2009年03月21日

●「山水に遊ぶ-江戸絵画の風景250年」(前期)@府中市美術館

 府中市美術館で昨日から始まった「山水に遊ぶ-江戸絵画の250年」(前期)展を観ました。好評を博した「動物絵画の100年 1751-1850」から2年。定評ある企画力に加えて充実したイベントプログラム、展覧会チケット半券持参で二回目は半額というリピーターへの配慮。府中市美術館が放つ江戸絵画ワンダーランド!今回のテーマは「山水に遊ぶ」。江戸絵画に描かれた風景を、様々な角度から捉えます。

 『山水に暮らす』
 「自然とともにある」
 熊谷直彦「騰竜隠雲之図」。強風に吹き上げられて宙に舞う傘、壊れ藁葺屋根端部の壊れた細片。前期のみ
 伊藤若冲「石灯籠図屏風」。本展の目玉があっさりと登場。小鳥にかじられたような石灯籠。PCマウスのような葉をつけ、水流のような幹の木々。若冲の視点は楽しい。前期のみ

 「神の国のすがた」
 小泉斐「男山伝説図」。机に伏してうたた寝する男が見る夢。海から山へと竜がのぼる構図が独特。全期間

 『絵をつくること』
 「中世の残像」
 狩野山雪「富士三保松原図屏風」。思いがけず山雪!雪舟に手本をとる、型を継承する美。前期のみ
 原在中「富士三保松原図」。きれいな青いトーンが印象的。前期のみ
 野崎真一「富士・三保松原図」。アイスクリーム・サンデーのような、白地に青がかかった富士山。前期のみ

 「実景と絵すがた」
 高久靄厓「袋田滝真景図」。心に映る真なる景色を描く。淡い色彩と変化に富む水流が美しい。前期のみ
 平井顕斎「白糸瀑布真景図」。瀑布の上に富士山が載るような構図が面白い。全期間

 『奇のかたち』
 曾我蕭白「山水図押絵貼屏風」。ため息が出るほど上手い。切り立つ山、雲海に霞む山姿、荒れ狂う強風、穏やかな夕陽と夜景、幽玄な雪景。モノトーンで季節変化を描き分ける描写力は超絶。前期のみ
 曾我蕭白「松鶴山水図」。波、岩、松の見事な描写、その奥に霞む山々。巧みな線の使い分けは、線のダンスのよう。前期のみ。本展の真打ちともいえる「月夜山水図屏風」「比叡山図」を後期に残しつつも、圧倒的な画力をみせつける蕭白!
 鈴木芙蓉「那智瀑泉真景図」。水流が霧となり、光の粒子と化して山々に溶け込む。
 小野田直武「岩に牡丹図」。超巨大な牡丹が岩山に刺さる。超常な絵。全期間
 墨江武禅「月下山水図」。月光に浮かび上がる、凍える山水図。氷細工のような美しい描画。前期のみ

 『ロマンティシズムの風景』
 「物語る山水」
 山本探川「宇津の山図屏風」。画面を埋め尽くす緑の山、上部に紺地に金の波線の海、山間を縫う金色の道。大胆な構成美。前期のみ

 「体感する自然、見霽かす心地」
 池大雅「山水図屏風」。中央の奇妙な木々がなんとも個性的。前期のみ

 「憧憬」
 伊藤若冲「石峰寺図」。最後を飾るのは、若冲の風景画+人物画(?)!全く予想外のサプライズに、テンション上がりまくり。丸みを帯びた仁王門を潜ると、そこは仏様ワンダーランド。水面に浮かぶ島々で教えを説く仏様とそれを囲む修行者たち。水面を獅子に乗って渡る一行、亀に乗って移動する人もいる。直線的で鋭角に折れ曲がる橋もインパクトある造形。本当に若冲!?ということも含めて、必見の一枚!前期のみ

 とにかく見て楽しい展示です。蕭白と若冲を観るだけでも行く価値は十分にあります。建替中の京博常設展から美味しいところを選り抜いて持って来たような前期、それらがゴッソリ入れ替わる後期。後期はさらにA、Bに分かれているので、最低前期後期で2回、できれば後期A、Bをカバーして3回訪れたい展示です。図録も素晴らしい出来で、迷わず買いな一冊です。

Posted by mizdesign at 2009年03月21日 23:51
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コメント

久々の力の入った書きっぷり。
入れ込みが伝わりました。

Posted by meme at 2009年03月22日 08:15

memeさま>
こんにちは。
この展示は観ていて「おー」とか「ほー」といった声が出てしまいます。
その最後に石峰寺図が出てきて、もう感極まりました。
「見て楽しい」という点でダントツの展示だと思います。

Posted by mizdesign at 2009年03月22日 11:48

こんにちは、わたしも昨日行きましたが、最後の《石峰寺図》には仰天しました。
これでは後期も絶対・・・ですね。

Posted by とら at 2009年03月22日 16:10

こんばんわ。
昨日、朝一で行ってきちゃいました〜。
やっぱり府中はやってくれますね。
若冲は石燈籠だけかと思ってたので最後はうれしい誤算でしたよ。

Posted by あおひー at 2009年03月22日 21:55

とら様>
こんばんは。
石灯籠と月夜山水図屏風の展示かと思っていたら、見事に裏切られました。
こんなサプライズなら大歓迎ですね。

あおひー様>
こんばんは。
さすが府中、金太郎飴のような面白さでした。
最後のアレは京博の常設展ではたまに出てたみたいですが、外部で展示されるのは珍しいのでは?画像を見たことがなかったので、驚きの一枚でした。

Posted by mizdesign at 2009年03月22日 23:30

こんばんは。最後の石峰図は嬉しいサプライズでした。あの構成自体が本当に心憎いです。うまいですよね。

富士山の絵がたくさんありました。やはり日本人にとって特別な「風景」なのだと思います。

Posted by はろるど at 2009年04月02日 21:47

はろるど様>
こんにちは。
観て楽しい展示は良いですね。
風景を捉える視点の変遷も興味深いです。
図録の出来もよくて、お得感二倍です。

Posted by mizdesign at 2009年04月03日 18:09

こんにちは。

遅ればせながら
楽しんで参りました!

ここの美術館は行って損させませんね。
入館料もそして出展作品も!!

Posted by Tak at 2009年04月11日 11:35

Tak様>
こんにちは。
今日から後期ですね。
また出かけないと。

Posted by mizdesign at 2009年04月14日 06:05
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