2009年01月31日
●特別展「妙心寺」(前期)@東京国立博物館
上野の東京国立博物館平成館で開催中の特別展「妙心寺」を観ました。
第2章:妙心寺の開創-花園法皇の帰依-
「花園法皇坐像」。数珠を握る左手に躍動感。不敵な容貌は獰猛な肉食動物を思わせる。
「山水楼閣人物図螺鈿引戸」。美しい螺鈿細工。
第4章:禅の空間1-唐絵と中世水墨画-
「菊唐草文玳瑁螺鈿合子」。金銀オレンジの色彩豊富で細やかな細工。
「瀟湘八景図」狩野元信筆。一枚目、迫り出す山とその中腹にある山村。二枚目、深山の奥の寺院と川の流れ。三枚目、モコモコした山と水辺の人物。四枚目、吹雪く雪山。どれも上手い。4枚しか出てませんが、あと4枚あるのでしょうか?
「梵鐘」。飛鳥時代の名鐘。とはいえ鐘。ゴーン。
第6章:妙心寺と大檀越-繁栄の礎-
「快川紹喜像」。龍、菊紋、牡丹(?)等の豊かな色彩と微細な紋で埋め尽くされた衣装。「「心頭滅却すれば火も自ずから涼し」と辞世の句を残して入寂」という解説を読んでビックリ。僧というより戦国武将のようなエピソード。
「豊臣棄丸坐像」、「小型武具」、「玩具船」。頭ちっちゃい坐像、赤ちゃん用武具に豪華なオモチャ。秀吉の愛情と落胆が伝わる品々。
「福島正則像」曾我蕭白筆。眼をギロリと見開き、口をへの字に結ぶ。こんな絵を描いてモデルの機嫌を損ねたりしないのだろうか。
「細川昭元婦人像」。面長の美人。赤白水平ストライプ+金地に草花+白帯の衣装が綺麗。
「春日局坐像」。白顔に窪んだ眼窩、凛とした姿勢。怖い。
「瑠璃天蓋」。白、緑、黄のコントラスト。照明が効果的。
第7章:近世の禅風-白隠登場-
「雲居希膺墨蹟 法語」。踊る墨蹟、水清月現心浄佛現。読み易い!
「自画像」白隠慧鶴筆。大きく開いた眼にM字口。
「大吽一声」して世を去ったというエピソード。
「達磨像」。逆S字の大胆さ。
「鼠師槌子図」。可愛い。赤ら顔の鍾馗(?)、笑っちゃうほど頭の長い老人、鼠がウロウロ、天女も舞う。可愛く楽しい。
「白隠慧鶴墨蹟 寿字円頓章」。
「寿」曼荼羅。「寿」の軍団が押し寄せる分かり易さ。
「白隠慧鶴墨蹟 偈」。常念観世音菩薩のながーい常の縦線。
第8章:禅の空間2-近世障屏画のかがやき-
「四季花鳥図 霊雲院方丈障壁画のうち」狩野元信筆。羽を広げ尾羽を捻る小鳥、首を折り畳む鶴。ユニークな描画。
「楼閣人物螺鈿座屏」伊勢屋直七作。波の円弧状細線、岩の細長ストライプパターンなど、職人芸の極みのような微小細工。人物は分割せずに大面のまま螺鈿貼付して対比させる。
「枯木猿候図」長谷川等伯筆。枝、蔓の線描、猿のフサフサ体毛。
「龍虎図屏風」狩野山楽筆。大胆な斜め線と同心円の空、雲の合間から頭を出す龍の大きな眼、うねる幹。右斜め上を見上げる虎、縞模様に細筆で描かれた毛並。風が吹き荒れ雷鳴轟く豪壮かつ雄大な描画は、永徳の後継者の面目躍如!
「老梅図襖 旧天祥院障壁画」狩野山雪筆。巨樹が天を衝き、地を這い、画面狭しとのたうち回る。伝統という基盤をぶち抜くが如く突き出る木々、枝々。
驚くべき禅師の行動力、厚い帰依、江戸絵画の奇才の腕の冴え。そして素朴画のチャンピオン、白隠。ただの寺宝公開に留まらない、幅の広さと面白さ!前半を飛ばし気味に観ても、軽く2時間はかかります。
東博本館で「異端(踏絵)」小林古径筆、「形見の直垂(虫干図)」川村清雄筆を駆け足で観てお昼へ。
レストラン ラコールでお昼。ラコール風 牛鍋セット。熱々の鍋に、甘いシロップのかかったカステラが美味しかったです。
2009年01月30日
●加山又造展@国立新美術館
エントランス
「雪」の貼紙細工、「月」の銀の波紋、「花」の焚火の火に染まる夜桜。巨大な三部作で開演。
第1章 動物たち、あるいは生きる悲しみ-様式化の試み
「悲しき猫」。平面的な木彫り表現。
「冬」。肉を削ぎ、紙が残る。絵というよりも工芸のよう。
「木枯」。赤味かかった金世界。茫漠とした寂寥感。
「キリン」。足を大きく開いて首を下げる意欲的なポーズ。鋭面で構成された彫刻。
第2章 時間と空間を超えて-無限の宇宙を求めて
「春秋波濤」。天地創造、山となって隆起する世界。
「七夕屏風」。引き裂かれる世界、砕ける画面。銀の波、金地の笹。
「千羽鶴」。別世界より飛来する金色の鶴が、銀世界の空を舞う。白くしぶく波頭。
第4章 花鳥画の世界-「いのち」のかたち
「牡丹」。巨大な黒と白に紫の花の饗宴。グロの一歩手前。花の形をした巨大な妄想、すごい!
