2008年11月30日

●第28回 つくばマラソン

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 晴天に恵まれた秋空の下、「第28回つくばマラソン」を走りました。毎年1万人以上が走るマンモス大会です。私にとっては、去年に初マラソンを体験した場所であり、25km地点から歩いた痛恨の思い出ででもあります。

 マンモス大会にも関わらず手際の良い運営で、会場へのアクセス、更衣室、トイレ、荷物預入等とてもスムーズ。これには驚きました。ゼッケン3275なので、3000番台のスタート位置のかなり前方に場所取りして、号砲を待ちます。前半の位置取りは頑張って、後半は失速しつつも最後まで走る続けるというのが大まかな作戦。

 号砲が鳴ってゆっくりと動き出し、筑波大学周辺を1週ちょっとしてから、学園東大通りへ出ます。通りは一車線(4人並ぶといっぱい)しかないので抜くのに労力を使います。周回しているうちに順位を上げておいて、通りに出たら慣性走行。これは去年学習しました。10kmあたりでとてもペース良く走る方を見つけて、ついていくことに。とても無駄のない腕の振りとゆっくりとした足運びで、スローに見えますが確実に順位を上げていきます。17-18kmあたりでトップ集団とすれ違います。白バイに先導されて飛ぶように駆けていく6-7人の集団。同じ人間とは思えません。22.45kmで折り返し。23kmの給水所で、ペースメーカーの方にあっという間に置いていかれる。ここから後半戦。

 折り返し点を過ぎて、自分ではっきりと分かるくらいに失速。42kmという距離を走ること自体が2回目なので、これは止むを得ないところ。どんなにスローペースでも、走り続けることが大切。途中に「ここからゴールに帰るには、走るしかない」とか「抜くんだ、一人でも」とメッセージボードが木にくくりつけてあって、「その通りだ!」と思った。28kmの給水所でお汁粉登場。水、バナナ、お汁粉と全て美味しくいただきました。30km地点に「ここから先は人生をかけるんだ」というメッセージボードがあって、ちょっと苦笑。去年に歩いた地点を過ぎて、足は重いが気は楽になる。去年よりも成長していることが実感できるから。全ての給水地点で水、バナナを補給しながらゴールを目指す。大学の周回コースに帰ってきて、ラストスパートをかける方たちに続々と抜かれながらも走り続ける。100人抜かれて、1人抜き返す感じ。最後に競技場のトラックを回ってゴール!

 記録は3時間40分15秒。スタートタイムを補正すると3時間38分12秒。順位は2275位で、1500人抜いて500人抜き返された感じです。完走できたことが何より嬉しい。ゴールしてちょっと涙が出ました。1kmを5分で走ると、3時間30分ちょっとでゴールできる計算なので、あと10分短縮することが次の目標になります。

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2008年11月23日

●朝鮮王朝の絵画と日本@栃木県立美術館

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 栃木県立美術館で開催中の「朝鮮王朝の絵画と日本」を観ました。副題は「宗達、大雅、若沖も学んだ隣国の美」。今年は江戸絵画のルーツを辿ることがブームなのか、「特集陳列 中国書画精華」@東京国立博物館東洋館」、「室町将軍家の至宝を探る」@徳川美術館と立て続けに中国絵画の名品を見る機会がありました。今回はそのおとなりの朝鮮絵画です。無料の音声ガイドを聞きながら観ました。

