2010年11月22日
●至高なる風景の輝き-バルビゾンからの贈りもの@府中市美術館
府中の森の桜並木、晩秋の景。その左に曲がると府中市美術館。
「至高なる風景の輝き-バルビゾンからの贈りもの」を観ました。江戸絵画を中心にその企画力は定評がありますが、今回は「府中市美術館開館十周年記念展」と銘打つだけあって見応え十二分。
第一章 ドラマチック・バルビゾン
イヌー,エルネストの野外写生道具一式(パラソル、イーゼル、椅子、絵の具箱)。パラソル軸の連結金具に長さを調節する工夫があったりして、とても実用的。ハードの支援があって初めて、自然と色彩の発見に満ちた日々が送れるのだと納得。
デュプレ,ジュル「山村風景」。小品ながら緻密な描き込みと茜射す光が美しい。
クールベ,ギュスターブ「雪の中を駆ける鹿」。雪原を駆ける躍動感と、その直後にある死。大気を切り裂くような緊迫感が素晴らしい。
ジャック,シャルル=エミール「森はずれの羊飼いの少女」。羊のフワフワさに魅了され、描こうとする思いが伝わってくる。
ミレー,ジャン=フランソワ「鵞鳥番の少女」。鵞鳥の鳴き声が画面から聞こえてくるような絵を描こうとしたという意図どおり。ガアガアガア。
ガシ,ジャン=バティスト=ジョルジュ「バルビゾンの平野に沈む夕日」。大きくうねりながら地平線へと消えてゆく道。その向うに並ぶ木立のシルエットと茜色の空。ドラマッチック・バルビゾン。
第二章 田園への祈り―バルビゾン派と日本風景画の胎動
舞台を日本に移して、第二幕。
高橋由一「墨水桜花輝耀の景」。写実という面のみで捉えがちな由一をここで出す構成の妙。浮世絵の時間軸と、バルビゾンの移入軸が見事に交差する。
高橋由一「芝浦夕陽」。鮭のリアリズムと対極をなす、叙情的な夕景。あっと驚くもう一つの由一。風景画としては手前の舟が画面2/3を占めるのはちょっと大きすぎるような気もしますが、構成としては文句なし。
本多錦吉郎「豊穣への道」。夕暮れを背に農夫のシルエットが浮かぶ。解説によると、この絵の寄贈が本展企画のきっかけとなったとか。確かに。
本多錦吉郎「景色」。画面の主役は大ケヤキ並木。バルビゾンの影響が色濃い構図であり、今も残る景色でもあり。
和田英作「波頭の夕暮」。これも夕景。渡し舟を待つ人たちの視線が右手に伸びる。その先にあるのは何だろう。誰かが帰ってくるのか?何かがやって来るのか?
第三章 人と風景―その光と彩りの輝き
人物に視点を移し、そしてまた風景へ。
第四章 バルビゾンからの贈りもの―光と彩りの結実
最後はフルキャストで大団円。
ルノワール,オーギュスト「森の小径」。淡く爽やかな森の木立の描写は、一服の清涼剤のよう。
高島野十郎「霧と煙のニューヨーク」。ロマンチックな世界から一変、灰色の世界が視界に広がる。えっ、ここで野十郎?しかも海外風景画!観られて嬉しいです。
冒頭でバルビゾン絵画の自然美を見せて、気が付けば舞台は日本、そして武蔵野へ。夕景をフックにすることで海外絵画の借り物感を払拭して、深くその世界に引き込まれました。屋外の晩秋の景とも上手くオーバーラップして、時、場所、テーマが見事に調和した展示でした。
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