「夜桜」。焔に浮かぶ桜の花、異様に太い幹。息を呑む美しさ。
第5章 水墨画-色彩を超えた「色」
「水墨山水画」。霧に霞む松、ドドドと轟音を立てる巨大な滝。
「月光波濤」。暗夜に輝く月と砕ける波濤。SF的。
「龍図」。子犬のような愛嬌のある龍。
「倣北宋水墨山水雪景」。白地絞り物のような岩山。
第6章 生活の中に生きる「美」
「銀色摺箔波文振袖」。着物であることすら忘れるほどの、強力な波紋構成美。
冒頭の巨大な三部作から観る者を圧倒し、そのハイテンションのまま会場を駆け抜ける一気呵成な構成は驚きです。新美のだだっ広い空間を狭いと思わせるほどの密度と巨大さは、観る価値十二分にあります。
2009年01月26日
●DOMANI・明日展2008@国立新美術館
国立新美術館で開催された「未来を担う美術家たち DOMANI・明日展2008 文化庁芸術家在外研修の成果」を観ました。
入館すると、中井貞次「桂林の月」が目に入ります。暗色トーンと夜空に輝く月が美しいと近づくと、なんと染色での表現!「樹座」の根が座っているような表現、「狼煙台」の膨らみがあり人間味を感じさせる形態。この展示はあたりかもと期待が膨らみます。
続いて田中新太郎「MIARACLE(奇跡)」。そそり立つ上すぼみの鉄塔、その中心軸のスリットが緊張感を醸しだします。鉄、ガラス、石を並ぶ、素材感豊富な展示もバランスが良いです。山本富章「Delta6」、「円筒状に-12の月」。白壁に唐突に突き出たマーブル模様の円筒形群。異様な存在感。ヒグマ春夫「DIFFERENCE 2008」。何層にも吊るされた布を透過して、何層にも渡って映像が映し出される。層化される奥行。
だんだんインパクトがなくなってきて、バラツキが大きいと思ったところで、駒形克哉の小部屋が登場。スポットライトをミラーボールに当てて光を乱反射させ、無数の小さな光が白い壁面を乱舞します。巨大走馬灯のような空間の中に配置された黄金切り紙細工の数々はとても幻想的。「スコラ宇宙の回転」。平面バブル紋の金紙細工、黒地に紛れる虫たち。「生命の樹(金の生る木)」。硬貨を箔押しした文字通り、金の成る木。円紋の分布がポップコーンを炊き上げるようで上昇感を感じさせる。
菱山裕子「空飛ぶ男」。スチールフレームにアルミメッシュを巻いて造形された巨大男が空を飛んでいます!面長で表情豊かな顔、デフォルメの効いた体、手先まで力が感じられるポーズ。その巨大で軽やかで魅力溢れる存在感は圧倒的。
全体としては非常にバラツキがあり、構成に難ありな展示に思えました。しかし「空飛ぶ男」の圧倒的な存在感だけでも、観る価値のある展示だったと思います。
2009年01月25日
●第57回 勝田全国マラソン
マラソンシーズンも後半戦。晴天に恵まれた青空の下、「第57回 勝田全国マラソン」を走りました。柏から電車で2時間弱の旅、水戸を越えてさらに一駅。こんなに遠方でどれほどの参加者が?と思いきや、場内放送で「参加者が1万5千人」というアナウンスが聞こえてビックリ。10kmも含めてなので、フルマラソンエントリーは8千人弱だそうです。東京マラソンが3万人というから、その半分の規模。場内はそれほどの混雑も感じず、受付、着替え、荷物預け、トイレともスムーズ。
今回の目標は、先日の「第28回 つくばマラソン」を踏まえて3時間30分。あわよくば、ボストンマラソンの出場資格が得られる3時間20分を目指します。失速区間を最短に抑えることがポイント。号砲とともにスタート。スタートゲートを通過するまで1分30秒、比較的スムーズなスタート。コースはスタート直後こそ混雑しますが、すぐ4車線の大通りを全面通行止めにしたコースの出るので走りやすいです。コース上に途中タイムを示す時計等が全くないので、普段のランニングペースを若干抑えるイメージで走ります。気持ち的に4分40秒/kmくらいな感じ。
晴天に恵まれたものの、気温は12時時点で8℃。寒さで手足がかじかんで、バナナが上手く取れなかったり、足がつりそうになったり。防寒対策も必要だなあと思いつつ後半戦。沿道のエイドステーションは水+スポーツドリンク、スポンジがオフィシャルっぽいですが、それ以外にもバナナ、チョコレート、レモンなどなど豊富。プチシュークリームは甘くて美味しかった。声援も多く、顔がほころびます。30kmを過ぎたところで、2時間20分!という声が聞こえる。残り12kmで1時間、5分/kmで3時間20分!と気合を入れる。少しして、沿道に置かれたラジオからゴール!の声。「もうゴールかよー、はえー」と思いつつ、レースは続く。後半は緩やかな起伏が続きますが、下り坂を一気に加速して前に出る選手がいて、そのレース運びに感心。テレビ中継のようだ。徐々に重くなる足にペースダウンが実感できるようになった頃に、残り7kmの表示。普段のランニングコースが7kmなので、コースを頭に描きながらあと少しと言い聞かせる。残り3kmで完全に失速。続々抜かれながらも、なんとかゴール!
記録は3時間25分35秒、スタートタイムを補正すると3時間24分4秒!自己記録を14分ほど短縮して、順位も3桁台(971位)に。とても嬉しいです!その一方で、3時間20分には届かなかったことと、後半あと少しで失速したことが残念。ベースタイムで走りきるには、あと少し準備が足りなかった。4分40秒/kmで走りきれば3時間17分ということからも、3時間20分が次の目標になります。
交通規制、場内案内、シャトルバスの運営、エイドステーションなどなど。多くの方々の支えで運営されていることを実感しました。どうもありがとうございました。
2009年01月24日
●日本の春 -華やぎと侘び-@畠山記念館
畠山記念館で開催中の平成二十一年冬季展「日本の春 -華やぎと侘び-」を観ました。チラシに紹介されている「銹絵富士山香炉」(野々村仁清作)の写真に「何だこれは?」と興味が湧き、楽しみにしていました。
畳展示スペースに展示されている「銹絵富士山香炉」(野々村仁清作)が本展の見所の一つ。富士山の容姿(?)を再現しようとした朝・昼・暮の三態が並びます。その巨大ハマグリのようなユニークな形態と、意外と大きなサイズに目が釘付け。山の後ろに三つ穴があり、そこから煙が立ち昇るさまはどんな感じでしょうか。また中身は一つしかないので、時間の経過と共に上物を取り替えるでしょう。なんとも好奇心をかきたてる香炉です。その背後に掛けられた「山水図」伝夏珪筆も、大き目の紙面に力強い筆致で描かれており、素晴らしい存在感。
そしてもう一つの見所が「赤楽茶碗 銘 雪峯」本阿弥光悦作。赤地に白釉をなだらかにかけた色彩、割れ目に金粉を流し込んだ意匠は見事の一言。割れ目は梅の枝のようにも見えて、偶然か作為か知る由もありませんが、稀代の名プロデューサーの成せる業と見惚れるばかり。
「銹絵染付笹紋茶碗」尾形乾山作など、他にも見所目白押しです。決して広くはありませんが、見所がキュッと詰まった密度の高い展示です。次回展は「開館四十五周年記念 畠山コレクション名品展」だそうで、こちらも今から楽しみです。
2009年01月22日
●杉浦慶太「森 -Dark Forest-」@CASHI°