 第1部「朝鮮絵画の精華」。第1章「朝鮮絵画の流れ:山水画を中心に」。「雪景山水図」のモコモコと山を描く描法(蟹爪樹という技法らしい)が印象的。崔名龍「山水図」。傍らに狩野探幽「和漢古画帖」が置かれており、本図の縮図が載っている。小さくって見やすい。ずっと後の章で展示されている李厳「花下遊狗図」の犬たちは、その愛らしさと江戸絵画への色濃い影響で、本展の顔。「紅梅図」の勢いある梅の描写もちょっと異質で印象的。李継祜「葡萄図」。墨で描かれた葡萄の葉と実が円弧を描くように配されていてとても美しい。「蘭図」。鉢と葉を大きく描く異色作。鄭散「冠岳夕嵐図」。保存状態良好の青い空。朝日かと思った。田琦「梅花草屋図」。素朴な表現によるホノボノ感。
 第2章「仏画の美 高麗から朝鮮王朝へ」。「大方広仏華厳経巻第三十九」。背景で花が踊る、独特のセンス。
 第3章「絵画と工芸、越境する花鳥の美」。伝呂紀「花鳥図」。中国絵画の影響を思わせる構図、図柄。伝呂紀の同名別作品は余白のない画面にスケールオーバーな鳥や虫が詰め込まれているので、手本を写したのだろう。「華角貼人物図箱」。華角貼とは、牛の角を火で炙って薄く伸ばして木箱に貼る技法だそうです。鮮やかな赤地に描かれた人物画像はとても鮮烈。
 第4章「「民画」の誕生」。「虎図」。チラシにも載っている眼がグルグル回ってる虎。見たことのない捉え方。許士寅「虎図」。こちらは奈良美智を思わせるつぶらな瞳。「虎図屏風」。表情豊かなものぐさ虎が並ぶ。「九雲夢図」。ちびまるこちゃん顔の人物、平面的な描写。「紙織魁星点斗図」。点描を思わせる紙織図の中でも異彩を放つ、龍の頭を踏みつけながら北斗七星を描く鬼の図。

 第2部「日本人のまなざし」。第5章「交流の形-朝鮮通信使の果たした役割」。李聖麟「仕女図」。近代日本画的な面持ちの美女。

 第6章「日本画家のまなざし-日本絵画に与えた影響」。啓孫「虎渓三笑・山水図」。三人の仙人が笑いあう図。この題を聞くと、曽我蕭白「虎渓三笑図」の人を食った構図が思い浮かぶ。雪村周継「瀟湘八景図屏風」。うねり波打つ山。対決展でも異彩を放った雪村の中では穏やかな方?俵屋宗達「犬図」。本展のサブテーマ「犬」の継承として、李厳「花下遊狗図」と並べて展示。ちょっと奇をてらい気味で、可愛いというより不気味。
 伊藤若冲「白象群獣図」。三つの枡目描の一つ、ようやく対面。思っていたよりも大きい。パオーンと振り上げた白象の鼻が煙のようでもあり、その背後にわさわさと湧き出る龍に栗鼠に黒豹に謎の丸い生命体。この題材、構図、技法でまとめられるところが、さすが若冲。奇想の根底に敬虔な仏教徒としての祈りがあってこそ。

 本展の特徴は全326点に及ぶ展示作を通して、普段あまり目に触れる機会のない朝鮮絵画を通観し、日本に及ぼした影響を探るというものです。名品、異色作、そして最後の江戸絵画と見逃せない展示作が随所に登場します。その一方でヘタウマ系?と思う作品も多く含まれており、密度的には今一つ。
 さらに、今回見られたのは150点ちょっと、リスト作の半分ほどです。栃木県立美術館だけで6回の展示替えがあり、さらに4会場を巡回する間にも入替があります。作品リストを確認して、目当ての作品と展示会場を絞り込むことをお薦めします。例えばリストに6作品(伝を含めれば8作品)登場する雪村は、今回は1作品しか展示されていません。
 会場は栃木、静岡、仙台、岡山。まだ見ぬ「樹下鳥獣図屏風」を求めて、今度は静岡に行くことになりそうです。会期中いつ展示されるのか、またMOA美術館の「紅白梅図屏風」がいつ展示されるのかも気になるところです。

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2008年11月18日

●平成20年 管理建築士資格取得講習会

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 「平成20年 管理建築士資格取得指定講習会」を受講しました。
 管理建築士とは、建築士事務所に所属する建築士の能力及び事務所全体の能力を管理する建築士のことで、建築士事務所ごとに1人置くことが義務付けられています。
 以前は一級建築士であれば誰でもなれましたが、平成18年12月20日に公布(施行は平成20年11月28日)された新建築士法において、一定の実務経験と講習を修了することが義務付けられました。詳しくはこちらをご覧下さい。

