2010年11月30日

●横須賀美術館

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 秋の行楽季節4連休の3日目は、横須賀美術館へ。「ラフェエル前派からウィリアム・モリスへ」展と、鉄のガラスの二重膜建築の二本立て。
 「海の広場」の芝生と、観音崎に挟まれたガラスの箱。広場をぐるりと回り、レストランの前を通って入口へ。

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 眼下に吹抜ギャラリーを眺めながらブリッジを渡ってエントランスホールへ。振り返ると、鉄の箱に開いた穴から柔らかな光が注ぐ。
 倉庫のような企画展示室、B1階に降りて回廊型展示室、吹抜のギャラリーを経て、エントランスホールに戻る。

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 右を向くと、観覧席のような閲覧スペース、空へと伸びる螺旋階段。白い箱を欠き込んでガラスを嵌め込んだような空間構成が、透明感があって魅力的。

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 螺旋階段を登ると、目の前に広がるガラスの屋根面。その向こうに海。

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 反対側には観音崎の山。屏風のように連なる地層に囲まれて、グレーチングを敷いた屋上散策路が広がる。

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 山に向けて歩くと、中庭を介して図書室のガラススクリーンが地層のようにのぞく。その上は「山の広場」。

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 「山の広場」側に渡って振り返ると、「ガラスの箱」に入れ子状に納まる「穴あき鉄の箱」の構成が良く分かる。

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 「穴あき鉄の箱」と「ガラスの箱」の間は、「館内の柔らかな光を生み出す緩衝帯」であると同時に「設備スペース」。裏方空間をガラス張りで見せてしまう大胆な構成。

 「海の広場」、「山の広場」、「美術館」という面構成。展示空間+レストラン+海と山という滞在型プログラム。「穴あき鉄の箱」と「ガラスの箱」の二重膜建築。東京湾と観音崎にはさまれた立地をさらに拡張する、立体回遊空間としての建築。

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2010年11月28日

●第30回 つくばマラソン

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 快晴に恵まれた晩秋の休日、「第30回 つくばマラソン」を走りました。フルマラソンの完走者数は男子9,234名、女子1,986名。去年よりも1,000名ほど増えています。今年の目標は、前半1時間35分、後半1時間45分。冷え込みが上手く作用して記録が伸びた去年のようには行かないとしても、出来る限り迫ろうという計画です。

 9:30号砲。参加者が増えたせいか、スタート地点までなかなか辿り着かない。3分ほどして、ようやくスタートラインを超える。通勤電車のラッシュアワーさながらの状態。暑いので水分補給に気をつけつつ、少しずつ前へ進みます。

 今年は1km毎に距離表示とメッセージが表示されています。10kmは「水はからだを潤してくれる。リリンの生み出した魂の極みだよ。補給したまえ、この先給水だよ。」と、かおる君のノリで可笑しかった。

 折り返し点で1時間40分03秒。スタート地点まで3分かかったとしても、目標より2分遅い。スタート直後の大混雑と暑さでペースが落ちてるなあと思いつつ、後半のペースダウンを抑え込めないかと、気持ちを入れ替える。

 30kmを過ぎると、自分で分かるほどにペースが落ちる。後は我慢比べ。沿道にメイドさんやはるひのコスプレをした人がいる。メッセージもエヴァ調のモノが多いし、アニメ好きな土地柄なのだろうか。

 残り4km。「この結果は言うなら必然、これまでの人生のツケ・・・・・。でも負けたくないんだ!」。ああ、これは良いメッセージだなあ。本当にその通りだ。残り2km。「あきらめたら、そこで試合終了ですよ。」。あまりに予想通りな安西先生。

 グラウンドに戻って、ようやくゴール。記録は3時間27分42秒。ネットタイムで3時間24分54秒。後半も1時間47分35秒かかったので、結局前後半とも目標に届かず。去年の自分と比べると、5分40秒遅い惨敗。過去の自分を超えるのは、次回以降に持ち越し。
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2010年11月24日

●根津美術館庭園 紅葉之景

 今年の紅葉は色づきが良いともっぱらの評判。紅葉は冷え込みに左右される季節もの。これは名所で紅葉狩りをしなければと思い立ち、根津美術館庭園に出かけました。

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 美術館を通り抜けて、まず目に入る景色。灯篭と、それを覆う見事な紅葉。

