2009年04月27日

●日本の美術館名品展@東京都美術館

 東京都美術館で開催中の「日本の美術館名品展」を観ました。副題は「MUSEUM ISLANDS」。美術品の連鎖が日本列島を形作る、とても美しいネーミング。おらが名品を持ち寄った、全国公立美術館アピール大会ともいいます。

 1 西洋絵画、彫刻
 地下1階は西洋絵画、彫刻。
 ジャン=フランソワ・ミレー「ポーリーヌ・V・オノの肖像」。布のようなサラサラな黒髪が印象的。山梨県立美術館
 サー・エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ「フローラ」。鮮烈な赤の衣装の花の精。横の添えられた美術館のメッセージに「看板娘」とあり、所蔵美術館の愛情を感じます。郡山市立美術館
 ピエール=オーギュスト・ルノワール「庭で犬を膝に抱いて読書する少女」。美しい光の満ちる濃密な空間。吉野石膏株式会社(山形美術館寄託)。
 カミーユ・ピサロ「エラニーの楽園」。パッと広がる田園風景。ファーストインプレッション勝負になってくると、印象派が有利。福島県立美術館
 クロード・モネ「ポール=ドモワの洞窟」。明るく深い青が美しい。印象派のチャンピオン。茨城県近代美術館
 ポール・セザンヌ「水の反映」。静溢なイメージ。日本画のよう。愛媛県美術館
 オディロン・ルドン「ペガサスにのるミューズ」。幻惑のイメージ。1913年アーモリー・ショー(!)に出品。そんなに昔からあったんだ。群馬県立近代美術館
 ジェームズ・アンソール「キリストの誘惑」。光のストライプがポップアートのよう。伊丹市立美術館
 ピエール・ボナール「アンドレ・ボナール嬢の肖像 画家の妹」。ピンクのストライプシャツ、赤地に黒紋様のスカート、左手から二頭の犬が動きを与える。斜めに流れる画面構成が美しい名品。愛媛県美術館
 アンドレ・ドラン「マルティーグ」。蛍光ペンでキュッキュッキュッ。淡く深みがある。島根県立美術館
 ヴァリシー・カンディンスキー「「E.R.キャンベルのための壁画No.4」の習作(カーニバル・冬)」。大好きなカンディンスキーの油彩画。絵に力を感じる。宮城県美術館
 エゴン・シーレ「カール・グリュンヴァルトの肖像」。闇に浮かぶ目、赤い唇、組んだ手。夢に出てきそう。豊田市美術館
 パブロ・ピカソ「青い肩かけの女」。力のある目と青いトーン。上手い。シーレの隣に並べる配慮が、配置の妙を感じさせる。愛知県美術館(東海銀行寄贈)。
 モーリス・ド・ブラマンク「雪」。スピード感ある厚塗りによる荒々しさ。北九州市美術館
 ジョルジュ・ルオー「道化師」。ブラマンクの隣に同じ「厚塗り」のルオーを並べるセンスが素敵。言葉は同じでも、その描く世界は全く異なる。最後の宗教画家の重厚な世界。北九州市美術館
 ルーチョ・フォンタナ「空間概念」。遠くからでも目を惹く鮮烈なピンク。そして穿たれた亀裂。強烈かつエロティック。豊田市美術館
 エミール=アントワーヌ・ブールデル「両手のベートーヴェン」。石詰めのベートーヴェン?謎が記憶に残る。愛知県美術館
 フランソワ・ボンボン「シロクマ」。大きな手足とスベスベの肌がマンガキャラのよう。可愛い。群馬県立館林美術館
 コンスタンティン・ブランクーシ「空間の鳥」。立体作品が並ぶ吹抜け空間にスッと立ち、照明の反射で輝く。存在感ある展示が、配置の妙を感じさせる。滋賀県立近代美術館

 2 日本近・現代洋画、日本画、版画、彫刻
 1階に上がると、一転して濃紺の背景に日本洋画が並びます。
 岸田劉生「冬枯れの道路(原宿附近写生)」。生命感溢れる土の道。こんなに生き生きと「土」を描いた絵を他に知らない。再会できて嬉しい。新潟県近代美術館万代島美術館
 髙島屋十郎「蝋燭」。これも再会作品。三鷹市美術ギャラリーでの感動が蘇ります。じっと見る光。福岡県立美術館
 藤田嗣治「私の夢」。生真面目な雰囲気の日本洋画の中で、軽やかに躍動する藤田の存在感が際立つ。「素晴らしき乳白色」を猫たちが囲む。新潟県近代美術館万代島美術館
 松本俊介「橋(東京駅裏)」。重厚なモノトーンの画面に描かれる八重洲橋。大気汚染された工業地帯のよう。神奈川県立近代美術館
 小磯良平「着物の女」。鮮やかな縦ストライプの着物柄と、動きのあるポーズ。モダンで明るい人物画。「橋」の次にこの作品を並べる、静動のコントラストが素敵!神戸市立小磯記念美術館
 小杉放菴「金太郎遊行」。おじいちゃんが孫を見つめる暖かい視点。まさかり担いだきんたろう♪栃木県立美術館
 牛島憲之「邨」。ブリジストン所蔵の「タンクの道」と並んで好きな作品。形の捉え方が好きです。府中市美術館。出かける理由が増えた。
 香月泰男「涅槃」。弟子たちの骸骨のような頭と合掌したが手が闇に並び、その中に横たわるモアイのような釈迦。強烈な黒。黒、グレー、赤、青と続く展示作品の並べ方も丁寧。山口県立美術館
 