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 会場は幕張メッセ国際会議場2階。
 講習は5時間の講義と、1時間の考査からなります。
 講義は法令、経営管理、受託業務の管理、紛争と予防の大きく4部。
 建築士事務所の置かれている状況と、建築士に求められる能力、さらに管理建築士の果たすべき役割。
 そして最後に考査。内容は講義を聞いていればそれほど難しくはありませんが、事務所運営に必須の資格なので緊張しました。

 全200ページのテキストを5時間で講義するので、キーワードの羅列という感じでしたが、全体像を把握できて良かったです。同時に、その重さに溜め息が出ました。

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2008年11月10日

●ボストン美術館 浮世絵名品展@江戸東京博物館

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 平塚鎌倉を経て最後は両国へ。江戸東京博物館で開催中の「ボストン美術館 浮世絵名品展」を観ました。前に来たのは2年前の「江戸の誘惑展」なので、私にとってはボストン美術館東京分館と化しています。じっくり観られるよう、閉館1時間と少し前に入館。

 第1章 浮世絵初期の大家たち。驚異の保存状態がウリの展示にしては今一つの状態。スルー気味。
 第2章 春信様式の時代。春信の描く美人画がつぼにきて、ガラスケースに顔を近づけて観る。やはり10cm以下に近づくと見えてくる紙の凸凹、質感が刷り物の醍醐味。今回の展示は見易い高さに作品を吊ってあり、照明も鑑賞者の影が作品に落ちないように配慮されています。「見立浦島」。凹凸で表現された波の紋が美しい。竿を持つ美人、龍のような亀。「座鋪八景 ぬり桶の暮雪」。凹凸で表現された白い綿=雪。壁の菱形紋様も鮮明。「座鋪八景 鏡台の秋月」。腰壁の薄い藍色、紋までくっきり。「女三の宮と猫」。猫に赤い布製の首輪、着物の白地部分の凹凸。「浮世美人寄花 南の方 松坂屋内 野風 藤」。屏風の黄土色、キラキラする紙面。
 第3章 錦絵の黄金時代。喜多川歌麿(?)「月宮殿」。ピンクの雲に乗って佳人の待つ宮へ。「蚊帳」。網の目の刷りの名人芸。栄松斎長喜「涼舟五枚続」。画面いっぱいに美人が並ぶ賑やかな構図。
 第4章 幕末のビッグネームたち。歌川国政「市川蝦蔵の暫」。今回のキービジュアル。大胆な横顔構図、迫力ある眼、朱の隈取。歌川国芳「鬼若丸の鯉退治」。赤い鯉と黒い流紋の対比がダイナミック。「讃岐院眷族をして為朝をすくふ図」。鮫の鱗、烏天狗の翼の書き込み、白い飛沫、海の藍と鮫の黒が溶け合うグランデーション。豪壮な構図と細かい仕上が組み合わさった迫力。

 あっという間に時間が経って、気がつけば閉館時間。春信と国芳が見られて満足です。

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2008年11月09日

●鎌倉アートツアー in Autumn

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 平塚から折り返して鎌倉へ。今回はホリデー・パスを利用しているので、寄り道しても料金は同じ。

 鏑木清方記念美術館初訪問。小町通りの人出に驚きつつも左手の路地へ折れて到着。雪ノ下という地名が素敵。牛込矢来町の画室を模したという画室は創作意欲をかきたてそうで羨ましい。

 特別展「清方の芝居絵」を観ました。清方生誕130年記念だそうです。展示スペースはこじんまりとしていていますが、引出式の展示箱があったりして面白いです。旧家にお邪魔して、コレクションを閲覧させてもらう気分です。チラシも見開きで展示作を紹介しており、とても親切。墨のぼかしを巧みに使った助六がカッコイイ。芝居を取材した「寺小屋画帖」のスケッチも巧みで、話の筋がとても分かり易くまとめてあります。
 なかでも目を引くのが、「対牛楼の旦開野」。色彩美しい美人画なのですが、その正体は八犬士の一人、犬坂毛野。雑誌の折込みピンナップを引き出した形での展示で、当時の文化が偲ばれます。その美しさに魅惑されながらも、でも男だしと唸ったんでしょうか。