馬喰町のCASHI°で開催中の杉浦慶太「森 -Dark Forest-」を観ました。ギャラリーはガラス面を介して通りにつながっており、外に対して大きく開いています。お隣のラディウムと対照的なアプローチ。
遠目に観ると、白壁に黒いマット紙が並びます。光の加減で紋様のようなものが浮かび上がり、興味をそそられつつ近づきます。そこに浮かび上がるのは、漆黒の闇の中の広大な森。シンプルな平板に塗り込められた世界の奥深さは、ちょっと類例が思い浮かばない独特な世界。確かに存在するのだけれども、その全貌を見渡せないもどかしさと期待感。とても興味を惹かれる展示です。
●内海聖史「十方視野」@ラディウムーレントゲンヴェルケ
馬喰町のラディウムーレントゲンヴェルケで開催中の内海聖史「十方視野」を観ました。
去年観た「風景ルルル」出展作を、ギャラリースペースにあわせて再構成した展示です。前回はコの字型のガラスショーケースに上下から光を当て、影をぼかして壁面とカンバスの余白を一体化するようなセッティングでした。今回は2層に渡る空間の壁面に作品を直付けし、天井に白熱電球を露出させます。点光源の指向性が強い影となって現れ、赤味かかった光がカンバスの白と壁の白を差別化します。また階段がある分、空間に線が増えます。例えて言うと、前者が「お澄まし展示」、後者が「アットホーム展示」。場が変わると、作品が作り出す世界も変わるところが面白いところです。
じっと見ているとそんな差異は意識から消えて、絵自体の強さと連作の美に没入してゆきます。青、緑、赤。それらのドットの大きさ、密度を通して距離感が生まれ、その先に様々な風景が見えてきます。そしてそれらが並ぶことで動きが生まれ、風景が変化し始めます。同じ空間を体験しても、その先に見るイメージは人によって違う。その誘発装置として、とても優れた展示だと思います。
実のところ、「とっつきやすい事がアートワークとして優れていること」になるかは分からないです。また「絵画を空間もしくは体験として捉えること」も同様。ただ、こういったことを考えることは大切だと思います。
2009年01月21日
●アンテナ「トコ世ノシロウツシ」@TSCA
柏のTSCAで開催中のアンテナ「トコ世ノシロウツシ」展を観ました。フィクションの世界「ヤマトピア」が現実世界に現出し、そのメインキャラクター「ジャッピー」が所狭しと大活躍!簡単に言うと、アンテナ版ディズニーランド。
入ってすぐの吹抜けには、ヤマトピアの通貨が貼り込まれた直方体ブロックを積み上げた巨大なタワーが聳えます。そして2階に上がると、天井から吊られた巨大な格子組物群が出現!その巨大感と隅々に施されたジャッピー装飾が醸しだす存在感で、「現世(ウツシ)が反転した世界」へ一気にトリップ。先に進むと、渋谷、大阪といった現実の都市のジャッピー観光記がスライドで映写され、各種オブジェ、掛軸などジャッピーグッズ(?)が並びます。
フィクション系の展示は観客を飲み込めるかが勝負ですが、本展はそのスケールと密度で観る者を圧倒します。広いスペースを埋め尽くすパワーは一見の価値あり。
●ピカソとクレーの生きた時代@Bunkamura ザ・ミュージアム
Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「20世紀のはじまり ピカソとクレーの生きた時代」展を観ました。副題は「ドイツ、ノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館所蔵」展。所蔵元美術館が改修に伴う休館を期に、そのコレクションを日本で公開。
第1章 表現主義傾向の展開
冒頭にアンリ・マティス「午後の休息(サン=トロペ湾)」。暖かなタッチ。
アウグスト・マッケ「フリブール大聖堂、スイス」。赤い旗が印象的。
第2章 キュビスム的傾向の展開
パブロ・ピカソ「瓶とグラスのある静物」。構成美。
ジョルジュ・モランディ「静物(青い瓶)」。落ち着いた水彩画。
ピカソは顔見世程度だけれども、見応えあり。
第3章 シュルレアリスム的傾向の展開
三枚続くマグリットがどれも未見で面白い。
ルネ・マグリット「庶民的なパノラマ」。何層もの殻を縦に積む構図が新鮮。
マン・レイ「詩人、ダヴィデ王」。ジョジョの元ネタかと思った。
ジョアン・ミロ「リズミカルな人々」。なんとも不思議な形態と色彩。
第4章 カンディンスキーとクレーの展開
ヴァリシー・カンディンスキーの抽象画が3枚続く。どれも魅力的で、一気にテンションが上がります。
ヴァリシー・カンディンスキー「エドウィン・R・キャンベルの壁画No.3のための習作」。線と色彩が魅力的、絵に力がある。
ロベール・ドローネー「窓」。セザンヌを思わせる透明感。
クライマックスはパウル・クレー。線と色彩で構成された、物語性を感じさせる画風はとても魅力的。
「リズミカルな森のラクダ」。ギリギリ原形を保ちつつ、色彩の森を往くラクダ。
「矩形と半円」。微細に分割された色面の上に、矩形と半円の淡色トーン掛け。シワシワの紙のような温かみ。
「婦人と流行」。線がうねり、人が踊り、街の雑踏が聞こえてきそう。
前半のピカソ、後半のクレー。見所がちゃんとあって面白かったです。
2009年01月20日
●小林古径展@佐野美術館
青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その10。
三島で下車して最後の目的地、佐野美術館を目指します。電車(伊豆箱根鉄道)でもバス(沼津登山東海バス)でも行けますが、駅南口を出ると丁度バスが停まっていたので飛び乗りました。寒いので、屋外での待ち時間を極力避ける狙い。
回遊式庭園「隆泉苑」を眺めながらアプローチ、高まる期待!と思ったら、素っ気ない四角い箱が登場してガッカリ。「いのちを線に描く- 日本画家 小林古径」展を観ました。
展示は初期のものから。
15歳作「少女」、16歳作「村上義光」と非常に早熟な才能が感じられます。
「竹取物語」は複製ながら、天女の大群が描かれた巻が美しい。
「琴」。チラシ表紙になっている、本展の華。赤と薄緑の着物が美しい。琴を前に緊張した面持ちの少女は画家の娘さんだそうです。会場には家族との写真も飾られ、家族を愛する古径の視線が感じられます。
「猫」。ヒョウタンに首を載せたような、特徴あるプロポーションの白猫が愛らしい。
「犬と柘榴」。フサフサ毛の犬は、家族写真にも登場する愛犬。
「猫(猫と唐蜀黍)」。白地にたらし込みのような、猫の黒紋。
「菓子」。どこか平面的な、古径流静物画。
「くろ兔」。豆に首を載せたような、不思議なバランス。
展示のある2階ロビーは、ビデオを観る人で満席。展示スペースもけっこうな人の入りで、古径人気のほどがうかがえます。ただ、御舟と並ぶ細密画の美しさに浸りたいと足を伸ばしたので、個人的には少々物足りなかったです。
2009年01月19日
●珠玉のヨーロッパ油彩絵画展@静岡アートギャラリー
青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その9。
名古屋で一泊して、名古屋駅地下の三省堂CAFEで朝食。美味しいコーヒー、駅地下という利便性、購入検討の書籍も持込可というサービス。夢のように便利なお店。東京にも是非!
