2008年12月24日

●雪舟と水墨画@千葉市美術館

 千葉市美術館で開催中の「岡山県立美術館所蔵 雪舟と水墨画」展を観ました。2年前の浦上玉堂展の共同開催をきっかけに交流を深め、お互いのコレクションの粋を貸し出しあうことで実現した展示だそうです。

 第一章 中国絵画-憧憬の中国-。伝馬遠「高士探梅図」。細かな描線、見事な枝ぶりの梅。海に月が浮かぶ。伝馬遠「採芝図」。枝から垂れ下がる房の描写。伝月壺「白衣観音図」。左上に天女、右下に龍、その周りに漫画チックな波の描画。愛嬌のある観音様のお顔立ち。こういった絵を後世の絵師たちは参考にしたのだろう。

 第二章 日本の水墨画家たち-雪舟から武蔵まで-。「渡島天神図」。梅の枝、腰の袋の色彩が鮮やか。雪舟等楊「山水図(倣玉澗)」。水をたっぷりと含ませた淡い描画。ガタガタした独特の山水画の一方で、こういった画もあるのかと見入る。玉澗の元絵も見てみたい。雪舟等楊「渡島天神図」。梅に腰掛ける天神様。斜めを向く構図が前出作と差別化?承虎「山水図」。黒い枠線が漫画的。如水宗淵「山水図」。上に迫り出す岩山が緊張感をもたらす。楊月「蜆子和尚」。筆遣いの巧みな描画。「山水図(天澤座元送別詩画軸)」。左手前に巨木、右奥に松林の対比。雪村周継「瀟湘八景図屏風」。丸い山の描写が雲頭皴っぽい?普通に上手い。対決展の雪村「呂洞賓図」のゾクゾクするような興奮を思い出します。相手は雪舟「慧可断臂図」でした。やはりすごい展示だったと今更ながら思います。
 時代はぐっと下がって江戸時代へ。雲谷等益「楼閣山水図屏風」。荒々しい岩山と建物の対比。宮本武蔵「布袋竹雀枯木翡翠図」。三幅対の空間を大胆に余白を取りながら構成。

 第三章 岡山出身の四条派画家-柴田義董と岡本豊彦-。柴田義董「西園雅集図」。四条派得意の写実的で色彩豊かな世界と、手に手に筆を持つ人物たちが織り成すメルヘンな世界。岡本豊彦「林和靖図」。空間の捉え方が立体的。岡本豊彦「松鶴波濤図屏風」。西洋絵画のよう。

 第四章 江戸時代の唐絵と富岡鉄斎-中国愛好の系譜-。浦上玉堂「琴写澗泉図」。モコモコ隆起する岩山、木々。浦上玉堂「山澗読易図」。竜巻のように巻き上がる山、木。浦上春琴「僊山清暁図」。玉堂絵を穏やかにして彩色したような画風。浦上春琴「名華鳥蟲図」。鮮やかな花鳥画+虫。水墨画からは外れますが美しい。

 岡山ゆかりの画家たちを時代順に辿る展示は、思った以上に見応えがありました。

 同時開催は「カラーズ・色彩のよろこび」。企画展に因んだテーマで所蔵品で展示する、千葉市美の得意技。
 第2部「色いろいろ~近世・近代の版画より」。「-摺物の色」のコーナーに渓斎英泉の色紙判摺物が4点並びます。非売品ならではの贅を尽くした細やかさと美麗さは一見の価値あり。「-藍摺という発想」でも渓斎英泉「鯉滝登り裲襠の花魁」の着物の背を登る鯉の迫力が素晴らしい。
 第3部「特別な色-たとえば赤」。横尾芳月「阿蘭陀土産」。大掛かりな舞台セットのような作り込んだ構図。
 第4部「幕末明治の極彩色」。豊原国周「五代目尾上菊五郎の小間物屋才次郎」。大蛇を切り裂き、血塗れで立つ人物。その返り血の量がすごい。

 11階講堂向かいのレストラン「かぼちゃわいん」でお昼。前菜、スープ、メインディッシュ、シャーベット、ドリンクで2,100円也。千葉市市街が一望できるロケーションです。
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Posted by mizdesign at 2008年12月24日 21:36
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