 鶴岡八幡宮へ出て、鎌倉国宝館へ。特別展「鎌倉の精華」を観ました。
 1 彫刻 I:開館当初の出陳彫刻。鎌倉国宝館開館八十周年を記念して、開館当時の展示を再現しているとのこと。「地蔵菩薩立像」。照明の当たり具合で、見下すような冷たい視線を感じます。一人一人に暖かい視線を送っていたんじゃキリがないし、自分で頑張れと天界から見守るのが本来の立ち位置だよなと妙に納得。「十大弟子立像」。お手ごろサイズな十体揃い。写実的な造形が人間ぽくて親しみが湧く、というよりそこらのおっさんが並んでいる感じ。アーナンダは若々しく威厳を保つ。「水月観音菩薩坐像」。これまたお手ごろサイズの寛いだ坐像。細部まで良くできています。先日の「スリランカ展」の金ピカ観音様を思い出します。
 1 彫刻 II:鎌倉彫刻の至宝。「愛染明王坐像」。本展の一押し。怒髪天を突く髪型に憤怒の形相、手に持つ武具も迫力あり、悪を叩き潰しそうな威厳に満ちています。二重の牙(?)も怖い。「明庵栄西坐像」。写実を重んじる鎌倉彫刻の中で、頭が異様に大きい。ちょっと妖怪じみていてインパクト大。「上杉重房坐像」。大きく開いた足組みがすごい。教科書で見た気がしますが、本物と御対面。
 以降、2 絵画、3 書跡、4 工芸と続きます。

 さらに足を伸ばして、神奈川県立近代美術館へ。近代建築の名作ながら、外装アスベストに耐震問題、建物の老朽化と課題も多い。「岡村桂三郎展」を観ました。全く未知の方なのですが、「第4回 東山魁夷記念 日経日本画大賞」を受賞された方とのことで興味が湧きました。

 展示室に入ると、天井ギリギリまで立ち上がる巨大な木の壁が館内を埋め尽くします。厚みは5cmほど。それらが丁番でつながれて屏風のように連続します。作品を置くのでなく、展示室=作品。その表層は鱗のような微細なパターンが彫り込まれ、茶色系で着色されています。全体を見通せない圧迫感と、圧倒的な存在感、暗く抑えた照明と相まって、怪物の胎内に迷い込んだよう。恐る恐る進んでいくと、双頭の怪物が睨み合いながら牙を剥いています。正確には複数の作品が連続して配置されているのですが、何のキャプションも示さない展示方法から推して、この胎内を彷徨う感じこそが作家の意図だと思います。これが日本画。。。しばし言葉を失います。日本画の新境地を開くに相応しい大作。でも展示できるところは限られる。。。そのうちにいくつかは高橋コレクションと知って、その守備範囲の広さに感嘆。展示するあてはあるんだろうか。。。

 駅へ戻る途中、若宮大路にて。三河屋本店。この右手には運搬用のトロッコ軌道。歴史的建造物が現役で機能している姿に、歴史の厚みを感じます。
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2008年11月08日

●近代日本画の巨匠 速水御舟-新たなる魅力@平塚市美術館

 平塚市美術館で開催中の「近代日本画の巨匠 速水御舟-新たなる魅力」を観ました。平塚市美を目指すのは実は二度目。一度目は人身事故で電車が大船で止まってしまい、時間切れ。泣く泣くUターンしました。会期終了前日にすべり込み。