帰路、静岡アートギャラリーで開催中の「珠玉のヨーロッパ油彩画展―バロック美術から十九世紀へ― 」を観ました。バロックから19世紀までのヨーロッパ絵画をカバーする個人コレクション「長坂コレクション」の巡回展です。
本展の特徴は大きく分けて二つ。一つ目は「伝統的な絵画手法によって描かれた正統派のヨーロッパ絵画」を、宗教画、世俗画、肖像画、風景画、風俗画に分けて紹介するところ。二つ目はルーベンスなどの巨匠周辺や美術アカデミーで技法を学び、それぞれの国の伝統を継承した画家たちの手による作品を集めているところ。その上で「今日のようにいつでも名画を鑑賞できる美術館や展覧会がなかった時代にあって、一般の人々が身近なところで楽しみ、生きる楽しみや喜びを感じたのは、時代を代表する巨匠たちの作品よりむしろその周辺で活動した作家たちの作品でした」と解説文は結びます。当時の売れ線作品を集めることで、当時の人々の視線、価値観が浮かび上がる展示は、なかなか見せます。章分けも明快で分かり易いです。A3用紙二つ折り、全8ページに及ぶ解説シートも親切。ただ照明が悪く、絵に光の反射や影が落ちるのはマイナス。
1 宗教画
ヘンドリック・ヴァン・バレン「紅海をわたるモーセ」。金の亡者を大きく、モーセを背景に描く。さらに奥に死せるエジプト軍。
ペーテル・ヴァン・リント「サロメ」。凄絶なシーン。
ダニエル・ザイター「キリストと姦婦」。キリストの赤い服に青いマント、女の黄色の衣装。
3 肖像画
ジョルジュ・ルフェーヴル「青いストッキングをはいた女流詩人」。黒を背景に横たわる、鮮烈なピンクのドレスと青いストッキングの女性。強い自己アピール。「ブルー・ストッキング」は18世紀半ばのロンドンの文学好きの社交婦人の間で流行し、そこから教養ある文学好きな女性を指す言葉となったそうです。平塚雷鳥を中心に結社された「青鞜社」はこれに由来。
ピョートル・クリロフ「赤い椅子に座る女性の肖像」。赤いソファに腰掛けた黒いドレスの女性。とても知的。
ルイ・ビルー「裸婦」。見られることを意識したポーズと赤いシーツ。
4 風景画
ロベルト・ナドラー「ヴェネツィア」。ピンクに染まる夕暮れ、ゴンドラの並ぶ運河。観光地の絵葉書。
アルフレッド・ゴトショー「ラ・ロシェルの港」。海から港を望む構図。青空、小船が動きを感じさせる。
ルートヴィヒ・ムンテ「収穫」。暗い右手前から明るい左奥への視線の誘導。空は反対に明から暗に変化してバランスをとる。
5 風俗画
ラインハルト・セバスチャン・ツィンマーマン「画廊のルートヴィヒ2世」。窓から射す光、図面をチェックする愛好家。
フィリップ・リンド「窓辺の子供達」。お澄ましした記念写真。富裕層の生活の楽しみを描く、受け入れられやすい画題。
ヴィルヘルム・アンベルク「教会のグレートヒェン」。オルガンに聴き入る女性。白無垢のコスプレが効果を高める。
エドウィン・トマス・ロバーツ「街頭の子供たち」。光に対する影。「ミュージカルの一場面を見るよう」と解説にあり。大衆受けを意識した視点。
ニコライ・アンドレヴィッチ・コシェーレフ「脱穀場の子供たち」。藁の山の前で、ポストカードのようにポーズをとる子供たち。「農民画」という商品。
フランチェスコ・パオロ・ディオダーティ「カプリ島の小さな中庭」。強い日差しと白壁、生活感。エキゾチックな絵。
時代を開く巨匠の作品と平行して、確かに息づく庶民の楽しみとしての絵画。その画題の変遷を辿りつつ、当時を俯瞰する視線。構成と解説が充実していて、思った以上に見応えがありました。
2009年01月18日
●狩野派と近世絵画(後期)@承天閣美術館
青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その8。
樂美術館から今出川に戻り、「フルーツ&フルーツパーラー ヤオイソ 烏丸店」で果物尽くしのお昼。煩悩を満たして、承天閣美術館へ。「狩野派と近世絵画(後期) ~爛漫と枯淡と~」を観ました。併催は「名碗三十撰(後期)」。
第一展示室
「赤樂茶碗 加賀」本阿弥光悦造。切り立つ立面、厚みのある飲み口は木の切り株のよう。赤地に濃茶の縦線模様が山水画のようで、稀代の名プロデューサー光悦の甘美な世界に酔います。
展示室の壁面には、「列祖像 三十幅」狩野派筆がズラリと取り巻きます。等身大サイズの禅師の大群に、ちょっと気後れします。
第二展示室
「中商山四皓 左右山水図」狩野元信筆。商山に篭った四仙人を中心とした見事な三幅対。仙人の服の輪郭を波打つように描く描写が特徴的。木々、岩山の描き分け、グレーの濃淡使い分けが見事。先日東博で観た「商山四皓竹林七賢図屏風」伝狩野元信筆は、この絵の拡大コピーに見える。それが伝有無の差?
「百猿図」山本探山筆。ユーモア一杯に描かれる、猿のなる木!
「花下遊楽図屏風」。左に酒宴、右に各種娯楽に興じる人々を円状構図に収め、下部の水平画面に駕籠等の往来の人々を描く。
「詩歌図巻」狩野光信筆。バラバラになった「詩」「歌」のパーツを組み立てる、国芳のようなセンス、解説によると、おそらく町狩野作とのこと。
「蔦の細道図屏風」俵屋宗達筆。対決展以来の再会。道=空間の裂け目から、葉と蔓が覗くようにも見える。立体的な構成、図案。左上がりに拡大し、消失する空間。
「不動明王像」。赤みを帯びた眼が怖い。
「御室焼色絵桐波文茶碗」野々村仁清造、箱書金森宗和。綺麗で抑制の効いた文様美。
狩野派を軸に、承天閣が誇る茶碗、若冲、屏風絵等の収蔵品を交えて見せる展示。さすがと思わせる内容。次回展は「相国寺・金閣・銀閣名宝展 -パリからの帰国-」。プチパレ美術館で開催された展覧会の里帰り開催のようです。「毘沙門天図」雪舟等楊筆、「牡丹孔雀図」円山応挙筆が登場します。
最後は和風甘味をと考えて、紫野和久傳 堺町店へと足を伸ばしました。ちょっとノンビリしすぎて京都駅での乗り継ぎがピンチになりましたが、なんとか駆け込んで京都を後にしました。
2009年01月17日
●樂歴代 花のかんばせ@樂美術館
青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その7。
やってきました樂美術館。「樂歴代 花のかんばせ とりどりの花の意匠をあつめて」を観ました。
1階展示室の中央に「二代常慶作 菊文赤樂茶碗」。菊紋が可愛らしい、色鮮やかな赤茶碗。その周りを歴代樂茶碗が並びます。
2階展示室奥に「田中宗慶作 香炉釉菊文阿古陀形水指」。首元をキュッと絞った優美なシルエット、クリーム地に無数の灰色のヒビワレ線が走る色味、華やかな菊紋。チラシだと巾着みたいで可愛らしいですが、実物はけっこう大きく貫禄があります。
「手にふれる樂茶碗鑑賞会」
