2009年11月23日
●内藤礼 すべての動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している@神奈川県立近代美術館 鎌倉館
神奈川県立近代美術館 鎌倉館で開催中の「内藤礼 すべての動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」を体験しました。
展示は2階から。チケットもぎりブースで「本展は建物すべてが作品です。」という説明を受けて、展示室1へ。
「地上はどんなところだったか」。入口を入ると、ほの暗い空間の両側にガラスケースが並び、その中に小さな明かりが並ぶ。花びらを形作るように可愛く結ばれた電球。傍らにたたんで置かれた布。水を張ったガラスの小瓶。右手のガラスケースの扉は交互に開かれていて、内から外へと析出してくる。左手のガラスケースは妻側から観客が1人づつ入れる仕組み。ガラスケースの中を、作家の仕掛けを見逃すまいと目を凝らして進む観客。それを外から眺める観客。相互の視線が交差して、外と内の境界が融合する。なるほど、建物すべてが展示だ。越後妻有で観た「最後の教室」に似た静寂感が漂うけれども、こちらは「観客も含めた建物すべて」が作品なところが違う。
展示室2。細かな柄の布が敷き詰められた空間。何かよく分からなかった。
一階に降りて彫刻室へ。
「恩寵」。天井から吊るされたビーズと、少し離れて置かれた水を張ったガラスの小瓶。風に吹かれて、ふっと揺れる。ただそれだけの動作が、とても意味深く感じられる。ああ、この建物は内藤さんに乗っ取られているのだ。
何か見落としがないかと不安になって、テラスを回る。手すり部分に置かれた、水を張ったガラスの小瓶。とても静かな仕掛けで、とても雄弁に存在を主張する。もはや結界に思える。さらに隅に行くと、ガラスの破片が手すり脇の床に落ちている。まさかこれも仕掛け?いやいや、さすがにそれはなかろう。危ないし。先日の強風で、ガラス瓶の一つが砕けた破片なのだろう。
そして中庭に出る。見上げれば、広がる青空。
「精霊」。空に吸い込まれるように、2本のリボンが緩やかに弧を描きながら風に舞う。空を領域化する「中庭」という仕掛けを活かした、爽快な結末。
アートの魅力の一つに、「見えないモノを可視化する」ことがあげられます。言い換えると、日々の日常に埋没する現象を、鋭敏なアーティストのセンサーでもって掘り起こすこと。小さな装置を置くことで鎌倉館の闇と爽快感を引き出し、自身の世界へと作り変える本展は、まさにその刺激で満ちています。唯一の弱点は、この世界はとても脆弱で、人が10人も居ると消えてなくなりそうなこと。人の少ない時期を狙って訪問されることをオススメします。
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相変わらず文章上手いですね。
脆弱。
それこそが、内藤さんの持ち味であり弱点か。
早く行って良かったですね。
meme様>
こんにちは。
内藤さんがではなく、興行としての展覧会がですね。
美しい時空間でした。
mizさん
こんばんは
> 唯一の弱点は、この世界はとても脆弱で、人が10人も居ると消えてなくなりそうなこと。
これはそうなのだと思います。
だけど、この展覧会が混雑することってあるのでしょうか...
# ちょっと想像ができません...(^^;
lysander様>
こんにちは。
今回の展示って、他者がいて初めて成り立つ作品ですよね。
人と人の関係性で作品が変質するというか。
そんな不確かなモノを触媒にして世界を構築するって凄いなあと思うわけです。
混雑すると世界がスッと消えて、その跡だけが残りそうです。