2010年05月09日

●没後400年 特別展覧会 長谷川等伯@京都国立博物館

 京都国立博物館で開催された「没後400年 特別展覧会 長谷川等伯」を観ました。あの「特別展覧会 狩野永徳」から3年、待ちに待った桃山文化の祭典!展示自体は照明環境に優れた東京国立博物館平成館で鑑賞済み。今回は等伯の足跡と展示を重ねることで、立体的に楽しむ趣向です。

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 まずは等伯飛躍の舞台かつ利休との接点である、大徳寺三門へ。ここにあの天井画が!でも非公開かつ案内もありません。

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 特別公開中の真珠庵、玉林院。さらに新緑が目に沁みる高桐院へ。等伯が学んだ曾我蛇足をはじめとする襖絵を鑑賞、内部と庭園が連続する空間構成を体験しました。

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 さらに現代との接点として、現代版利休が登場する「へうげもの」@アートフェア京都を観て、京博へ。

 第1章 能登の絵仏師・長谷川信春
 等伯前史。細密な技巧と、敬虔な祈りの仏画。

 第2章 転機のとき-上洛、等伯の誕生-
 「三玄院襖絵 山水図」。相手の留守に上がりこんで描いたという荒っぽいエピソードと、見事な筆捌き。雌伏のときを経て、等伯デビュー。

 第3章 等伯をめぐる人々-肖像画-
 大徳寺三門天井絵再現展示。松林に囲まれた赤い金毛閣。その中に広がる仏画ワールド。観たい!体験したい!
 「千利休像」。黒装束に身を包み、どっしりと構える眼差しが怖い。東博で観たときと凄みが全然違う。

 第4章 桃山謳歌-金碧画-
 「楓図壁貼付」。細かに書き込まれた草花が、永徳との争いの炎であり、製作に注ぎ込まれる膨大なエネルギーの放散に見える。智積院で観たときより遥かに精気が漲っている。
 「弁慶昌俊相騎馬絵馬」。京都限定、等伯晩年の大作。衰えぬ意欲と技巧。
 本来なら本展のクライマックスとなる章ですが、残念ながら点数が少ないです。焼けてしまったのか、もともと数が少ないのか。

 第5章 信仰のあかし-本法寺と等伯-
 「仏涅槃図」。大作。天井高が足りないのは東博と同じですが、下部を緩めに傾斜をつけることでかなり自然に見えます。そのスケール感から、後継者久蔵を失った悲しみと、仏への敬謙な祈りの深さが感じられる。

 第6章 墨の魔術師-水墨画への傾倒-
 真珠庵、高桐院をはじめ、大徳寺塔頭の襖絵が登場。実際の空間と襖絵を頭の中で合成すると、臨場感倍増。

 第7章 松林図の世界
 「松林図屏風」。真っ直ぐ伸ばしての展示が新鮮。障壁画(の下絵)として製作されたと予測する解説文に説得力あり。やっぱり下絵だよなあ。とすると喪失感溢れるとする見立ては、伝説化の産物か?はたまた本絵は存在するのだろうか?真相を霧の中に、終幕。

 400年前の絵画と遺構を題材に、現代の価値観を反映、再構築した等伯一代記。かくして等伯は現代によみがえった!

Posted by mizdesign at 2010年05月09日 23:15
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Tracked on 2010年05月13日 17:10
コメント

問題の大徳寺三門の近くで、その天井画再現とこの三門のために切腹させられた利休の姿を観る。・・・これは恐怖のコンビネーション。
といっても、あの天井画の実物は見てみたいものです。

Posted by とら at 2010年05月11日 09:43

とら様>
こんにちは。
あっ、言われてみればそうですね。
利休を描き、秀吉の下で大作をものする等伯。
その騒乱の中を生き抜く様は、豪華絢爛、一瞬の夢のごとく灰燼に帰する桃山文化の縮図のようですね。

Posted by mizdesign at 2010年05月12日 06:23

ミズさんこんばんは。大徳寺から展覧会へと、さすが京都ならではの楽しみ方ですね。土地の記憶がある場所は違います。(でも天井画は一度くらい公開して欲しいですが…。)

涅槃図、京都では下に傾斜がついていましたか。
あのスケール、本当に圧巻でした。

京博の江戸絵画展、若冲、永徳、等伯と来ましたが、次は何でしょうね?楽しみです。

Posted by はろるど at 2010年05月13日 00:10

はろるど様>
こんばんは。
子供の頃は庭のように通り抜けた境内ですが、今回の訪問で血塗られた戦国の舞台という印象が強くなりました。天皇が通るときしか開かないという門の上だけに、公開は難しいでしょうね。

京博の展示が思った以上に良かったのは嬉しい誤算でした。
二年後の平常展示館オープンと合わせて今後が楽しみです。

Posted by mizdesign at 2010年05月15日 20:26
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