毎月第一土曜・日曜日、一日四回開催されます。事前に電話で予約して、入館時に費用2,000円(入館料込み)を払います。今回の参加者は9名。定刻になるとロビーに集合して、茶室へと案内されます。打ち水された飛び石が美しい。躙口から上がると中はほの暗く、濃密な空間。学芸員の方が道具を並べ、簡単に解説。順番に間近に道具を観て、隣接した少し広い間に移動します。
そして「手でふれる鑑賞会」。今回登場するのは「七代長入作 若松檜赤樂茶碗」、「十代旦入作 吸江斎好島台茶碗」。後者は九代了入作の島代茶碗とセットでの登場、碗見込みに金銀箔を塗り、九代作の中に十代作を重ねて使う、正月に相応しい華やかな組み合わせ。
御茶碗を観るときは高く持ち上げず、隣の人に渡すときは手渡しでなく一度畳において渡す、指輪等のアクセサリーは外すといった取り扱いの注意を受けて、七代作から順に鑑賞。触ってみると、適度な湿り気と暖かさにビックリ。一瞬人肌を触っている気がしました。学芸員の方いわく、呈茶と同じ感覚を味わってもらうために碗をお湯で温めてあるとのこと。畳に顔を近づけて碗側面に描かれた若松、裏返して高台の形状や「樂」印を眺めてみる。茶を飲むつもりで両手で包み込むように持つと、七代作のやや大ぶりで荒々しい箆遣い、十代作の小ぶりな作り(幼い吸江斎(表千家十代目)の手に合うように作られた)が感じられる。障子越しに射す光の加減でも色合いが随分と異なる。
参加者は素人の方とお茶を嗜んでいる方が半々くらい。土探しも歴代の仕事のうちで、二代先のために土を探す。赤楽の土は大きく変わり、以前の鮮やかな色はもう出せないとか。行き交う専門的な話をBGMに、雰囲気を楽しんだ。手に取ることで、美術品から実用品へと楽しみ方が変わることが何より良かった。
2009年01月16日
●琳派展XI 花の協奏曲@細見美術館
青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その6。
宿は蹴上近くにとりました。昨日までのハードスケジュールから一転して、まったりと迎える朝。散策路には、紅葉を敷き詰めた手水鉢、映り込む空。
客室からは京都市街が望めます。中ほどの緑地が岡崎公園。平安神宮の赤い鳥居、左手に京都国立近代美術館、右手に京都市美術館。その向こうの緑地が京都御所。
ゆっくりと朝ごはんを食べて、チェックアウト。歩いて岡崎公園へ。鳥居周辺には大量の消防車が集まり、空にはヘリの爆音が響いてビックリ。京都市消防出初式だそうです。午後からは全国都道府県対抗女子駅伝が開催されるので、その交通規制もあり、なんとも慌しい。身動きできないほどの人出をかきわけて、京都市美術館、京都市美術館別館を経て細見美術館へ。「琳派展XI 花の協奏曲」を観ました。
冒頭に伊年印「四季草花図屏風」が登場して期待感を高めます。王朝文化への憧れを叶える俵屋の意匠は素晴らしい!その後酒井抱一、鈴木其一も登場しますが、去年の東博「大琳派展」、MOA「所蔵琳派展」と比べると精彩を欠くように思えます。むしろ本阿弥光甫「梅に鶯図」のニョロリと縦長に伸びる枝、中村芳中「白梅小禽図屏風」のお絵かきのような小鳥といった、少しヘタウマ要素が入った作品が目に付きます。世の中傑作だけが存在するわけがなく、その真似、似ても似つかないけれど愛に溢れる作品等が大量に流通してこそ、幅広い愛好層の需要に答えるわけだよなあと、妙に納得。酒井道一、鈴木守一といった名前からして、その念が感じられます。琳派の裾野の広さを感じる展示でした。
2009年01月15日
●浮世絵 ベルギーロイヤルコレクション展@京都髙島屋
青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その5。
といっても、この区間は18切符の出番なし。京博から七条駅まで歩いて、京阪電車で祇園四条駅、さらに歩いて河原町四条まで移動。虎屋菓寮であんみつを食べて一服。
甘味でエネルギーを補給して、再度寒風吹きすさぶ街へ。100mほど移動して、京都髙島屋到着。「浮世絵 ベルギーロイヤルコレクション展」を観ました。20時までやってるから(しかも18時以降はトワイライト割引で半額)という軽い理由だったのですが、観てビックリ。太田記念美術館で観た時と展示がゴッソリ入れ替わっています。太田の目玉だった歌川国貞「大当狂言之内 菅丞相」が引っ込む代わりに、春信、歌麿を始め、状態の良い物ばかりがズラリと並びます。国貞も別の役者絵が出展されています。作品リストが用意されていないため確認できませんが、過半数が重複するのは写楽くらいでは?確認方法は図録を購入して、巻末(?)の作品リストと首っ引きで出展作をチェックするのみ。そんな御無体な。。。
冒頭の春信の浮世絵の状態の良さに驚き、歌麿は十二段続き物が2種類フルセットで展示。国芳も出世作「水滸伝」シリーズがズラリと並び、似顔絵のような「荷宝蔵壁のむだ書」は2点、さらに「猫の当字」、人が集まって人型を形作るシリーズ、絵中に字を大きく書き込んだ「忠義は重く命は軽く(うろ覚え)」といったようなタイトルの絵もあります。漫画的センスがユニーク。
この後日本橋高島屋に巡回しますが、展示内容はどうなるのでしょうか。図録収録点数が260点程度だったと思うので、本展とかなり被るのでしょうか?でも、ひょっとして。。。気になります。
●京都御所ゆかりの至宝@京都国立博物館
青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その4。
東京駅から乗り継いだ電車、実に8本!やってきました京都駅。青空に浮かぶ白い雲、映りこむガラス壁が眩しい!
そして市バスで京都国立博物館へ。特別展覧会 御即位二十年記念「京都御所ゆかりの至宝 -蘇る宮廷文化の美-」展を観ました。天皇陛下御即位二十年を寿ぎ、御所ゆかりのお宝をドッカンドッカン大公開!
1章 京都と天皇の遺宝
「正親町天皇像」。立体感薄く描かれた横顔。烏帽子がずれてるように見えて可笑しい。
「羅漢図」狩野孝信筆。保存状態良好な美品、初公開。孝信は永徳の次男であり、本展の主役的存在。
「日月蒔絵硯箱」。金梨地の蓋表に太陽、中には龍が描かれている。解説によると蓋裏には月が描かれているそうな。鏡を置いた展示にしてくれーと思ったら、ホームページに画像が出ていた。でもせっかく実物を見に来たのだから、展示に一工夫欲しい。
「金装三葉葵桐紋蒔絵飾太刀」。金工の極致。鞘を覆う凄まじく精巧な紋様は、人間業とは思えない。柄の鮫革も色味、質感ともに極まってる。あまりに凄くて、以降登場する工芸品が色褪せて見えて困った。
「銹絵木戸文水指 修学院焼」。大胆な紋。
「文琳茶入」。ちっちゃくて可愛い。
2章 桂宮家と桂離宮
「蔦細道蒔絵文台・硯箱」。平面立面共に等しく装飾を施した調度品が大好きです。
「青貝唐絵硯箱」。細かい螺鈿細工。
「青磁楼閣人物文杓立」。立体紋の器。
「桂離宮 引手・釘隠」。花手桶形引手の繊細な作りは、引いたら壊れないか心配なほど。
