2009年06月13日
●日本の美術館名品展(後期)@東京都美術館
東京都美術館で開催中の「日本の美術館名品展」(後期)を観ました。前期との入替作も多く、新鮮な気持ちで楽しめます(前期の感想はこちら)
1 西洋絵画、彫刻
ウンベルト・ボッチョーニ「カフェの男の習作」。前回は見逃していましたが、未来派のボッチョーニと気付いて俄然興味が湧きました。彫刻「空間における壜の展開」における明快な第4次元=時間の表現は今でも衝撃的。分析的手法で描かれたであろう男の姿を追って、画面に釘付け。でも分解されすぎて良く分からない。
ヴァシリー・カンディンスキー「E.R.キャンベルのための壁画 No.4」の習作(カーニバル・冬)。未来派に続いてバウハウス。空間デザインの夢が渦巻くこの時代はやはり魅力的!今回のマイベスト。
エゴン・シーレ「カール・グリュンヴァルトの肖像」。闇に浮かび上がる眼、手、体。荒々しいタッチが存在を生み出す。さすが豊田市美!
パブロ・ピカソ「青い肩かけの女」。静溢の中に悲しみをたたえ、淡々とこちらを見る。
パブロ・ピカソ「ドラ・マールの肖像」。暖かなトーンの才女。
五枚の作品が並ぶことで生まれる、時代への野望、挫折、回復のシークエンス。タッチの荒さと平坦さ、色彩の暗さと明るさ。それらから感じられる20世紀初頭の息吹こそが、本展の面目躍如なところだと思います。
アンディ・ウォーホル「ダイヤモンド・ダスト・シューズ」。巨大化し、無造作に並ぶ靴。きらめくガラスの破片。抽象絵画のような画面から発散される、繊細で暴力的な美。後期のベスト。
イブ・クライン「人体測定 ANT66」。モデルに直接スプレーで吹き付けて描いたという青。製作現場はさぞ壮絶だったろう。ウォーホルと向かい合う展示は迫力十分。
2 日本近・現代洋画、日本画、版画、彫刻
竹内栖鳳「散華」。楽しげに楽器を奏で、空を舞う天女。どうして悲しいタイトルなのかと思ったら、花をまくという意味らしい。
高島北海「果蔬図」。楽しい絵。
小茂田青樹「秋意」。月に葡萄。粒の陰影が房の重みを感じさせる。墨画のモノトーンの画面が美しい。
小松均「雪壁」。確かに雪壁だ。
岩橋英遠「彩雲」。空飛ぶマンボウ。
「アーツ&クラフツ展」の時も感じましたが、関連性の薄い西洋と日本の作品を一つの展示を押し込むのは、全体構成として成功しているとは思えません。一度現代まで辿りついた物語を、頭の中で過去へと巻き戻す作業は疲れます。部分部分は素晴らしいのに、全体としての印象が希薄な展示だと思いました。
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