2009年07月22日
●建築家坂倉準三展 モダニズムを生きる 人間、都市、空間@神奈川県立近代美術館
神奈川県立近代美術館 鎌倉館で開催中の「建築家坂倉準三展 モダニズムを生きる 人間、都市、空間」を観ました。
モダニズムの巨匠「ル・コルビュジェ」の下で学んだ日本人の一人であり、日本の近代建築及びデザインの発展に大きく寄与した建築家「坂倉準三」の回顧展です。彼の代表作である「神奈川県立近代美術館 鎌倉館」と、住空間をテーマにした展示を意欲的に開催する「パナソニック電工 汐留ミュージアム」での2部構成の展示です。
展示はコルビュジェのアトリエでの修行時代から始まります。当時携わったプロジェクトの図面、スケッチを通して、彼が学んだ素材、技法、考え方を紹介します。後の神奈川近美につながる、鉄骨造にセメント版を貼るアイデア。社会の要請に対する建築的回答としての、工業化住宅の在り方。
華々しいデビューを飾る、1937年のパリ万博日本館。ゆったりとしたスロープで連結される敷地と建物、傾斜のある敷地を活かした配置計画。1/50模型と原寸木製ルーバーによる、臨場感ある空間の再現。
帰国後の、物資の乏しい時代の工夫を凝らした設計活動。現実と向かいつつも、モダニズム空間の豊かさを獲得しようとする真摯な姿勢に感銘を受けます。そして日仏会館の設計を皮切りに、塩野義、東レといった企業との信頼関係を築いて次々と関連建築を手がける時代へ。さらに時代の上り調子を背景に役所、美術館、学校などを次々と手がけるようになります。
もう一つ印象的なことは、出光の給油所に一つ一つ異なったデザインを考えるといった小さな建物にも情熱を注ぐ姿勢や、渋谷駅等の駅前再開発を交通動線を踏まえて検討するといった領域横断的な活動です。展示のクライマックスが新宿駅西口の再開発なことが象徴的です。
会場から感じられるのは、終生変わらぬコルビュジェへの尊敬の念と、建築に留まらずプロダクトから都市計画まで、時代の要請に真摯に向き合う姿勢。その誠実さゆえに、造形面ではそれほど突出したモノを感じません。建物群の更新期を迎えるに当たり、坂倉建築もまた姿を消すのか、手を入れながら存続するのか。デザインの価値を問われる時代に入ります。
代表作である建物を体験しながら観る回顧展は非常に説得力があります。
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