2009年02月11日

●安田靫彦展@茨城県近代美術館

 茨城県近代美術館で開催中の「没後30年 安田靫彦展」を観ました。

 I章 萌芽と胎動
 「田村将軍」。19歳の作、元々上手い。
 「静訣別之図」。右手に義経の立姿、左手に形見の鼓を受けて下を向く静。緊張感ある斜め構図。
 「両雄遥望江戸図」。家康に江戸移転を薦める秀吉。地味ながら見せる。
 「紅葉の賀」。オレンジのシルエットの紅葉、白地にグレーの波線の川。簡略化された、情緒豊かな表現。
 「花の酔」。切れ長の目、枝垂桜の美女。
 「羅浮仙」。吹き上げるような白梅の生命感溢れる美、それを背に立つ女性像。

 II章 展開と開花
 「風神雷神」。若い2人の男子がコスプレして跳ねる。宗達の名作を軽快にアレンジして自分のモノにする。
 「伊勢物語 あまのかわ」。秋草に人待ち顔の男性の後姿。天の河に来た業平が、織姫主題の和歌を詠んだ。
 「源氏若紫」。源氏視点からみた若紫。垂らし込みの庭園に面した縁側でたたずむ黒色長髪のふくよかな顔立ちの少女。
 「羅浮仙」。年を経て、大きく変わった仙女。ふくよかな顔立ち、足元の暗がり。画面上に白梅。
 「花づと」。クリーム地に色とりどりの紅葉を散らし、手に百合の花束、帯に牡丹(?)、手に持つ傘に木地模様。象徴化された美人。
 「兔」。赤黄緑の葉、白ウサギ。
 「新蔬」。ユーモアある写実性で描かれた、茄子とピーマン。御舟を思わせる。
 「わびすけ」。垂らし込みが冴える!
 「豊太閤」。金地に梅花、手前に白服の秀吉。

 III章 深花と円熟
 「伏見の茶亭」。茶室の柔らかな光の中に佇む茶人秀吉。その実はどうだったのだろう?史実を映した先に独自の世界を築く、靫彦ワールドの深化。
 「大観先生」。細部のスケッチと絵。イメージを固め、画面に定着させるプロセス。
 「紅梅」。暗い金地に枝垂梅のシルエット。ピンクの花が輝く。
 「梅花定窯瓶」。赤地に紅白梅挿す白瓶、床に十字模様。色面構成が可愛らしい。
 「卑弥呼」。幾重にもかんざしを挿し、鳳凰花鳥飾りを抱く。衣に大胆な魚紋様。威厳に溢れる女王。想像力で描く古代史。
 「酔胡王随従」。歴史の遺品から想を膨らませて描く、幻想的な古代世界。
 「出陣の舞」。一目で信長と分かる。
 「飛鳥大仏と止利仏師」。大仏の搬入。想像の産物。

 安田靫彦の特徴は、速水御舟に多大な影響を与えた今村紫紅と盟友関係にありつつ、30年前まで存命だったという長寿。そして美しい線描で紡がれる、歴史上の名場面=物語を明快に示しつつ、大胆にアレンジする靫彦ワールド。前半の明るく精気漲る描写から、後半のふくよかな造形と陰のある構図までを一気に通観できる展示です。また、広々とした茨城県立美術館の展示室は、とても観やすいです。

Posted by mizdesign at 2009年02月11日 23:57
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