2010年02月14日
●睡蓮池のほとりにて モネと須田悦弘、伊藤存@大山崎山荘美術館
大山崎山荘美術館で開催中の「睡蓮池のほとりにて モネと須田悦弘、伊藤存」を観ました。
圧倒的に良かったのは須田悦弘さんの「睡蓮」。「地中の宝石箱」の中心四方に白壁を建て、二方向対角にスリット状の開口が開きます。身を滑り込ませると、白いカーペットの白砂に漆黒円形の水盤。スッと突き立つ花、浮かぶ葉、半身を沈める蕾。見上げれば天窓から射す光。反射光が静かに満ちる中、睡蓮のほとりに腰を下ろし、ただただ見入ります。その静寂の心地良さは絶品。一度観た後にテラス席でシードルを飲んで、ほろ酔い気分で再訪。本当に幸せなひとときでした。
伊藤存さんの作品は、大山崎で見つけた風景をモチーフにした刺繍。作家のフィルターを通して再構成された風景は、直線と曲線、実線と点線、対比的な色使いで再構成されます。さらに展示方法に工夫を凝らしており、美術館所蔵の陶器の名品との競演が楽しめます。なのですが、正直なところ伊藤さんの作品は苦手です。存在感が希薄に感じられて、陶器にパワー負けしているように思えました。
新館をぐるりと回って庭園に出ると、10年前は原っぱのようだった庭園が立派な庭になっていて驚きました。新旧の建物が刺激しあって魅力を深める空間が、時間をかけて整備されていくことは素晴らしいことだと思います。さらに来年にかけてホールが新築されるそうで、今後がますます楽しみです。
2010年02月09日
●山口晃 天井画@清安寺
岐阜県土岐市の清安寺にある、山口晃さんの天井画を拝観しました。お忙しい中を住職さんに対応していただき本堂へ。ヤコブセンランプとストーブのほんのり赤みを帯びた光に、五匹の龍が浮かび上がります。左手が外部、右手が仏さまが祀られている内陣。その間、参拝者のための空間である外陣の天井に本作が位置します。
縦191cmx横108cmの大判な杉の一枚板を11枚繋げた天井面は、桟を天井裏に隠した平坦な大画面。木地あらわしの表面と、黒々とした墨のコラボレーションが生み出す質感がとても魅力的です。薄い地色なので日焼けが心配ですが、下地処理はされており、障子面と照明に紫外線遮断フィルムを貼っておられるそうです。
白描の飾り枠。その向こうに広がる薄墨の雲海。その中に顔を出す黒墨の龍たち。遠近感豊かな画面に誘われて、正座をして見上げ、床に寝ころび、画面に近づこうと背伸びをする。いつもは仮設的な現代アートが、この先数百年の時を生きるであろう空間に在る。その場に立ち会うことに、一期一会の出会いを感じます。
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拝観を御希望の方は、事前にお寺までお問合せ下さい。
清安寺
〒509-5142
岐阜県土岐市泉町久尻1282-1
電話:(0572)55-3268
qqrg9nq9k@triton.ocn.ne.jp
2010年02月06日
●1月の鑑賞記録
謹んで新年のご挨拶申し上げます。
1/3
博物館に初もうで@東京国立博物館
国宝 土偶展@東京国立博物館
古代ガラスの発達 吹きガラスへの道@東京国立博物館
平常展@東京国立博物館
岸駒の虎カッコイイ!