 展示は御舟の修行時代から始まります。「荒海」の海を菱形に紋様化するセンス、セザンヌを思わせる岩肌の質感。その早熟な天才っぷりは驚くばかり。
 そして御舟の代名詞ともいえる、超細密描写へと突き進みます。「京の舞妓」。着物の布、壷の硬質感、団扇の紙貼り、畳の細かい目。その凄絶なまでの細密描写と、異様に顔色の悪い舞妓。ものすごいインパクト。そして不気味。「猫(春眠)」。こちらは可愛くてホッとする。「遊魚」。美味しそう。鮎の塩焼きが食べたい。「鍋島の皿に柘榴」。実物をこの目で見ても信じられないほどの描写力。絵のモデルになった皿と柘榴を見たとしても、絵の方を本物と思うであろうほどの確かな存在感と美しさ。ゾクゾクと鳥肌が立った。「秋茄子に黒茶碗」。色彩に頼らない黒と黒の組み合わせ。それでなお、目の前に茄子と茶碗があると思えてならない描写力。まさに神業。「樹木」。木に蔦が絡みつく構図。目を凝らすと、樹表の皮の一枚一枚が人肌のように見えてくる。起伏に富む幹は女体で、絡みつく蔦は男。画集では絶対に伝わらないであろう、御舟の目と手を通して再構成されたエロティックで深遠な世界。
 風景画へ。「赤穂塩屋之景」。グラフィックな構成が決まっている。「京の家・奈良の家」。白、黄土、赤。壁を大胆な色彩構成に還元する。「晩秋の桜」。金地に桜紅葉、キツツキのワンポイントが決まっている。
 外遊を経て、写生から解き放たれた新しい描画を模索するところで、突然の絶筆。その先に現れたであろう第二の成熟期を求めて、目は宙を彷徨ってしまう。

 驚異的な観察眼と描写力、新しいモノに次々と取り組んでゆく意欲は間違いなく天才の域。ピカソや北斎が持ちえた強靭な肉体があれば、彼らと並ぶ画業をものにしただろう。逆に、才能と強靭な肉体が揃ってこそ天才と呼べるのかもしれない。
 目の前にある世界を超えた世界を垣間見せる、アートの魅力を満喫しました。山種以外の御舟大集合で、見応え200%。来年山種で開催される「速水御舟展」と合わせてみれば、満足度は500%くらい行きそう。そういう面でも、必見の展覧会。

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●大琳派展(後期)@東京国立博物館

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 東京国立博物館平成館で開催中の「大琳派展 -継承と変奏-」の後期展を観ました。混雑緩和を狙って金曜日夜に行きましたが、結構な人出でした。

 第1章:本阿弥光悦・俵屋宗達。「月に兔図扇面」。大胆な画面分割と可愛らしい兔。遊び心と洒落っ気が効いたスマッシュヒット。「黒楽茶碗 銘 雨雲」、「赤楽茶碗 銘 峯雲」。観れば観るほど好きになる、ザックリ切った切り口と、艶やかな光沢、黒とオレンジのコンビネーション。よだれがでそう。「群鹿蒔絵笛筒」。金地に鹿が群れる細い円筒。素晴らしいセンス。「子日蒔絵棚」。立面、水平面に連続する装飾が素敵。気がつけば光悦ばかり。
 第2章:尾形光琳・尾形乾山。「秋草図屏風」。胡粉テンコ盛り。「竹梅図屏風」。金地に滲みの全くない墨絵。腕?特殊処理?
 第4章:酒井抱一・鈴木其一。「燕子花図屏風」。大きく円を描くような花の並びが美しい。抱一の優美さに酔う。「兔に秋草図襖」。板を斜めに張った襖。その斜め線が効果線のように効いていて動きが感じられる。「月夜楓図」。濃淡で表現された美。前期の「白蓮図」を思い出す。「波図屏風」。光琳の「波図屏風」に感動して描いたという抱一の傑作。光琳の夜の静けさに対して、強く強弱をつけた線で荒々しい海を描く。抱一本来の優美さから大きく離れた作風に、彼の感動の大きさを思う。後期一押しの名品。「蔓梅擬目白蒔絵軸盆」、「四季草花蒔絵茶箱」。抱一の優美さと蒔絵の豪華さが共鳴した傑作。欲しい。「夏秋渓流図屏風」。金線で描かれた水流、写実的な木々、異様に大きなユリ、二重楕円に幾何された笹の葉、金で塗られた地面。リアルとデフォルメが入り混じる画面と、美しい色彩。新しい表現に貪欲に取り組む其一ならではの意欲作。根津美術館でも見たけれども、相変わらずの迫力。「流水千鳥図」。幾何模様のような水パターンが美しい。「蔬菜群虫図」。パターン化して作り物っぽく描きながらも、画面から生き生きとした生命感が感じられる不思議な絵。若冲の絵との関連性が指摘されていて興味深い。