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 披錦斎・一樹庵あたり。水平に広がる紅葉は深山の趣。

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 弘仁亭・無事庵あたり。苔と飛び石と紅葉。素材のコンビネーション。

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 披錦斎・一樹庵あたり。大屋根と灯りと紅葉。茶室はどこも使用中で、灯りが入っていた。ライブ感があって伝統が現代に生きてる感じがする。

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 吹上の井筒の近く。紅葉水景。船の屋根、水面に浮かぶ落ち葉。作り物っぽい構図、でも良く似合う。紅葉之景も、四季の変化を楽しむための演出装置。

 都会の真っ只中で紅葉を満喫できる根津美術館の庭園は、いつもながらすごい場所だと思います。

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2010年11月23日

●LLOVE@旧代官山iスタジオ

 旧代官山iスタジオで開催されたホテル型展覧会「LLOVE」を観ました。1968年に奈良県渋谷寮として建設され、2005年10月に奈良県代官山iスタジオ(情報発信+宿泊施設)に改装され、2009年末に閉鎖された建物を活用して、オランダと日本の建築家がホテルに見立てたインスタレーションを展開する企画です。実際に宿泊も可能だそうです。建物は解体して土地を売却する予定だそうなので、見納めと思って最終日に滑り込みました。

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 302号室 永山祐子。床に白砂利を敷き詰め植栽を配するワイルドな発想が、ちゃんとインテリアとして成立している。夜は寒そうだけれども、野性に目覚めるからちょうど良い?

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 304号室 中村竜治。客室の上に池を浮かべる驚きの発想と、それを物質化する半透明ロープ。知的操作のような構成とは裏腹に、池からヌーッと顔を出すように起き上がるシーンが想像できて愉快だった。

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 305号室 ヨープ・ファン・リースハウト。部屋には手を加えず、室内にオブジェを置くことで空間を異質化。ベッドの脚がアートワークであることを主張していた。

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 306号室 ショルテン&バーイングス。障子にパンチングメタルをかぶせ、壁面にピンクの壁画を描き、壁際に桶?を並べたり。展示スペースのような白い空間。

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 307号室 リチャード・ハッテン。ストライプ柄でカラフルに埋め尽くされた壁面。一種のラッピングアートワークのよう。

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 308号室 ピーケ・バーグマンス。床から壁へ、マットが大きく躍動する!色味を抑え、丸窓のある空間は、まるで墨絵のよう。

 日本の建築家が空間を拡張するのに対して、オランダはの建築家は空間に異物化するアプローチに思えた。「泊まりたいか」という視線で観ることが新鮮でした。泊まってみたいと思ったのは302号室と307号室。泊まり方に一番興味が湧いたのが304号室。PVのように、ボールを転がしながら一晩過ごすのだろうか。

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2010年11月22日

●至高なる風景の輝き-バルビゾンからの贈りもの@府中市美術館

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 府中の森の桜並木、晩秋の景。その左に曲がると府中市美術館
 「至高なる風景の輝き-バルビゾンからの贈りもの」を観ました。江戸絵画を中心にその企画力は定評がありますが、今回は「府中市美術館開館十周年記念展」と銘打つだけあって見応え十二分。

 第一章 ドラマチック・バルビゾン
 イヌー,エルネストの野外写生道具一式(パラソル、イーゼル、椅子、絵の具箱)。パラソル軸の連結金具に長さを調節する工夫があったりして、とても実用的。ハードの支援があって初めて、自然と色彩の発見に満ちた日々が送れるのだと納得。
 デュプレ,ジュル「山村風景」。小品ながら緻密な描き込みと茜射す光が美しい。
 クールベ,ギュスターブ「雪の中を駆ける鹿」。雪原を駆ける躍動感と、その直後にある死。大気を切り裂くような緊迫感が素晴らしい。
 ジャック,シャルル=エミール「森はずれの羊飼いの少女」。羊のフワフワさに魅了され、描こうとする思いが伝わってくる。
 ミレー,ジャン=フランソワ「鵞鳥番の少女」。鵞鳥の鳴き声が画面から聞こえてくるような絵を描こうとしたという意図どおり。ガアガアガア。
 ガシ,ジャン=バティスト=ジョルジュ「バルビゾンの平野に沈む夕日」。大きくうねりながら地平線へと消えてゆく道。その向うに並ぶ木立のシルエットと茜色の空。ドラマッチック・バルビゾン。

