2008年11月09日

●鎌倉アートツアー in Autumn

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 平塚から折り返して鎌倉へ。今回はホリデー・パスを利用しているので、寄り道しても料金は同じ。

 鏑木清方記念美術館初訪問。小町通りの人出に驚きつつも左手の路地へ折れて到着。雪ノ下という地名が素敵。牛込矢来町の画室を模したという画室は創作意欲をかきたてそうで羨ましい。

 特別展「清方の芝居絵」を観ました。清方生誕130年記念だそうです。展示スペースはこじんまりとしていていますが、引出式の展示箱があったりして面白いです。旧家にお邪魔して、コレクションを閲覧させてもらう気分です。チラシも見開きで展示作を紹介しており、とても親切。墨のぼかしを巧みに使った助六がカッコイイ。芝居を取材した「寺小屋画帖」のスケッチも巧みで、話の筋がとても分かり易くまとめてあります。
 なかでも目を引くのが、「対牛楼の旦開野」。色彩美しい美人画なのですが、その正体は八犬士の一人、犬坂毛野。雑誌の折込みピンナップを引き出した形での展示で、当時の文化が偲ばれます。その美しさに魅惑されながらも、でも男だしと唸ったんでしょうか。

 鶴岡八幡宮へ出て、鎌倉国宝館へ。特別展「鎌倉の精華」を観ました。
 1 彫刻 I:開館当初の出陳彫刻。鎌倉国宝館開館八十周年を記念して、開館当時の展示を再現しているとのこと。「地蔵菩薩立像」。照明の当たり具合で、見下すような冷たい視線を感じます。一人一人に暖かい視線を送っていたんじゃキリがないし、自分で頑張れと天界から見守るのが本来の立ち位置だよなと妙に納得。「十大弟子立像」。お手ごろサイズな十体揃い。写実的な造形が人間ぽくて親しみが湧く、というよりそこらのおっさんが並んでいる感じ。アーナンダは若々しく威厳を保つ。「水月観音菩薩坐像」。これまたお手ごろサイズの寛いだ坐像。細部まで良くできています。先日の「スリランカ展」の金ピカ観音様を思い出します。
 1 彫刻 II:鎌倉彫刻の至宝。「愛染明王坐像」。本展の一押し。怒髪天を突く髪型に憤怒の形相、手に持つ武具も迫力あり、悪を叩き潰しそうな威厳に満ちています。二重の牙(?)も怖い。「明庵栄西坐像」。写実を重んじる鎌倉彫刻の中で、頭が異様に大きい。ちょっと妖怪じみていてインパクト大。「上杉重房坐像」。大きく開いた足組みがすごい。教科書で見た気がしますが、本物と御対面。
 以降、2 絵画、3 書跡、4 工芸と続きます。

 さらに足を伸ばして、神奈川県立近代美術館へ。近代建築の名作ながら、外装アスベストに耐震問題、建物の老朽化と課題も多い。「岡村桂三郎展」を観ました。全く未知の方なのですが、「第4回 東山魁夷記念 日経日本画大賞」を受賞された方とのことで興味が湧きました。

 展示室に入ると、天井ギリギリまで立ち上がる巨大な木の壁が館内を埋め尽くします。厚みは5cmほど。それらが丁番でつながれて屏風のように連続します。作品を置くのでなく、展示室=作品。その表層は鱗のような微細なパターンが彫り込まれ、茶色系で着色されています。全体を見通せない圧迫感と、圧倒的な存在感、暗く抑えた照明と相まって、怪物の胎内に迷い込んだよう。恐る恐る進んでいくと、双頭の怪物が睨み合いながら牙を剥いています。正確には複数の作品が連続して配置されているのですが、何のキャプションも示さない展示方法から推して、この胎内を彷徨う感じこそが作家の意図だと思います。これが日本画。。。しばし言葉を失います。日本画の新境地を開くに相応しい大作。でも展示できるところは限られる。。。そのうちにいくつかは高橋コレクションと知って、その守備範囲の広さに感嘆。展示するあてはあるんだろうか。。。

 駅へ戻る途中、若宮大路にて。三河屋本店。この右手には運搬用のトロッコ軌道。歴史的建造物が現役で機能している姿に、歴史の厚みを感じます。
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Posted by mizdesign at 2008年11月09日 18:44
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コメント

こちらにも失礼します。鎌倉を満喫なさったようですね。私も平塚の日に鎌倉へと繰り出しましたが、時間切れで国宝館はあきらめました。ですが近代美術館の岡村展は想像以上に良かったです。

鏑木清方美術館は前回鎌倉を廻った際に行きました。
鎌倉の表通りはいつも人でいっぱいですが、裏へ入ると静かなのですね。美術館のたたずまいも素敵でした。

>歴史的建造物が現役で機能している姿に、歴史の厚み

電車ですと、横須賀線で大船から少し森へ入ると雰囲気が一変しますよね。あの感じが大好きです。

Posted by はろるど at 2008年11月10日 21:59

はろるど様>
こんにちは。
室内丸ごと作品化している岡村展はびっくりしました。
日本画大賞も受賞されて、とてもタイムリーですね。

鎌倉って大船に比べると駅の規模はぜんぜん小さいのに、あの人出にはびっくりします。

Posted by mizdesign at 2008年11月11日 06:54
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