2009年04月05日
●やなぎみわ「マイ・グランドマザーズ」@東京都写真美術館
東京都写真美術館で開催中のやなぎみわ「マイ・グランドマザーズ」を観ました。2000年より制作が続く、若い女性が思い描く50年後の自分の姿を作り上げるシリーズ。
「MIKA」。女だけの漂流記。かつて引率者だった女性が教え子たちの未来を案じて、荒海に立ち尽くす。その周辺でたくましく生きる教え子たち。雄大な自然と屹立する画面の美しさ。
「MISAKO」。飛行機パイロットとして空を飛ぶ。画面の上半分を占めるキャノピー越しの青空が美しい。夢と現実が交差する快感。
「AI」。占い師が自分の後継者を探して面接を繰り返す。漫画的な大仕掛けな背景設定。人物の憂鬱な表情も漫画的。そして密度が高く美しい画面。作家の構築力は素晴らしい。
「KAHORI」。家の模型に頭を突っ込んで、夢のマイホームの世界に浸る。頭が入る大きさがあれば、世界は完結する。
「KWANYI」。本に埋め尽くされた暗い書庫で、目を照明代わりに発光させながら書き物に没頭する老女。「人は私を眼光婆婆と呼ぶ」。本好きな人の夢物語。
「MINAMI」。自分が生み出したキャラクター「みるきーさん」に扮してテーマパークで遊んでいるところを怖い秘書に見つかって拗ねる社長(会長?)。「くろねずみ」に負けるなミルキーさん!きぐるみの原色な感じと、背景のテーマパークの奥行が、無邪気な夢にマッチしていて楽しい。
「MIWA」。氷原を歩く黒い出で立ちの老女。その周りを子供たちが駆けていく。青い空と白い氷、黒い衣装に金髪の女性のコントラストが美しい。明記はされていないけれども、どうみてもメーテル。一緒に旅した少年たちを振り返る。この中に鉄郎もいるのだろうか。
「MIE」。死に絶えた世界に生きるわずかな生き残り。背景の廃墟都市と朝日差す光、舞台のコンクリートの荒々しい質感が、壮大なSF物語を構築する。
「ERIKO」。墓地で墓石のステージに毅然と立つスーパーモデル。墓地をこんなに格好良く撮れるのは驚き。
作家と被写体との対話は一年以上かけることもあるそうです。また最近は少女や男性がモデルになることもあるそうです。彼女の高い技術と構築力が紡ぎだす、27の夢物語。発色現像方式印画の美しい色彩と相まって、素晴らしい世界を作り上げています。絶賛お薦めします。
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東京都写真美術館(目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内)
「やなぎみわ マイ・グランドマザーズ」
3/7-5/10
若い女性が思い描く50年後... [続きを読む]
こんにちは。作品の高い完成度も、モデルとの対話から始まるという、コツコツと積み上げられた根気のある作業があったからこそなのでしょうね。断片的なテキストもまた見る側の想像力を喚起していたと思います。
見事の一言です。
はろるど様>
こんにちは。
対話を通してモデルの持つビジョンを引き出し、精緻な作り込みで画面に定着させるアーティストの技量が引き立つ展示でした。
何より、「人生を謳歌する活力」に溢れていました。