2009年02月28日
●ルーブル美術館展@国立西洋美術館
国立西洋美術館で開催中の「ルーブル美術館展-17世紀ヨーロッパ絵画」を観ました。会場への特設入口+入場待ち用テント庇が用意されていることから、主催者の自信の程がうかがえます。公開初日の15:00頃で、入館待ちはないもののコインロッカーの空きがない状態。絵の前には5-6層の人垣。これは持久戦だと、オーディオガイドを借りて重点鑑賞。17:00前になると空いてきたので、通しでじっくりと観ました。
I. 「黄金の世紀」とその陰の領域
栄華を極めるルイ王朝と、その陰にある貧困層(に扮した人々)を描く作品群。これらの絵画が装飾する宮殿を想像しながら観ると、一層興味深い。
レンブラント・ファン・レイン「縁なし帽を被り、金の鎖を付けた自画像」。黒の生地と金の鎖の質感を見事に描き分ける、売れっ子画家としての自信と宮廷画家への憧れに満ちた自画像。
ヨハネス・フェルメール「レースを編む女」。明暗の描写が巧みな手先に視線が集まる。小品ながら、日本でのフェルメール人気を意識してか図録の表紙に大抜擢。
II. 旅行と「科学革命」
大航海時代を迎えて拡大する世界。
ペーテル・パウル・ルーベンス「トロイアを逃れる人々を導くアイネイアス」。左手に炎上するトロイア。英雄アイネイアスが祖父と子を連れて非難している人々の下へやってくる。右手に停泊している船に乗って、新天地を目指す。この中から、後にローマ建国を建国する人々が生まれたと言われる。壮大な叙事詩の一場面。
クロード・ロラン「クリュセイスを父親のもとに返すオデュッセウス」。波光煌めく港の美しい風景に、「イリアス」の一場面を重ねる。左手階段の上にいるというクリュセイスを探したが、小さすぎて分からなかった。
ルドルフ・バックハイゼン「アムステルダム港」。海運拠点アムステルダムの黄金時代。
アドリアーン・コールテ「5つの貝殻」。主題の貝が隅々まで見えるよう重ならない構図をとりつつも、意味ありげな石台のひび割れ等で単調にならずに見せる。小品ながら緻密な描画で、コレクションを自慢する写真的な役割も果たしたのだろう。
ヨアヒム・ウテワール「アンドロメダを救うペルセウス」。画面左手一杯に、鎖で囚われたアンドロメダの美しいS字ポーズと青味がかった白い肌。右手に小さく海獣と戦うペルセウスとペガサス。足元には人骨が転がり、危険な場面であることを伝える。その手前には美しい貝殻が並べられ、絵であると同時に装飾品としての性格を兼ね備える。
III. 「聖人の世紀」、古代の継承者?
プロテスタントへの対抗上、分かりやすさを重視する宗教画の数々。
カルロ・ドルチ「受胎告知」。茶色の巻き毛と白い肌が美しい、天使と聖母の美少女コンビ。
ジョルジュ・ド・トゥール「大工ヨセフ」。蝋燭の光に透けるキリストの手。キリストが聖徳太子のようで、聖人のイメージは東西を問わず重なるものかと思う。
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ「6人の人物の前に現れる無原罪の聖母」。柔らかに手を合わせ、銀の三日月に乗って現れる聖母。甘く美しい聖なる世界。
質、量ともに充実し、会期も長く今年の西洋美術展ナンバーワンになることは間違いなしと思える内容。抜群のブランド力を誇る「ルーブル」効果で、会場内はカップルでいっぱい。観客数の100万人越えも時間の問題と思えます。
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ミズさんこんばんは。昨日はどうもありがとうございました。初日は8000名以上の入場者があったそうですね。これはお花見シーズン、ゴールデンウィーク、そして会期末と大変なことになりそうです。
> アドリアーン・コールテ「5つの貝殻」
私も印象に残りました。あのような小品はどういうシーンで飾られたのでしょうね。トイレとか…?
こんばんは。
初日から混雑。
流石注目展だけありますね。
セクション分けの意味が
いまいち分からなかったのですが
講演会をお聞きになったとらさんから
その理由を伺い何となく納得。
はろるど様>
こんにちは。
先日はありがとうございました。
コレクション自慢の絵なので、書斎とか?でも大きさ的にはトイレがピッタリな気もしますね。
Tak様>
こんにちは。
先日はありがとうございました。
会場初日からの混雑ぶりに、セクション分けはそれほど気にせず観ることに集中しました。あとで考えてみると、なかなか意欲的な切り口だと思います。
ほんとカップルだらけでしたね。
私は一人で出かけたので、2時間半
じっくりと楽しみました。
一村雨様>
こんにちは。
スタートの悪い西美なので、テレビで紹介されてジワジワかと思っていたら、ものすごいスタートダッシュでビックリしました。
金曜日の夜間鑑賞が比較的空いてるそうです。