 2階に上がって、日本画、版画、彫刻。
 狩野芳崖「伏龍羅漢図」。子猫のようにスヤスヤと眠る龍。福井県立美術館。又兵衛+芳崖の美術館と認識をあらたに。
 菱田春草「鹿」。クリッとした眼が愛らしい。飯田市美術博物館
 菱田春草「夕の森」。大きく円を描く鳥たちの軌跡、霞む木々。開放シャッターで捉えた星空のよう。構築する意識と感性が共存する様が、建築のよう。御舟にも言えるけれども。飯田市美術博物館
 高島北海「果蔬図」。色とりどりの野菜が並ぶ掛軸。題材と色彩の取り合わせが面白い。下関市立美術館
 小川芋銭「涼気流」。霞ヶ浦の漁村風景。この前霞ヶ浦まで行ったので親近感が増す。茨城県近代美術館
 近藤浩一郎「雨期」。水の入った田んぼの風景。写真のような水墨画!山梨県立美術館
 山口蓬春「紫陽花」。蓬春記念館に行って以来、蓬春に興味津々。キラリとした質感、器の釉薬の表現の妙。北海道立近代美術館
 恩地孝四郎「『氷島』の著者 萩原朔太郎像」。皺が印象的な作品。千葉市美術館。意外な選択。
 平櫛田中「酔吟行」。声が聞こえてきそうな像。呉市美術館
 中原悌二郎「若きカフカス人」。東京国立近代美術館の同名作品を観たことがあるので同じかと思ったら、美術館のメッセージに「カフカス人が同じだと思わないで下さい」とあってビックリ。北海道立近代美術館
 向井良吉「蟻の城」。世田谷美術館。これまた意外な選択。
 佐藤忠良「帽子・夏」。帽子で隠れた顔、庇からのぞく口元が想像力をかきたてる。ブロンズなのに軽やかで清清しい。宮城県美術館

 名品が揃っているので、どの作品にも力があります。また初見の作品が多く、新鮮な驚きがいくつもありました。旅行気分で、自分のお気に入りの一枚を探すと楽しいです。

 その一方で、全体の印象はかなり地味。「ルーブル」や「阿修羅」といったビッグブランドと並ぶと埋没しそうです。全国美術館周遊パスとか、上野ミュージーアムパスといった、巡回する工夫があると良いのにと思います。

Posted by mizdesign at 2009年04月27日 23:01
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Tracked on 2009年06月16日 15:56
コメント

こんばんは。

参加していただき
ありがとうございました!

展示替えした後もまた
是非観に行きたいですね。
日本画充実していました。

Posted by Tak at 2009年04月30日 18:38

出品数に圧倒的された展覧会でもありましたね!後期も楽しみにしてます~

Posted by Nikki at 2009年04月30日 21:12

こんばんは。怒濤の感想、お見事です!また各美術館へのリンクもありがとうございます。次回はリンク先の美術館サイトを拝見してから行くことにします。作品を通して、各美術館への感心を持つのが一番でしょうね。

>上野ミュージーアムパスといった

同感です。阿修羅とルーブルのお客さんをどこまで取り込むかに集客の成否がかかっていそうですね。

Posted by はろるど at 2009年04月30日 21:46

Tak様>
先日はどうもありがとうございました。
気がつけば、「ルーブル」、「阿修羅」、「名品展」。さらに東博常設に「尼門跡」。上野は充実してますね。

Nikki様>
こんにちは。
物凄い質と量に圧倒されますね。
軽く観たつもりで、3時間近くかかりました。

はろるど様>
こんにちは。
まとめはお任せして、感想の箇条書きで済ませました。
それでこの量!ビックリです。

上野パスが難しければ、せめて「ぐるっとパス」の割引幅を拡大して欲しいですね。

Posted by mizdesign at 2009年05月02日 08:40
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