム。「穴あき鉄の箱」と「ガラスの箱」の二重膜建築。東京湾と観音崎にはさまれた立地をさらに拡張する、立体回遊空間としての建築。
ドガ展@横浜美術館
素描を多用した構成から、ドガの観察眼が浮かび上がる。スポットを浴びるエトワールは美しいけどちっちゃい。クライマックスは「鍵穴からのぞく」裸婦の後ろ姿のオンパレード。都市の生態を生々しく描いた、浮世画家の軌跡という感じ。
11/23
○LLOVE@旧代官山iスタジオ
日本の建築家が空間を拡張するのに対して、オランダはの建築家は空間に異物化するアプローチに思えた。「泊まりたいか」という視線で観ることが新鮮でした。泊まってみたいと思ったのは302号室と307号室。泊まり方に一番興味が湧いたのが304号室。PVのように、ボールを転がしながら一晩過ごすのだろうか。
シェル美術賞展2010@代官山ヒルサイドフォーラム
ULTRA003で気になった小野さおりさんがグランプリに選ばれたとのことで観にいった。各作家一点ずつなので作家の世界観はそれほど感じられなかったが、全体的に若々しい雰囲気に満ちていた。
◎絵のなかに生きる 中・近世の風俗表現@根津美術館
庭園の紅葉が絶景。庭園内の茶室に明かりが灯り、活気づいているのも良い。その季節に風俗画のコレクション展を仕掛ける根津美術館の企画力はとても素敵。