2010年10月10日

●BIWAKO BIENNALE 2010 玉手箱 Magical World@近江八幡

 秋の三連休の初日、滋賀県近江八幡市で開催中の「BIWAKO BIENNALE 2010 玉手箱 Magical World」を観ました。「BIWAKO BIENNALE」は今回で4回目、近江八幡に会場を移して3回目の開催。豊臣秀次の城下町であり、近江商人繁栄の地。さらに水郷めぐりで有名な八幡堀流域に点在する15ヶ所の町屋、工場、倉庫等を会場に繰り広げられる現代アートの祭典です。アクセスはJR東海道線(琵琶湖線)近江八幡駅北口からバスで15分ほど行った大杉町バス停で下車。八幡堀沿いを歩いてすぐ、事務局・総合案内所を兼ねる天籟宮に至ります。今回は雨天のためバスで移動しましたが、晴れていれば駅前のレンタサイクルが便利です。
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 天籟宮。築180年の町屋を再生して、カフェ及び展示空間として活用。写真手前が母屋、中庭を挟んで茶室、その左にカフェ及び和室(2F)、さらに左手土間の先に蔵があり、それぞれにアートワークが配されています。
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 HUST「Photosynthesis(光合成)」@2階和室。長い間空家となり朽ち果てていたのを、廃材等を利用して再生した空間。衰退と再生の狭間に立つ空間を、無機的な試験管の林立による硬質かつどこか暖かいアートワークが引き立てます。
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 大舩真言@尾賀商店。倉庫の中央に大作平面作品。その背後からこぼれてくる光と一体化する画面、色調、配置に見蕩れました。背後に回ると、障子から差す光に浮かび上がる、水を張ったボウル。包み込む柔らかさと水面の緊張感が空間体験を深めます。そして見上げれば。。。作家さんがふらりと現れて、お話できて良かった。
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 藤居典子「えん」@藤田商店。MDFに鉛筆で描かれた平面作品。幻想風景のような画面が、MDFの地色を残した色合い+鉛筆の細かなタッチと一体化して、和室によく馴染む。作家さんはここにスタッフとして詰めておられると後で知った。感想を話してみたかった。ショップで本展の図録がないかたずねたところ、ただいま製作中とのことでした。
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 森川穣「ことのは」@藤田商店屋根裏。屋根裏に積み上げられた雑貨。その合間を縫うように、庭で採れた雑草を封入した光の箱が配される。その存在は明らかに異質ながら、ずっと前からそこにあったようにも見えて、建屋の記憶を照らし出す行燈のようだった。
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 青木美歌@幸村邸離れ。床が踏み抜けそうにたわむ畳床と、雨漏りしそうな天井。そんな廃屋内をわずかな照明と雨戸の隙間から射す自然光で照らし、多数のガラス細工を配した展示。中央に置かれた長持からは、スリット状の黄色い光が漏れ出る。一歩踏み込むなり、その深淵な世界の引き込まれる。そこは最早廃屋でなく、深海の中。玉手箱の回りを深海魚たちが回遊する。わずかな道具立てで空間を作り変えてしまう構成力は感動的。
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 室内には蚊取線香の煙が充満し、それが光の軌跡を造形する。作家さんが「煙たい空間がいい」と希望されて、こういう形になったそうな。ボロボロの床材、ガラスの繊細な質感、光の指向性。それらが合わさって、劇的なシーンが各所に点在する。
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 雨天の中、全15会場のうち13会場を回りました。所要時間は4時間半ほど。スクラップ&ビルドでもリフォームでもなく、ボロボロの空家を辛うじて再生した展示空間。バラツキを感じる展示作品。大型展の狭間で、ほとんど存在感のない宣伝。その一方で、10年間続いてきたという積み重ねと、見応えのある展示。衰退の中で活力を探る、これからの自分たちの行く末を考える点でも、とても生々しくて印象に残る展示でした。

Posted by mizdesign at 2010年10月10日 19:09
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