「源氏物語屏風」狩野探幽筆。探幽は孝信の息子。狩野派の系図がインプットされてゆきます。
3章 宮廷と仏教
「風天・水天像 十二像のうち」。妙にリアルで生々しい仏画。宮中の修法用なので色っぽいのか?微細な紋まで鮮明で、平安時代作とは信じられない状態の良さ。前期は水天、後期は風天。
「孔雀明王像」。こちらもなんだかエロイ。
「黒漆諸尊金銀泥絵八角宝珠箱」。八角形の小箱の側面が外れて、蓋(?)の内側に仏様が描かれている。内箱には泥の宝珠。蓋を広げれば、あっという間に仏様ワールド。携帯性良しなアイデア造形。展示の都合で外しているだけかも。
「普賢菩薩騎象像」。スラリとした美男子菩薩様。糸目のお顔も美しい。お乗りになっている象は、なぜかエロ目。こういう生き物だと思われてたんだろうなあ。
4章 宮廷の装束
「礼服 東山天皇御料」。寸胴の龍の刺繍が可愛い。前期のみの展示。
5章 御所の工芸
1章で観た太刀に圧倒されて、こちらはいまいち。
6章 紫宸殿の荘厳-賢聖障子絵-
ここから障子絵、障壁画がドッカンドッカン続きます。大物ばかりで観るスピードアップ、見応えもアップ。
「賢聖障子絵」狩野孝信筆。紫宸殿を飾った(そして仁和寺に下賜された)障子絵を部屋を囲むように再現展示。正面に獅子と狛犬、左右に32名もの中国賢聖名臣が等身大で並ぶ様は壮観。
7章 御所をかざった障壁画
不要になった旧御殿が門跡寺院などへ下賜される際に、ともにもたらされた障壁画群。
「牡丹麝香猫図襖」伝狩野永徳筆。解説によると、おそらく山楽筆。永徳の弟子にして、その豪壮な画風を継承した京狩野の中心人物。その門人が「奇想の系譜」山雪。妙心寺展の「老梅図襖」が今から楽しみ。話を戻してこの襖。4枚襖の左右端に牡丹と麝香猫を配し、中二枚は金雲が立ち込め、引手周辺は空=余白。そこを引き分けて出現するであろう空間への期待を高める構図。金箔をふんだんに使った絢爛華麗な世界観は、豪壮な画風と相まって桃山絵画の真骨頂。丸々フサフサした麝香猫が可愛らしい。本展イチオシのお気に入り。痛んでいるのが惜しい。
「枇杷雉子図襖」伝狩野永徳筆。こちらは永徳の長男、光信筆らしい。几帳面でちょっとおとなしめな画風。
「楼閣山水図舞良戸貼付」狩野貞信筆。光信の長男、貞信筆。
「特別展示 永徳の後継者たち」というサブタイトルを付けた方が良いと思います。
8章 御所の障屏画
こちらは現役御所・紫宸殿を飾る障壁画群。狩野派に替わり、土佐派が台頭。
全8章からなる展示は怒涛の如し。小規模な作品が密度濃く並ぶ前半は混みますが、障壁画がドッカンドッカンと並ぶ後半はスイスイ。見所多数ですので、時間に余裕を持って観ることをお勧めします。
2009年01月14日
●さて、大山崎 ~山口晃~@大山崎山荘美術館
青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その3。
安土から山崎は各駅停車でちょうど1時間、ようやく京都入り。利休ゆかりの茶室「待庵」がある「妙喜庵」の前を通り、大山崎山荘美術館を目指します。徒歩10分という案内を見て歩き始めたものの、その急坂にちょっと後悔。バスを待つことをお勧めします。趣のある門(トンネル?)を潜り、オーナーである加賀邸を左手に見て溜め息をつきながら、美術館に到着。
「さて、大山崎 ~山口晃~」展
受付を過ぎると本館廊下右手に「大山崎交通乃圖」、左手に三枚の肖像画。前者は山口版「大山崎開発計画」。画面中央を立体交差道路が占め、郊外には大きなガラス開口を持つ住宅が並ぶといった現代的な要素。その一方で川沿いには切妻瓦屋根の日本家屋が並び、道路にも寄棟杮葺屋根が架かってのんびりムード。さらに道行く車両も遊覧車のよう。後者は光秀、秀吉、利休と、大山崎ゆかりの御三方。元絵を意識しつつ、タイトルや小道具でわずかにいじるところが山口さんらしい。
本館山本室。
左壁面中央に「最後の晩餐」。タイトルからすると、天王山の合戦を前にしての明智光秀陣営?先端が飛び出した枠廻りがインテリアと馴染んで良い感じ。
右壁面奥に「野点馬圖」。メカ馬に内蔵された茶道具を取り出して、野点を楽しむ武将とお供。兜及び刀掛け、立体小屏風まで内蔵して準備万端。
室中央のガラスケースには本展に向けてのスケッチが並びます。山口版大山崎開発アイデアスケッチが楽しげ。
その先のパルミラ室へ。
「茶室」メカニカル。伝統的な茶室に仕込まれたメカニカルなギミック。精緻な描写が冴えます。
中央に置かれた山荘模型の敷地断面をカンバスに見立てた「山荘秘密基地」。ウルトラホークが格納されていたのか!本展一番のお気に入り。
2階に上がって一休み。本来ならビールでしょうが、ちょっと寒すぎなのでコーヒーとワインケーキ。壁に飾られた「日本のビール 朝日スーパードライ廿周年記念」でスポンサーをよいしょ!肩が凝らずに楽しい作品。
明るい階段通路を通って新館へ。
地中の宝石箱の中央に展示された「自由研究(柱華道)」と「邸内見立 洛中洛外圖」に見入る。前者は構成自体が見立てで面白い。後者は精緻で美麗な描写と駄洒落のコントラストがひたすら可笑しい。ずいぶんと見入ってしまいました。
練馬区立美術館が壁を埋め尽くす展示(その1、講演会、その2)だとすると、今回は建物に溶け込ませる展示。大和絵から特撮、アニメまで幅広くカバーする山口さんの画風と、新旧共に見所を持つ山荘美術館の空間が上手く融合して、一期一会な世界を作り出しています。作品数はそれほど多くありませんが、期待以上に良かったです。
2009年01月13日
●水の浄土・琵琶湖@安土城考古博物館
青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その2。
京都へ向かう道中、安土城考古博物館に寄り道。特別陳列「水の浄土・琵琶湖 -琵琶湖文化館の収蔵品を中心に-」を観ました。最寄駅は「安土」ですが、新快速停車駅「能登川」と「近江八幡」に挟まれた各停停車駅なので乗り継ぎに注意が必要です。さらに駅からも遠く、バスもなし。晴-雨-雪と激しく天候が変わる寒い日に、「どうしてこんなところに作ったんだ?」と疑問を抱きながら訪問。館内は半分貸切状態。
第1章 水への祈り
「紙本墨画叡山図」曽我蕭白筆。ペン画のような細く綺麗な線で描かれたモコモコした比叡山、湖水際の水田が琵琶湖景観の特徴を表す。上手い絵だと思ったら、蕭白筆。文句なく名作と思える。
「絹本着色猿候図」森狙仙筆。髪の毛の描写が際立つ「狙仙の猿」。猿が摑まる蔓の描写も写実的。
第2章 描かれた水の世界
「紙本墨画淡彩楼閣山水図屏風(右隻)」曽我蕭白筆。「奇想の系譜」に登場した蕭白の代表作!意外なところで遭遇。伝統的な岩山と、線を省略した現代的な建物との対比。セピアトーンを基調に、効果的に用いられる赤と白。赤は手摺、欄間、白は白梅、カーテンなど。左隻も観たい!