 作品一つ一つに力があるので、見応えは十分。その一方で、全体を通したときのストーリー性は希薄。なんとももったいない、けれども行かずにはいられない展示です。

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2008年11月07日

●三沢厚彦 アニマルズ'08 in YOKOHAMA

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 横浜そごう美術館で開催中の「三沢厚彦 アニマルズ '08 in YOKOHAMA」を観ました。平日も夜8時まで開いているのが嬉しい。

 会場に入ると大小様々な白い小屋が3棟。それぞれの中に白熊がいます。窓から眺め、ドアから入り古材のフローリングを歩いて御対面。振り返ると壁にヤモリがいてクスリ。奈良美智+grafっぽいなと思ったら、以前の展示で彼らの協力を仰いだそうです。
 壁にとまるコウモリを眺めながら進むと、犬猫大行進が!全部で数十頭くらい?一頭一頭違っているのに、猫はみんな尻尾をピンと水平に張っています。なんでだろう。
 茅ヶ崎のアトリエの再現スペース。ベニヤの棚、中央の制作机、彫刻中の素材。クスのムク材を削っていくと、もっと○○にといった声が聞こえてくるそうです。会期中に作家がここで制作することもあるらしい。会場内に貼ってある「作品に触らないでね」の手書きポスターはここで生まれたのかも。
 壁にはドローイング。動物園で観察するわけでなく、ドローイングを描いて作りたいもののイメージを固めるそうです。
 少し広い空間に百獣がウロウロ。彫刻の周りだけビニルテープを貼って、触らないでねとメッセージ。作品との距離がものすごく近いです。上を向く異様な目つきにも慣れてきて、三沢さんが作り出すアニマルズの世界に迷い込んでいきます。ポスターになっているライオンの、タテガミから顔がドンと突き出すボリュームが、なぜか心にピッタリとくる。お尻の尻尾もキュート。トラもいれば象もいる。キリンは天井に頭をぶつけんばかりに背が高い。彼らと視線を交わしつつ、木彫りの心地良いリズムに漂っていると、心がフワフワと温かくなってきます。
 白熊の子供の少し体を傾けた仕草に、こちらも一緒になって体を傾け、最後はワニ!長ーい体を四本の足で浮かせている緊張感と、ゴム人形を巨大化したような造形のギャップ、口の中まで作る細かさ。
 出口前には、子供キリンが撮影用に待ってくれています。その配慮も優しい。

  ポスタービジュアルは目がクリリッとしたライオン。木彫りの動物たちが百貨店の無味乾燥な空間に置いてあるのかな?と思ったら全然違いました。会場を跳梁跋扈するアニマルズたちにメロメロです。
 売店で絵はがきを見ていたら、係員に軽く挨拶して出口から入っていく人が。作家さんだったんだろうか。

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2008年11月06日

●「近世初期風俗画 躍動と快楽(前期)」@たばこと塩の博物館

 たばこと塩の博物館で開催中の「近世初期風俗画 躍動と快楽」展の前期を観ました。今回の展示は屏風をバンバン並べる見ごたえのある内容、前期と後期で大幅な入れ替えありという話を聞いて、期待度大。

 4階展示室に入ると、それほど広くない展示空間に目一杯屏風が並びます。「醍醐花見図」の腰が曲がりつつも1人で歩く秀吉を観たり、「洛中洛外図屏風(歴博D本)」の良好な保存状態に感心しながら名所巡り区分を味わったり。細かく書き込まれた屏風が多いので単眼鏡を持っていないことを残念がったり。
 中でも出光美術館の「桜花弾弦図」には目が釘付けになりました。お互いに視線を交わし、非常に生き生きとしている人物たち。箱の中まで描く手抜かりのなさ。胡粉(?)テンコ盛りの花びら。長煙管の驚くべき長さと細さ。

