2008年10月25日
●「八犬伝の世界」展@千葉市美術館
千葉市美術館で開催中の「八犬伝の世界」展を観ました。
現代に続くロングセラー文学の世界を、江戸時代の浮世絵を中心に紹介するという点では、横浜美術館で開催中の「源氏物語の1000年」展と着眼点が似ています。あちらがかなり派手なプロモーションと内容(狩野考信「紫式部図」、岩佐又兵衛、上村松園「焔(大下図)」は強烈)で集客を狙う(でもなぜ横浜?)のに対して、こちらはいわばご当地もの。その差異に、両館の特徴を感じます。
1.「南総里見八犬伝」の誕生と曲亭馬琴。曲亭馬琴作 柳川重信ほか画「南総里見八犬伝」の全106冊揃+貸本用の木箱。これが貸本屋の必須アイテムだったという解説に、妙に親近感が湧く。大きく絵がありその隙間に字を詰め込む構成は、マンガに本当に近い。それにしても足掛け29年、全106冊は本当に大長編。読者層は入れ替わったのだろうか?笠亭仙果作 三代目歌川豊国等画「雪梅芳譚 犬の草紙」。仮名書きダイジェスト版。八犬伝の普及に大いに役立ったそうで、なるほど。一過性のブームから、現代へと続くロングセラーへの第一歩。犬の意匠が可愛い。
2.錦絵「犬の草紙」にみる八犬伝の登場人物たち。登場人物たちのブロマイド集。ダイジェスト版+ブロマイドでキャラクター人気を確立。現代だとマンガとビジュアルムック本のメディアミックス戦略。
3.八犬伝の名シーン。3大名シーンがあるらしいですが、No.1は芳流閣の戦い。歌川国芳「八犬伝之内芳流閣」大判錦絵3枚続は迫力十分。月岡芳年「芳流閣両雄動」大判竪2枚続の縦長構図も動きと緊迫感があって良い。現代なら大人気長編伝奇ロマン待望のアニメ化!という感じ。
4.八剣士が揃う。ブロマイドパート2。八剣士揃いもの。
5.八犬伝を熱演する役者たち。ついに待望の舞台化!人気スター大量出演!浮世絵の題材も舞台に取材したものが多いそうなので、じっさいには順番が逆。
6.八犬伝に遊ぶ。河鍋暁斎「新板福神八犬傳之図」。楽しげな八福神、千鳥の代わりに鶴が飛ぶ。
7.八犬伝、現代に生きる-進化するイメージ-。菱田春草「伏姫」から、辻村ジュサブロー「新八犬伝」人形、碧也ぴんく漫画「八犬伝」、スーパー歌舞伎「南総里見八犬伝」まで。現代において各メディアで再構築される「八犬伝」の軌跡。八犬伝は少年漫画だと思っているので、碧也ぴんくさんの漫画はちょっと意外。読者層は女の子が多そう。新しいターゲット層を掘り起こしたところで幕。
美術館というよりも、漫画記念館に迷い込んだ気がする展示でした。
中央公園では「ちば YOSAKOI 2008」前夜祭が開催中。数十人単位で踊りを披露。次の登場チームは舞台裏の歩道で待機していて、ちょっと不思議な場所と化していました。
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こんばんは。
楽しめましたか?
八犬伝のストーリーを知りたくなったので、
碧也ぴんくさんのマンガ本を古本で入手しました。
秋の夜長の楽しみといたします。
ところで、同時開催のナンバーズは如何でした?
こんにちは。
ご当地ものゆえに
多分気合入っているのだろうと
ある程度「覚悟」して出かけたのですが
それを軽く上回る展示内容にビックリ。
ここの美術館半端じゃないですね。
meme様>
こんにちは。
八犬伝は何度か読もうとして挫折しているので、今回の展示はビジュアル面が充実していて良かったです。
ナンバーズは蕭白の上手さと、百鳥図、群蝶図の美しさが印象に残りました。それと摘水軒コレクションはやっぱり柏に展示する箱を作って欲しいと思いました。
Tak様>
こんにちは。
千葉市美は浮世絵コレクションと企画力に定評がある美術館として定着してきましたね。
そういえば、会田さんが絡んだイベントがあるみたいですね。