「絹本着色山水図」円山応挙筆。写生の応挙の確かな画力。横から伸びるように迫り出す岩山の描き方が印象的。
第3章 豊穣の海
「絹本淡彩鯉遊図」菊池容斎筆。墨の濃淡で描いた鯉。省略することで水の流れを感じさせる。
「金銀象嵌疏菜透彫蟷螂手箱」。透かし紋の中心に鎌を構えるカマキリ。放射状に広がるトウモロコシの紋。
タイトルにあるように、展示は休館中の琵琶湖文化館の所蔵品が中心です。構成は3章+プロローグ、エピローグですが、館内が手狭なため詰め込めるだけ詰め込んだ感じ。思いがけず蕭白の名品に出会えて、掘り出し物の展示でした。それにしても、東京だったら蕭白の作品だけでも人が入りそう。。。
2009年01月12日
●モネ「印象 日の出」展@名古屋市美術館
青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅 その1。
きっかけは大山崎山荘美術館「さて、大山崎 ~山口晃展」。いつ行こうかと考えていた頃に、モネ「印象 日の出」が名古屋に来ていることを知りました。年初めに日の出を観ようと思い立った頃に、今度は樂美術館「樂歴代 花のかんばせ」展のチラシが目に入る。「田中宗慶作 香炉釉菊文阿古陀形水指」の可愛らしい造形に、もう目が釘付け。京都まで行くなら、京都国立博物館「京都御所ゆかりの至宝 -蘇る宮廷文化の美-」展と承天閣美術館「狩野派と近世絵画 後期」展は必須でしょう。ダメ押しに樂美術館「手にふれる樂茶碗観賞会」も申し込んだ。かくして「青春18切符で行く冬の名古屋・京都の旅」と相成りました。
東京を発って7時間弱で名古屋着。真っ先に向かったのは名古屋市美術館。モネ「印象 日の出」展を観ました。
展示はモネを中心に、印象派の画家たちの作品を数点ずつ紹介します。青い仮設壁に作品が並びます。
ブータン「ダウラスの海岸と船」。解説に「空の王者」とある通りの見事な空。
ピサロ「エヌリー街道の眺め」。芝生、木立の緑で画面を大きく覆い、小さく1人の農夫。
シスレー「舟遊び」。小波立つ水辺、大きく描かれた木々と青空。静かで穏やかな時間の流れを感じさせる。
シスレー「サン=マメスのロワン運河」。前作と打って変わってテカテカした画面、生気が感じられる。
そして赤い特設スペースにモネ「印象 日の出」。背面には大きな解説パネル群。揺れる水面に映る日の出。その脇に小舟と人影。離れて観ると、とても自然な描写に感じられます。思ったよりも小さな絵ですが、意外なほど良かった。本展で唯一海外からやってきた作品。
2階に上がってルノワール「パリ郊外、セーヌ川の洗濯船」。ルノワールらしからぬ硬質なタッチ、暗い曇天ながら、生き生きとした人々。
ギヨマン「ロバンソンの散歩」。宝くじに当選して絵に没頭できた幸運な人。
そしてモネの作品が並ぶ。
「海辺の船」。勢いある青空と斜めに傾いた船のコントラスト。
「ヴェルノンの教会の眺め」。穏やかな日差し、さざ波立つ水辺に映る教会。
「チャリング・クロス橋」(メナード美術館)。霧と光を捉えるモネの眼!バラ色のトーン、輝く水面が美しい。
「睡蓮」(個人蔵)。トーンのような水面と蓮。大作のための習作のよう。
ビデオ「水の旅人」。モネの絵のモチーフとなった景色を映像で辿る。エトルタの岩、ポプラ並木、ジヴェルニーの池。実景の中の光を捉える眼、大胆で繊細な絵へと再構成する腕は素晴らしい。全35点と作品数は少な目ながら、見応えあります。特に「印象 日の出」は、さすがの存在感。
常設展 名品コレクションII
エコール・ド・パリ。アメデオ・モディリアーニ「おさげ髪の少女」。ピンクのセーターを着たおさげ髪の可愛らしい少女。こんな絵があったんだ。
岡鹿之助「魚」。点描のようなパステルタッチの描画。海老と魚を盛り、カーテンを引き分けた向こうに海が見える。ユニークな構図。
現代の美術
アンディ・ゴールズワージー「楓の紅葉による色彩線/大内山村」、「割れた小石の線/紀伊長島町」。黄色が混じった紅葉、割れ目のある小石など、少し特徴ある自然物を収集。注意深く並べることで、色彩のグランデーション、連続する線等を浮かび上がらせる。
アニッシュ・カプーア「虚空 No.3」。白壁を背に、漆黒の球が浮いている?間近で観ても不思議。
2009年01月08日
●JAL Honolulu Marathon Virtual Race 2008
昨年末(12/14-23)に開催されたnike+のイベント「JAL Honolulu Marathon Virtual Race 2008」のデジタル完走証が送られてきました。エントリーしたのは10km、参加者数は2,295名。記録は43分40秒で、順位は84位でした。ようやく45分を切りました。参加賞はアバター用デジタルTシャツ。10km参加者は赤、42km参加者は青です。芸が細かい。
今回のペースだと平均4分22秒/kmとなり、ハーフマラソン換算でおよそ1時間31分50秒となります。1時間30分を切るには5.25秒/kmほどのペースアップが必要です。因みにトップの方のタイムは32分、平均3分12秒/km!はええー。
もう一つ参考データを挙げると、この前の手賀沼エコマラソンの私のネットタイム(スタートゲートをくぐってからゴールに至るまでのタイム)は1時間32分12秒でした。今回の換算タイムとの差はわずか22秒ほど。ハーフマラソンに関しては持久力は十分、ベースタイムの底上げが課題となっています。言うは易し、行なうは難し。。。
●ランドスケープ 柴田敏雄展@東京都写真美術館
東京都写真美術館で開催中の「ランドスケープ 柴田敏雄展」を観ました。メインビジュアルの、赤い鉄骨フレームと背景の霧に霞む緑の対比が印象的です。
展示は近作である「color」から「night」の小部屋を挟み、旧作「B&W」の順。
「color」
「青森県黒石市」。抽象絵画のような構成。
「高知県土佐郡大川村」。橋を抱え込む朱の鉄骨フレームが鳥居のよう。霧に霞む深山に淡い影を落とす。
「岩手県和賀郡西和賀町」。ダイナミックなコンクリートの造形と同時に、足場や作業員といった細々としたディテールを捉える構成。
「福島県福島市飯坂町」。2種類の緑と白地。
「愛媛県松山市」。段々の先に放水のアクセント、RCの滑らかな面と凸凹面の対比。
「愛媛県今治市」。枯色に溶け込むコンクリートの護岸。
「茨城県日立市十王町」。泥の濁流が描く絵画。
「night」
夜、そして高速道路。人影がないけれども活動している世界。
「B&W」
「静岡県榛原郡本川根町」。より鋭利に、謎めいた断片を切り取る。
「バートレットダム、マリコパ郡アリゾナ州」。神殿のよう。
自然の中に刻まれた人の痕跡を、あるがままに受け入れ、感性鋭く捉える前半。不要部を切り捨て、より鋭利的かつ恣意的に切り取る後半。これまでの変遷を辿るならば、過去から現在へと並べる方が分かりやすいと思います。現在から過去へとさかのぼる構成にしたのは何故だろう?写すというよりも、イメージを構築する手段としての写真展に思えました。
2009年01月07日
●飛鳥の天人TNM&TOPPANミュージアムシアター
TNM&TOPPANミュージアムシアターで公開中の「法隆寺献納宝物 国宝 金銅灌頂幡 飛鳥の天人」を観ました。
今回のナビゲーターはこうのさん。「国宝 聖徳太子絵殿」、「マヤ文明 コパン遺跡」と同じ方でした。
映像は法隆寺西院伽藍から始まります。アングルがヌルヌルと移動するので、かろうじてCGと分かります。飛鳥時代の遺物にして、金工史上最高傑作といわれる灌頂幡の世界へ。精緻に再現された灌頂幡を映しながら、まずは外側の天蓋、蛇舌、垂飾を説明。説明が済むとその部分は消して、内側に吊られた大幡、小幡へ。CGならではの分かりやすさ。幡に刻まれた三尊像、飛天、雲の細工がじっくりと堪能できます。
その成立には特別な願いが込められているのでは?仏教普及を願い精力的に活動した聖徳太子一族。その多くが自害したといわれる法隆寺炎上。法隆寺再建の際に奉納されたと考えられる灌頂幡には、聖徳太子の娘である片岡御祖命(かたおかのみおやのみこと)の、「「私が仏教を伝えていきます」という願いが込められているのは?」。
映像は法隆寺西院に戻り、金色に輝く灌頂幡が金堂前に奉納されます。史実を踏まえつつロマンティックな話でした。映像的には、ディテールの再現度が凄かった反面、画面変化が乏しくやや退屈。データ量の兼ね合いでしょうか。
2009年01月06日
●博物館に初もうで@東京国立博物館
毎年恒例と化してきた「博物館に初もうで」@東京国立博物館。青天に和太鼓が響き、門松が彩りを添えます。人出も良好。
東洋館第8室「新春特集陳列 吉祥―歳寒三友」。「梅花双雀図」伝馬麟筆。梅の木に身を寄せ合う二羽のスズメが愛らしい。中国絵画のマイブーム継続中ー。
干支に因んだ展示を経て、本館 8室「書画の展開-安土桃山・江戸」へ。「羅浮仙」岩佐又兵衛筆。KAZARI展で観た「浄瑠璃物語絵巻」が鮮烈な又兵衛の肉筆画。あごが長いのは仙人の特徴なのだろうか。
「十友双雀図」渡辺崋山筆。細密描写が美しい。
「雪中老松図」円山応挙筆。「国宝 雪松図屏風」と同じ描法。あちらを描くための習作?
