2009年05月04日
●「山水に遊ぶ-江戸絵画の風景250年」(後期B)@府中市美術館
桜の陽気が過ぎて、爽やかな初夏へと移るこの頃。府中市美術館で開催中の「山水に遊ぶ-江戸絵画の250年」(後期B)展を観ました。前回の観覧券半券持参で、入場料半額!図録も完売だそうです。前期の感想はこちら。
『山水に暮らす』
「自然とともにある」
作者不詳「農耕図屏風」。金色の雲と大地、濃紺の水流、ボリュームのある山々。琳派?と思わせる構図と派手さで描かれた農村風景。後期
鈴木其一「魚楽図」。エメラルドグリーンと青で彩られた岩と松、畳のようなパターンの水面。こちらは正真正銘琳派の系譜。上手い。後期
明堂宗宣「居初邸天然図亭真景図」。琵琶湖を借景にした庭園。小島が浮かぶ琵琶湖の様が新鮮。後期
「神の国のすがた」
小泉斐「男山伝説図」。今回もこの絵が目にとまる。やっぱり龍の山登りは面白い。全期間
岸駒「芙蓉峰図」。雲海よりのぞく富士の山姿。かっこいい。全期間
『絵をつくること』
「中世の残像」
狩野栄信「雪月花図」。霧に霞む雪月花。人物や建物にピンポイントに施された着彩が効果的。後期B
「実景と絵すがた」
狩野栄信・養信「富士山江の島図」。画面手前から伸びる砂の道、舟、江の島。遥か彼方に富士山。奥行の出し方が面白い。後期のみ
平井顕斎「白糸瀑布真景図」。相変わらずインパクトのある構図。奇想な感じが大好き。全期間
『奇のかたち』
曾我蕭白「比叡山図」。5ヶ月ぶりの再会。会場が変わって、見栄えも格段に良し。山のモコモコした感じを描く独特のタッチ、ふもとに立ち込める霧のぼかし。圧倒的な描画技術。後期
曾我蕭白「月夜山水図屏風」。真打ち登場!黄昏時の山水に、細やかな花、家の中のカーテンといった小物がアクセントを添える。緻密に描かれた山々と、省略の効いたモダニズムのような家々が絡み合う画面は、圧倒的な蕭白ワールド。特に左隻中央の、山に包まれるように建物が建つ描写は、自然と建築がとろけるように一体化していて必見。大きな画面に良好な保存状態、なぜこれが国宝でないのかが不思議に思える。後期
東東洋「夏冬山水図」。画面を大きく占める雪山、小さくのぞく建物。大胆な構図と画面に漂う詩情が「蒲原夜之雪」を思わせる。
『ロマンティシズムの風景』
「物語る山水」
住吉弘定「四季之段図」。山野を俯瞰する構図に散りばめられた、梅、山桜、藤、躑躅、山吹、柳、萩、紅葉。遠景にには田植えの景。ロマンティックに四季を綴る。後期
「憧憬」
池大雅「西湖勝覧図屏風」。ボリュームの取り方と淡い色彩がセザンヌっぽい?全期間
鈴木芙蓉「鼈背蓬莱図」。亀の背に乗る切り立った山。下端の水辺に眼光鋭い亀の横顔。険しい山の山頂近くに鶴が佇むステージ。縦長の画面を活かして、異なる様相を一つの画面に納めた構図が面白い。後期
谷文晁「秋渓対話図」。聳える山の緑と、そのふもとの木のピンクの対比が美しい。滝の上に建つ建物は、江戸版「落水荘」だねえ。
長澤蘆雪「赤壁図」。流れるように上へと伸び上がる岩の描写!視線も一気に上へと向かい、岩間の月を仰ぎ見る。動きを感じさせない水辺、緻密な船上の人物描写と対照的。本来の静動が逆転した演出に魅了され、蘆雪のしてやったりな表情が思い浮かぶ。後期
長澤蘆雪「蓬莱山図」。三角形の浜、右下に奇岩、その上を亀の一行が歩く。奥には鶴の編隊が舞い、仙人が乗る。白砂と海の緻密さ、奥の岩山の墨ぼかし、松並木のやっつけ具合。緩急つきすぎなタッチも含めて、画面全体でダイナミックな世界観を構築する。勢いをそのまま画面に定着させる技量は抜きん出て凄い。後期
前半は若冲が抜けてトーンダウンした感じがありましたが、後半に進むに従ってヒートアップ。結局二時間近く観ていました。「風景画」を切り口に、江戸時代の多彩な感性を現代の目で見返す試みは大成功だと思います。
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府中市美術館(府中市浅間町1-3)
「山水に遊ぶ - 江戸絵画の風景250年 - 」
3/20-5/10(後期B 4/28-5/10)
前期展示に引き続き... [続きを読む]
こんにちは。
本当に素晴らしい展覧会でした。
蕭白・芦雪の後期と若冲の前期のバランスも絶妙でした。
とら様>
こんにちは。
リピーター半額の配慮といい、本当によく出来た展示でした。
訪問者視点の勝利ですね。
Tak様>
こんにちは。
前期後期ともに見応えのある内容で大満足です。
配慮の行き届いた展示でした。
蕭白のマジックインクで描いたような線、
とてもモダンな感覚で大好きです。
しかし、府中は遠いです。
こんにちは。
府中は遠いのですが、リピートせずにはいられない展示でした。
月夜山水図屏風すごかったです。
こんばんは。府中への旅程も江戸絵画シリーズなら苦になりませんね。後期も満足出来ました。
>自然と建築がとろけるように一体化していて必見
山全体がタワー化していましたね。絵の中に入ってのぼりたくなってしまいます。
はろるど様>
こんにちは。
府中だけを目指すと遠くても、新宿や東京で用事を経由するとそれほどでもないですね。
「月夜山水図屏風」は本当に凄い絵でした。
これほどの画家でも忘れ去られるんですね。流行り廃りは無常です。「奇想」にスポットの当たる時代で良かったです。