2008年12月03日
●琳派から日本画へ@山種美術館
会場に入って左手に福田平八郎「彩秋」。金属のような色味の葉、白地にグレーの穂の対比。同じく「筍」。黒い筍に緑の芽、線描の笹の葉を敷き詰めた地面。対象を絞り込み、写実的かつグラフィカルに仕上げるセンスは其一を思わせます。右に折れて前田青邨「大物浦」。紙を折り、絵具を染み込ませたような波と、それに翻弄される船と人物。大迫力。さらに右に折れて酒井抱一「月梅」。ほんのりとした緑青のような緑が作品に品を添えます。
次室に進んで、東山魁夷「満ち来る潮」。エメラルドグリーンの海、銀の波飛沫、岩の先端には金色がのる。波音が聞こえそうな荒々しくも美しい海。速水御舟「白芙蓉」。白い花弁に紫のおしべ(?)、モノトーンの茎と葉が妖しい美しさを放つ。荒木十畝「四季花鳥図」。美しい色彩で派手派手。
さらに奥の展示室へ。速水御舟「名樹散椿」。鮮明な金地に単純化された緑の丘とうねる幹。そして緻密に描かれた葉と花が、異様な密度で重なり合い美麗な全体を構成する。その左手に伝俵屋宗達「槙楓図」。くすんだ金地にうねる幹、重なり合う槙と楓。新旧のコントラスト、継承を思わせる相似性は、両者を並べた時点で勝負あったと思わせる素晴らしさ。ベンチに腰掛けて眺めていると、感動で涙が出た。御舟の脳裏に焼きついたであろう、記憶の中の名樹。その一瞬を画面に定着させたような画は、技巧を超えた祈りのようなものを感じさせます。来年の「速水御舟展」が楽しみです。