2008年09月24日
●近代日本の巨匠たち@出光美術館
出光美術館で開催中の「近代日本の巨匠たち」を観ました。観易さに配慮した会場構成と練りこまれた照明計画、そして何より優れたコレクション。私的リピーターランキング上位にランクインするお気に入りの場所です。
「1.近代のめざめ」。会場入ってすぐに平櫛田中「張果像」。そのリアルな造形もさることながら、木彫りの地に超精密な透かし彫りのように書き込まれた着物柄に目が釘付け。本展の顔、上村松園「灯」。髪飾りの鮮やかな色彩、透ける髪留め、首まわりの刺繍模様の書き込み、袖口からのぞく白地に桜の花びらの描写。もうたまりません。富岡鉄斎「陽羨名壺図巻」。色味豊かで楽しい。坂本繁二郎「水指」。淡い虹色の光が満ちる美しさ。本展の主役の一人、小杉放庵「泰山木」。朱を背に、輪郭のない淡く確かな存在。同じく「金時遊行」。踊る孫と、それを目を細めて見守る放庵の姿が目に浮かびます。
「2.茶のいろどり」。本展の主役の2人目、板谷波山「彩磁桔梗文水差」。白地の切れ間から桔梗がのぞくパターンと色彩の美しさ。
「併設 仙崖展」。なぜか唐突に仙崖。指月布袋様の楽しげなお姿に、見る側も癒されます。「老人六歌仙画賛」。白雪姫の七人の小人みたい。「西都府懐古画賛」。染井、大宰府と九州の景色が続きます。観世音寺に行きたい。
「3.和のモダニズム」、「4.近代陶芸のパイオニア」を経て、展示は「1.近代のめざめ」に戻ります。小杉放庵「銀鶏春光」。思わせぶりに翼を持ち上げるポーズ、間のとり方。同じく「山中秋意」。グラフィカルな美しさに満ちた構成美、点描のような紅葉の赤が効果的。最後に「さんたくろす」。日本画に迷い込んだサンタクロース。微笑ましいファンタジーワールド!
松園の灯も素晴らしいですが、個人的には本展の主役は放庵でした。王道的な「山中秋意」からユーモアたっぷりな「さんたくろす」まで、幅広い活動と日本画の継承者としての腕前が遺憾なく発揮されています。
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