2010年05月16日
●伊藤若冲 アナザーワールド@静岡県立美術館
静岡県立美術館で本日まで開催された「伊藤若冲 アナザーワールド」。初日に行くつもりが桜の誘惑に負け、二度目の予定は思わぬ急用に延期を余儀なくされ、三度目の正直で最終日に滑り込みました。
第一章 若冲前史
同時代の画家たちの作品から、若冲に似た表現をピックアップ。若冲絵画を異端児としてでなく、時代の流れの中から生まれたと位置づけます。
大岡春卜「墨花争奇」。濃墨、薄墨、ぼかしから細密まで多彩な表現が目をひく。巻頭を飾る鳳凰も印象深い。若冲の元ネタの一つだろう。
第二章 初期作品
若冲になる前の若冲絵画。その変遷を辿れるところが本展の魅力。
「花卉双鶏図」、「雪梅雄鶏図」、「隠元豆・玉蜀黍図」。平面を立体的に見せる薄墨表現、美しい彩色、細密表現は完成されているが、大胆なポーズとりやデフォルメがまだない彩色画。
「花鳥蔬菜図押絵貼屏風」。濃墨による力強い表現、薄墨による筋目書きといった実験が詰まった屏風。
第三章 着色画と水墨画
水墨画で培った表現を彩色画に取り入れ、その融合を以って若冲絵画の特徴となす。
「仙人掌群鶏図」。両者の融合到達点として登場!金地に躍動する鶏たちのかっこよさにしびれる。
「樹下鳥獣図屏風」、「果蔬涅槃図」。この二点を観るためにここまで来た!前者は痛みが目立つ。「白象群獸図」が若冲筆で、こちらは若冲監修かなあ。後者は仏教徒と八百屋という若冲の両面がユーモアタップリに描かれていて楽しい。
第四章 晩年-多様なる展開
「石峰図」。府中市美術館で心地よいサプライズを演出した、京博の隠し玉。久々に再会。ユーモアかつ大胆な筆捌きが冴える!
動植物綵絵に代表される美麗彩色画をメインストリーム、水墨画をアナザーワールドと位置付ける構成は明快、展示数も豊富。現代における若冲再生物語は、美麗細密彩色画から始まり、象鯨図屏風発見という大イベントを挟み、アナザーワールドを経て大団円を迎えた。
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こんにちは。
《果蔬涅槃図》はサゾ良かったでしょうね。うらやましい!
わたしは、いつも一部しか見られなくてヤキモキ。
千葉でも見られないようで残念です。
とら様>
《果蔬涅槃図》は京博「若冲展」で見逃した最後の大作だったので、見られて嬉しかったです。
静岡、千葉と両方観られれば大満足ですが、会期が短くて難しいですね。