 後期も期待大です。

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2008年11月02日

●「特集陳列 中国書画精華」@東京国立博物館東洋館

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 東京国立博物館東洋館で開催中の「特集陳列 中国書画精華」を観ました。

 辻惟雄著「日本美術の歴史」においては、中国美術が唐様[南北朝美術]として定着してゆく意義を認め一つの画期として取り上げています。また、中国絵画を手本にして江戸絵画が花開いたことも記憶に新しいです。そういった手本としての中国絵画を見る絶好の機会です。

 李迪「紅白芙蓉図」。ほんのりと色づく花弁の描画は繊細でとても美しい。保存状態も美麗で文句なしの優品。梁楷「李白吟行図」。単純な線で的確な描写。伝夏珪「山水図」。よく物語とかで「ほう、夏珪ですな」とかって物知り顔なおじさんがいうところの夏珪。こういう絵を指すのか。「葡萄垂架図」。葡萄に虫。曼殊院旧蔵だそうで、若冲はこの絵を見たのだろうかと気になるところ。文伯仁「四万山水図」。視点低く画面いっぱいに描くクローズアップ描写が現代絵画を思わせる。李氏「瀟湘臥遊図巻」。素晴らしいパノラマ風景画。清の乾隆帝愛蔵品だそうで、そんなものが日本にあって良いのかと思ってしまった。徐渭「花卉雑画巻」。墨の濃淡、滲みを巧みに使った花卉図。

 優品だけを集めた豪華展覧会。会場は空いていて、じっくりと観ている方が多かったです。惜しむらくは、2階に上がって奥のエレベーターに乗るという会場案内が分かり難いこと。かなり迷いました。

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2008年11月01日

●特別展「スリランカ-輝く島の美に出会う」@東京国立博物館表慶館

 東京国立博物館表慶館で開催中の特別展「スリランカ-輝く島の美に出会う」を観ました。

 スリランカって島だったんだ!と思うほど知識がないのですが、仏教という共通フォーマットを、日本とは違うディテールで造形した美術品群という捉え方で観て回りました。

 入口にあるムーンストーン(模造)が異国情緒を醸していて、期待感が高まります。入ってすぐにある仏足石(模造)は薬師寺で観たものと似ていて、フォーマットを共有していることを感じさせます。
 第1章 アヌラーダプラ時代[前3~後11世紀]。ヤクシニーのくの字に折れたポーズと抜群のプロポーションが官能的。金剛手菩薩立像の繊細な衣紋が美しい。観音菩薩立像の寛いだ姿勢と金ぴかな体が美しい。カーマとラティ立像の男女一体の造形が、マジンガーZの阿修羅男爵みたい。アプサラス像の豊穣なイメージ。アシュバイン騎馬像は西洋絵画に出てきそうな出来栄え。
 第2章 ボロンナルワ時代から諸王国時代[11~16世紀]。シヴァ・ナタラージャ像の馬蹄形のフレームの中で踊るシヴァ神の楽しげで躍動感にあふれる美しさ。踏まれてピースをしている邪鬼(?)も印象的。興福寺の天燈鬼を思い浮かびます。パールヴァティー立像の目は飛鳥仏を思い起こさせる杏仁型。ガネーシャ坐像とヴァーナハは象の神様がネズミに乗れるのかと素朴な疑問。
 第3章 キャンディ時代とそれ以降[16~20世紀]。如来立像は象牙製。なんと贅沢な。なぜか突然巨大な浣腸器が!なんじゃこりゃ?と思ったら象用と解説にあり。横には耳かき。この章は豪華な装飾を施した日用品の展示に重きが置かれています。その分、前2章との関連が希薄でかなり戸惑います。

 官能的で躍動的な仏様の姿は日本では見られないもので、とても魅力的です。その一方でユーモアあるお姿や衣紋の彫り込み等は日本との共通項に思えます。でも、浣腸器にすべて持っていかれました。スリランカは紅茶の国から象の国に印象が変わりました。

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