2008年12月16日
●風景ルルル@静岡県立美術館
静岡県立美術館で開催中の「風景ルルル」展を観ました。副題は「~わたしのソトガワとのかかわり方~」。普遍的で明快なテーマ設定の下、8者8様の現代風景が並びます。
高木紗恵子。木々の描画に、線と絵具の塊が重なる。複層レイヤーを投影する感覚。「ワイルドライフ/ブルズアイ」には木に混ざって鹿が登場。
照屋勇賢。紙袋の作品は、3年前の横浜トリエンナーレで観たのと同系統。「Dessert Project」。ガラス冷蔵ケースに安置されたゼリー、スポンジ・ケーキ、ガム、砂糖で出来た巨大なデザート。その原色系カラフルさと人工的な無機感とヒンヤリ冷気が混ざり合ったグロテスクな美しさが目を惹く。なぜかとても現代的と思う。お菓子の中の都市は芸が細かい。
柳澤顕。液晶スクリーンを思わせる四角と、ダイナミックな流線の組み合わせが印象的。
鈴木理策。光と影、流れ移ろう水流。異なる要素を絞込み、一つの画面に定着させる美しさ。
内海聖史。色彩豊かな点描が、大小変幻自在に画面を埋める。青は空、緑は木々、赤と橙は花と果実。大きく残した余白は背景に溶け込んで、全体で大きな世界を構成する。厚いカンバスがボンヤリとした影を落として、個と全体の関係を仄めかす。とても豊穣で、とても美しい世界。
ブライアン・アルフレッド。「Reactors」。原子炉の大きな排気口から立ち上るピンク色の煙。現実を楽観的に捉えるペーパーコラージュ群。
佐々木加奈子。作者が風景の一部として登場する写真群。ビデオインスタレーションが奇妙でじっと見てしまう。走る電車の最後尾に陣取って、モノをどんどん拾っていく(フィルムの逆回しでそう見える)映像。
小西真奈。絵葉書のような構図の風景と人。情報量を削ぐことで、ありふれていそうで、その実どこでもない世界になっている。「浄土2」。岩にふもとの水辺に佇む女性。そこは浄土。
同時開催の「Resonance(リゾナンス)-共振する感覚」。「風景ルルル」展に出展している現代アーティストの作品と、静岡県美が所蔵する作品を並べて展示します。
共振というよりも、単品になったときの現代の脆弱さが浮き彫りになるような気がしました。
エントランスホールの片隅で、草間弥生「水上の蛍」が展示中です。水を満たした鏡の世界に無限増殖する、細やかな光の明滅と揺らぎ。とても美しい。
個人的には、内海さんの作品と、草間さんの作品が抜群に良かったです。現代アートの展覧会として、とても充実しています。巡回展でないことが、なんとももったいないです。
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昨日アップした旅程の中で、どの展覧会から書こうか迷ったが、やはりこの静岡県美の展覧会からご紹介したいと思う。
現在、私個人が公立... [続きを読む]
? 風景ルルル (静岡県立美術館) from 徒然と(美術と本と映画好き...)
さて、今年最後の遠征は静岡、行った理由はこのグループ展を観る
ためでした...
・風景ルルル (静岡県立美術館)
いろんなアーティストの中で、もっとも風景... [続きを読む]
? ルルル終了 from 色彩の下
静岡県立美術館「風景ルルル?わたしのソトガワとのかかわり方?」
無事終了いたしました。
遠方ながらご高覧頂いた皆様ありがとうございました。
いくつも勉... [続きを読む]
こんばんは。レポートありがとうございます。内海さんの作品はそうきましたか!あのロビーの大きさですからさぞかし圧巻でしたでしょうね。
草間は静岡も色々コレクションしていたと思います。
前に若冲の「樹下〜屏風」とコラボで展示されているのを見ました。
それにしても行くつもりだったのですが…。
やはり決断力がないのでだめですね…。
はろるど様>
こんにちは。
ロビーもそうですが、展示スペースの方が物凄く良いです。
展示室の形状、作品の並べ方、照明の当て方、背景の色。全てがマッチして素晴らしい効果を上げていました。
帰りにMOAに寄ると決めていたので、朝6時半に出て、ひたすら静岡を目指しました。
lysander様>
こんばんは。
内海さんを始め、とても密度ある展示だったと思います。静岡県美の評価急上昇です。問題は距離ですね。
地方美術館の企画展は、巡回が難しいのでしょうか。。。
風景ルルルをご高覧頂きありがとうございました。
トラックバックさせていただきました。
よろしくお願いします。
1月にアグネスとラディウムがあるので、緊張を切らさぬよう頑張ります。
地方・東京に限らず、現代美術の企画は美術館主催でやるしかないのだと思います。
企業主体であれば、巡回もあるのでしょうが・・。
巡回で一度に数箇所の空間を考える機会って珍しいと思うので興味があります。
それでは失礼しました。
うちうみ様>
初めまして。
コメントありがとうございます。
平面作品と思っていたら、とても立体的でビックリしました。
同時に、現代アートが一期一会だということも良く分かりました。
ラディウムでの展示も楽しみにしてます!