土偶展は空いていればカッコイイ展示なのだろう。特5はせまかった。。。
志野茶碗の白い肌合い、正倉院宝物や宮女図の写し、古代ガラス、蜥蜴の彫刻。堪能しました。
北大路魯山人展@日本橋高島屋
食感を刺激する美しき器の数々は至上の眼福。焼き物、螺鈿、鉛の競演する壁画も魅力的。会場もコンパクトながら観やすい。作品リストがないことと、壁画に無造作に穿たれたネジが残念。
1/9
柴田是真の漆×絵@三井記念美術館
漆工芸の超絶技巧とキリリと締まった現代的なデザインセンスが、三井の古くて新しい箱にベストマッチ。絵画による世界観の広がりも素敵。エドソンコレクションの成立が近年なのがちょっとショック。
ルイス・バラガン邸をたずねる@ワタリウム
バラガン自邸を、オリジナル家具を使って、立体的に積み上げて再構成した感じ。光の採り入れ方も見所という解説でした。個人的には空間の広がりが感じ難くて、見辛かったです。
DOMANI・明日展2009@国立新美術館
伊庭靖子さんの絵画に再会できて嬉しかった。呉亜沙さんのNY留学絵日記が可愛らしい。高野浩子さんの木箱積層インスタレーションの迫力と、テラコッタ彫刻の愛らしさが素敵。個展が12個並んでいると捉えると、それぞれに魅力的。でも1x12=6な感じ。
清方ノスタルジア@サントリー美術館
情感豊かな画面を堪能しました。絵画と挿絵の境界ってどこにあるのだろう。
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ARTのメリーゴーランド@岐阜県立美術館
吉本さんのタッチに和み、大巻さんに技を感じ、神戸さんの世界に浸る。けれども全体としてはタイトル負けしていると思いました。
あいちアートの森 堀川プロジェクト
インドアテニスクラブと東陽倉庫を観ました。空間を活かした展示形式と作家の活力の相乗効果がとても良い。
コトホギス フジイフランソワ@名古屋タカシマヤ
小品が良い。お茶ドウゾウ欲しかったなあ。
1/30
オラファー・エリアソン-あなたが出会うとき@金沢21世紀美術館
光、影、霧。空間と観客と展示が溶け合い、全体で一つの現象を作り上げる。確かに必見。ただし街中のようにザワザワしているので、光のファンタジーに陶酔しようと力むと素っ気ない。何人かで「わーきれーい」とかいいながら観ると、より楽しめる展示だと思います。
コレクション展「Shift-揺らぎの場」@金沢21世紀美術館
須田悦弘さんの「雑草」が観られて良かった。
椿絵名品展-あいおい損保コレクション-@金沢21世紀美術館
尾形光琳、岸田劉生、北大路魯山人。椿を通して名品が並ぶコレクション展。開放的なエリアソン展と180度反対の、閉鎖的なオーソドックスな展示。その落差に疲れました。
2010年02月05日
●オラファー・エリアソン-あなたが出会うとき@金沢21世紀美術館
金沢21世紀美術館で開催中の「オラファー・エリアソン-あなたが出会うとき」を観ました。
ガラス張り円盤の奥にのぞく「スターブリック」に期待感を膨らませながら入館。
「あなたが出会うとき」。室中央の回転スクリーンから光が漏れて、スリット状に部屋を照らします。陰に身を置き、ときに光の中に立って壁に映る影と向かい合う。隣の「一色の部屋」はオレンジの光で満ちた異世界。光の動静のコントラストが印象的。
「ゆっくり動く色のある影」。影の色分身。動きに合わせて色彩の世界が広がる楽しさ。カップルに大人気。
「見えないものが見えてくる」。霧で可視化された光軸が部屋を貫き、その一部が空中で分断される。タネとなるアクリルボックスが埃で存在感を増してしまい、意図がちょっと分かり難い。
「水の彩るあなたの地平線」。部屋の中央に水を張り、円環の壁面に水の揺らぎに連動した光の虹が揺れ動く。
「あなたが創りだす空気の色地図」。三色の霧が立ち込めるアルミフレームの森。行き交う人々が霧の中に消え、またシルエットが浮かび上がってくる。
21世紀美術館の回廊型+均質志向の箱と溶け合うように配置された光、影、霧。空間と観客が出会い、全体で一つの現象を作り上げる構成。まさに一期一会の展覧会です。
ただし街中のようにザワザワしているので、光のファンタジーに陶酔しようと力むと、ちょっと肩透かしに思う可能性もあります。何人かで「わーきれーい」とかいいながら観ると、より楽しめる展示だと思います。