2008年12月01日
●セザンヌ主義@横浜美術館
横浜美術館で開催中の「セザンヌ主義 父と呼ばれる画家への礼賛」を観ました。
「プロローグ」。エミール・ベルナール「セザンヌ礼賛」。ラ・トゥール「聖トマス」?と思わず呟いてしまうほどに似ている。大きなおでこ、伏した構図、長髭。ひょっとしてベルナールは「聖トマス」を知っていて、セザンヌへの敬意をこの名作に重ねて描いたのかと思いました。モーリス・ドニ「セザンヌ訪問」。セザンヌの言葉を世に伝えたドニが描いたセザンヌ訪問記念画。二人にとってセザンヌは、新しい絵画を指し示す神の如き存在だったことがヒシヒシと伝わってきます。
「I 人物画」。「青い衣装のセザンヌ婦人」、「帽子をかぶった自画像」等、セザンヌの名作も並びますが、展示の焦点は後生の画家達に与えた影響。セザンヌが描いた上半身肖像画と、後生の画家たちが描いた肖像画を並べて、その影響を浮かび上がらせます。なるほどと思うものもあれば、?なモノもあり、玉石混交な気もします。章後半は裸婦と水浴画。セザンヌの水浴画の大作が出展されず、説得力を欠いたのが残念。
「II 風景画」。「ガルダンヌ」。セザンヌ絵画からキュビスムの分析的手法への橋渡しを予感させる幾何学的な構成。「ガルダンヌの村」。前作と同じ風景を別アングル、別アプローチで描き、セザンヌの試行錯誤が伺えます。「ガルダンヌからサント=ヴィクトワール山」。セザンヌ独特の分割と黄色を多用する色彩。ブリジストンの名作が頭に思い浮かびます。小野竹喬「郷土風景」。セザンヌの影響が日本画にまで。当時の最先端だったのでしょう。
「III 静物画」。「りんごとナプキン」、「ラム酒の瓶のある静物」と、美術の教科書でお馴染みの画が並びます。対象を色彩のボリュームで捉える独特のタッチ!岸田劉生「静物」。ガラス瓶の透明感、茶碗の艶。居並ぶ後継作の中でも抜きん出た存在感。
本展は「実物で辿る、セザンヌを中心とした、セザンヌ以降の美術史」としてとても成功していると思います。物量大作戦が幅を効かす今期にあって、構成力で見せます。この構成で観ると、人物、風景、静物の全てにおいて、セザンヌが源流と思えてきます。その一方で、セザンヌからフォービズムへの飛躍は、やはりマティスたちの才能に負うところが大きいと思うので、持ち上げすぎと思える部分もありますが。
美術館に隣接した住宅展示場で開催された「横浜アート&ホーム コレクション展」。17軒のモデルハウスのそれぞれで、ギャラリーが美術品を展示販売します。わずか二日間の展示に手の込んだホームページを準備した意欲的な企画。チケットは引換時間を1日に3回設定した(ただし引換以降の滞在時間は制限なし)多人数の来客にも安心のシステム。しかも入場料は1,000円ですが、セザンヌ展の入場者はなんと無料の大盤振る舞い!
だったらしい。そんな案内どこにも出てなかったし、誰も教えてくれなかったし、知るわけないやん。17回靴を脱いでは履き、2時間かけて観て回りました。
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? 「セザンヌ主義」 from 弐代目・青い日記帳
横浜美術館で開催中の
「セザンヌ主義―父と呼ばれる画家への礼讃」に行って来ました。
公式サイト
セザンヌについては一家言を持っている。
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Tak様>
こんばんは。
聖トマスに象徴されるように、本展は「セザンヌ展」でなく、「セザンヌが後世に与えた影響を辿る展」ですね。
それを踏まえれば、良い展示だったと思います。