2009年02月07日
●生活と芸術-アーツ&クラフツ展@東京都美術館
東京都美術館で開催中の「生活と芸術-アーツ&クラフツ展」を観ました。副題は「ウィリアムモリスから民芸まで」。産業革命に端を発する工業化大量生産品の横溢に異を唱え、手仕事による芸術と生活の復興を目指す「アーツ&クラフツ運動」。その軌跡を、発祥地イギリスからヨーロッパ各国への伝播、さらには日本への影響までも含めて辿ります。ヴィクトリア&アルバート美術館との共同企画で、美しい工芸品が多数並びます。
I イギリス/Britain
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ「聖ゲオルギウス伝ステンドグラス」。ロセッティの甘美な画面と、黒い輪郭線と光面の美しい色彩のコントラストが奏でるドラゴン退治の物語。
ケイト・フォークナー「皿 スター・フラワー」。無地陶器に手描き!で描かれたツブツブ、小花、中花。
ウィリアム・モリス「壁紙見本 「果実」あるいは「柘榴」」。果実の点描のトーン、枝の線描、葉の彩色が奏でるポップな世界。
ウィリアム・モリス「内装用ファブリック 「いちご泥棒」」。イチゴをついばむ小鳥たちがとても可愛い。タイトルも可愛い。
ウィリアム・モリス「別珍プリントの見本帳」。魅力がギッシリ詰まったサンプル帳。購買意欲を刺激する!
展示は2階に続きます。
アレクサンダー・フィッシャー「燭台 「孔雀」」。金地に透明感ある青と緑。蝋燭の光に浮かぶであろう、艶かしい世界。
エドワード・バーン=ジョーンズ「原画 「生命の木」」。うねる幹と稲、繁茂を極める金の縁取りの葉。生活というより、王侯貴族のための豪華品という感じに変わってきた。
リンゼイ・P・バターフィールド「原画 染織図案「林檎」」。逆さまリンゴが白抜きのふちどりで可愛い。
チャールズ・レニー・マッキントッシュ「酒宴」。2人1組で図案化された構成が美しい。
フィービー・アンナ・トラケア「聖餐杯 「天使」」。アワビ貝殻をそのまま使う大胆さ。
ウィリアム・ハウソン・テイラー「壺」。イチゴを思わせる赤。
クリストファー・ウォール「ステンドグラス 「聖アグネス」」。モノトーン基調にグレーの陰影が美しい。わずかに用いられる緑、青、黄色の色彩も効果的。墨絵のようなステンドグラス。
J.&W.ベガースタッフ兄弟[ウィリアム・ニコルソン、ジェイムズ・プライド]「ポスター原画 「ハムレット」」。黒衣の人物が白いどくろを手に持つ。中心軸を意識した横向き構図が効果的。
M.H.ベイリー・スコット「ピアノ 「マンクスマン」」。表面は中心に小さく装飾、裏面は全面に装飾。その対比が、扉を開くことで空間が変化する様を予感させる。
II ヨーロッパ/Europe
ヨーロッパ編はウィーン分離派から始まります。
ウィーン工房の封筒、はがき。シャープでカッコイイ。
ヨーゼフ・ホフマン「テーブル・クロス」。直線的な構成の中、ソロバンの珠のような円形、矢印のような三角形端部が楽しげ。
続いてドイツ工作連盟。
ペーター・ベーレンス「蓋物」。ベーレンスらしい重量感。同「電気湯沸かし器」。角々した面取り。彼の事務所からグロピウスが登場し、バウハウスへと話は続くが、それはまた別の話。
III 日本/Japan
「鉄瓶」。黒い質感が鋳造!という感じでとても魅力的。
「泥絵 富士登山参詣曼荼羅」。泥絵は初見。日本民藝館に行ってこよう。
「塩釉ビールマグ」。ビールが美味しそう!
バーナード・リーチ「ガレナ釉筒描ペリカン図大皿」。ユーモアと大胆さ。伝統を受け継ぎ、新しく創造するバランスが秀逸。
バーナード・リーチ「楽焼皿 兔」。耳が長いと同時に、胴が長く、手足が細いプロポーション。霊獣を描いた?
富本憲吉「白磁八角蓋付壺」。ひたすら美しい。
圧巻は「三国荘」の再現セット。工芸品に囲まれた暮らしは垂涎の的。同時に、資産家の余興と思わせられる。
「工芸品で辿る、アーツ&クラフツの歴史」として、観て楽しいです。同時に、「生活と芸術」というフレーズは縁遠く感じられます。手間を考えれば当然かもしれませんが、王侯貴族及び資産家の余興という側面も強く感じます。「歴史に影響を及ぼす思想」、あるいは「ブランド化したキーワード」という点に価値があるのでしょう。日本の部には大山崎山荘美術館所蔵品が多数出展され、あの建物自体が「地中の宝石箱」を含めて時代を体現していると思いました。
美術館2階のレストラン「ラ・ミューズ」でお昼。「アーツ&クラフツ展」特別メニューを頼んでみました。
ハンバーグと海老、パン(orライス)、スープ、コーヒー(or紅茶)、デザートで2,000円也。どこがアーツ&クラフツかはよく分かりませんでしたが、眺めも良く満足感があります。東京都関連の美術館(現美とか)の会員の方は、5%割引があるそうです。
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