「松梅群鶏図屏風」伊藤若冲筆。松梅を左右端に追いやり、群鶏をズラリと並べる。点描の石灯籠まで登場して、サービス精神旺盛な2双。鶏がパターン化していて、ちょっと単調な気もする。お得意さんのリクエストに答えたのだろうか。
本館 10室「浮世絵と衣装 ―江戸」。「風流五節句・元旦」鳥文斎栄之筆。ピンク地に白い鶴紋様が綺麗。
さすが東博、新年に相応しい華やかさ。この後、新年会へ。楽しい一日でした。
2009年01月05日
●レオナール・フジタ展@上野の森美術館
上野の森美術館で開催中の「没後40年 レオナール・フジタ展」を観ました。
第1章 スタイルの確立 「素晴らしき乳白色の地」の誕生。「断崖の若いカップル」、「家族」。モディリアーニの影響を感じさせる人物画。「風景」。たらし込みのような描画。そして「素晴らしき乳白色の地」へ。細い輪郭線、乳白地、淡い影。「アトリエでの自画像」。面相筆を持ち、猫が居る、藤田をイメージづける構図。
第2章 群像表現への挑戦 幻の大作とその周辺。群像表現に挑む大作「ライオンのいる構図」、「犬のいる構図」、「争闘I」、「争闘II」。本展のハイライト。「猫」。前脚を広げて蟹を威嚇する猫、魚に跳びかかる猫。輪郭のない白黒表現が水墨画のよう。
第3章 ラ・メゾン=アトリエ・フジタ エソンヌでの晩年。再現アトリエと自作の木箱等。えっ、もう晩年?とちょっと戸惑った。
第4章 シャペル・フジタ キリスト教への改宗と宗教画。フジタが心血を注いだ「平和の聖母礼拝堂」の映像が良かった。群像画の修復過程を辿る映像も良かった。
2005年に東京国立近代美術館で開催された「藤田嗣治展」と並ぶ回顧展を観るつもりで出かけたので、少々戸惑いました。本展は大きく分けて、大作4点への道のりを辿る前半と、晩年を紹介する後半の2部構成です。4枚の大作が観られる、またとない機会です。(近美感想その1、その2)
日本橋から移動して、「過門香」上野バンブーガーデン店でお昼。フジタ展の後、東博へ。
2009年01月04日
●寿ぎと幽玄の美@三井記念美術館
新年最初に訪問したのは三井記念美術館。「寿ぎと幽玄の美 国宝雪松図と能面」を観ました。
展示室1 能楽にちなんだ茶道具1
「黄瀬戸立鼓花入」。シンプルで時代を感じさせない形状。解説がなかったら、ずっと古い時代の出土品といわれても信じそう。
「備前肩衝茶入 銘塩釜」。鉄のような表現、質感。もちろん焼き物。
「黒楽茶碗 銘面箱 (紀州御庭焼清寧軒窯)」。御庭焼って何?と思って調べると「藩主が他の先進地域より有名な陶工を招いて焼かせたもの」らしい。城の庭に窯を作って焼いたのかと思った。
「色絵鱗文茶碗」。しっとり落ち着いた黒に鱗文が映える。誰の作かと思ったら仁清、手広い。
展示室2 能楽にちなんだ茶道具2
「黒楽茶碗 銘俊寛」長次郎。丸い口の処理に内側の錆色。たまらん。
展示室3 茶室如庵=茶道具の取り合わせ
掛軸の字がちょっと、と思ったら徳川綱吉筆。。。。
展示室4 松竹梅の屏風と翁面
「日月松鶴図屏風」。金地と水辺に色鮮やかな鶴。右上に日と月。
「雪松図屏風」円山応挙。金地に白黒で描く雪と松。シンプルで美しい。
「梅花双鶴図小襖」円山応挙。梅のピンクが愛らしい。
「梅に小禽図風炉先屏風」呉春。枝と鳥の軽快なリズム。そして翁面の展示へ。
展示室5 能面(女・男)
「小面(花の小面)」「孫次郎(オモカゲ)」伝龍右衛門。面ごとにずいぶんと造形が異なり、見比べると面白い。小面はふっくら、孫次郎は細面の美人で人間っぽい。年老いた顔や、芦雪の絵に出てきそうな山姥など。
「蛇」。大きく顎が出ていて滑稽の域。室町時代の面が数多く並び、その状態の良さに感銘。能の知識がないので、もっぱら面の表情の見比べに専念。
展示室6 能面(尉・鬼神・女・男)
時代が下って江戸時代。この頃になると形式が整ってきた感じ。
展示室7 能面(尉・鬼神・男)
「癋見悪尉」洞白満喬。達磨大師のよう。
「大癋見」「小癋見」伝赤鶴。大きく横に結んだ口の両端が、前者は上に笑み、後者は下にへの字。
「牙癋見」伝赤鶴。ビール樽の様な顔型。
「獅子口」伝赤鶴。誇張の極み。目と口の周りに大きく盛り上がった頬肉。
「影清」出目満照。血管が浮き出る皺々の皮膚と細目。マンガみたい。
「痩男」伝日氷。頬がこけて骨が出張った造形、目の下の隈がコミカルですらある。
雪松図へと至る前半は期待通り、能面が並ぶ後半はどうかな?と思いましたが、思いのほか楽しめる展示でした。もっとも、それが能面を見る視点として正しいかと言われると困ってしまいます。
ミュージアムカフェを曲がったところにある書庫扉(モスラー社製)。巨大丁番とリベット、大仰なカンヌキとハンドルがレトロ感満載で良い感じ。
2009年01月01日
●謹賀新年 2009
明けましておめでとうございます!
昨年は色々な面でよく走った一年でした。
意欲と謙虚さとスピードを胸に、本年も頑張ります。
どうぞよろしくお願いいたします!
画像はnike+アバター"run run ran !"のワンシーンです。ランダムに選ばれた10人のアバターが、ランニングデータを基に毎週勝敗を競います。右端の水色のアバターが私です。久々に1位になって飛び上がっています。