 第二章 田園への祈り―バルビゾン派と日本風景画の胎動
 舞台を日本に移して、第二幕。
 高橋由一「墨水桜花輝耀の景」。写実という面のみで捉えがちな由一をここで出す構成の妙。浮世絵の時間軸と、バルビゾンの移入軸が見事に交差する。
 高橋由一「芝浦夕陽」。鮭のリアリズムと対極をなす、叙情的な夕景。あっと驚くもう一つの由一。風景画としては手前の舟が画面2/3を占めるのはちょっと大きすぎるような気もしますが、構成としては文句なし。
 本多錦吉郎「豊穣への道」。夕暮れを背に農夫のシルエットが浮かぶ。解説によると、この絵の寄贈が本展企画のきっかけとなったとか。確かに。
 本多錦吉郎「景色」。画面の主役は大ケヤキ並木。バルビゾンの影響が色濃い構図であり、今も残る景色でもあり。
 和田英作「波頭の夕暮」。これも夕景。渡し舟を待つ人たちの視線が右手に伸びる。その先にあるのは何だろう。誰かが帰ってくるのか?何かがやって来るのか?

 第三章 人と風景―その光と彩りの輝き
 人物に視点を移し、そしてまた風景へ。

 第四章 バルビゾンからの贈りもの―光と彩りの結実
 最後はフルキャストで大団円。
 ルノワール,オーギュスト「森の小径」。淡く爽やかな森の木立の描写は、一服の清涼剤のよう。
 高島野十郎「霧と煙のニューヨーク」。ロマンチックな世界から一変、灰色の世界が視界に広がる。えっ、ここで野十郎?しかも海外風景画!観られて嬉しいです。

 冒頭でバルビゾン絵画の自然美を見せて、気が付けば舞台は日本、そして武蔵野へ。夕景をフックにすることで海外絵画の借り物感を払拭して、深くその世界に引き込まれました。屋外の晩秋の景とも上手くオーバーラップして、時、場所、テーマが見事に調和した展示でした。

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2010年11月17日

●山口晃「斬り捨て御免トークショー」@ミヅマアートギャラリー

 市ヶ谷のミヅマアートギャラリーで開催された山口晃「斬り捨て御免トークショー」に参加しました。アートブロガー「弐代目・青い日記帳」のTakさんが主催で、「山口晃展 いのち丸」を会場にして、作家ご本人のトークショーを開催。告知手段はTwitterで、USTREAMの実況あり。「アートと人と技術が有機反応する。そんな場に立ち会えるのではないか。」というワクワク感で一杯です。

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 Q&Aからスタート。
 Q1:どうして一枚の絵に違う時代が入ってるの?
 A:忘れました。。。昔おじさんは神社の絵を描きました。平安、鎌倉、色々な時代を積み重ねて描きました。花のピュンピュン丸の後からカメラが付いてくるのと同じです。だんだん現代の人だけでも良いかなと思うようになりました。
 Q2:作品の中の読めない漢字は何?
 A:12世紀のきったん文字で。。。嘘です。私も読めません。デザインの一部として書いてます。
 Q3:作品を描く時間はどれくらい?
 A:今回は日をまたぐことがないのがほとんど。長くて2-3日。例えばあちらの絵なんかでは。。。
 というあたりから身振り手振りが出てエンジンがかかってきた感じ。その一挙手一足動に沸く会場。

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 と思ったら、USTREAMの音が出ないというトラブルが発生したそうで中断。スケッチブックにサラサラと、オバQを描いて場を和ませます。


 ほどなくして、USTREAM復活!続きはこちらでどうぞ。クリアな音声にビックリです。

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 トークショーの後は、山口さんによる作品解説。ハタハタから閃いた冒頭に続いて、黒の作品を力説。その姿を捉えるUSTカメラ。そのケーブルを踏まないよう、潮のように移動する参加者。iphoneでつぶやきつつメモを取る早業はすごいなあ。

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 ラストのインフィニティを解説する山口さん。付かず離れず追尾するカメラ。トグロ巻くケーブル。その奥にUST機材。ハードちっちゃ!

 小さな空間にアートと人と技術がギュッと詰まった、とても濃密なひと時でした。関係者の方々、どうもありがとうございました。

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