2008年08月04日

●ルオー大回顧展@出光美術館

 出光美術館で開催中の「ルオー大回顧展」を観ました。

 I 初期のグワッシュ・パステル・水彩画・油彩画(1897-1919)。「サロンにてI または 劇場にて」。「作品そっちのけでしゃべりに夢中な婦人たち」という解説文が、お隣でお喋りに夢中なご婦人たちの一行にぴったりで可笑しかった。サロンってこんな感じなんだ。数点の水彩画を経て、あっという間にルオー独特の、太い輪郭線で色彩を縁取る世界へ。素人目には、以降画風は変わらないように見えます。専属画商との出会いと合わせて、絵画制作に没頭する人生だったのかと思います。

 II 中期の油彩画(1920-1934)。「磔刑」。単純化され太く描かれたパーツ群がネオンみたい。「アニタ」。黒く太い輪郭、青いバック、煉瓦のような色彩。濃厚で雑然、心に残る絵画世界。

 III 銅版画集《ミセレーレ》と版画集。《ユビュおやじの再生》。ミセレーレの出版と引き換えに引き受けた仕事。薄く積層した透明感あるマチエール。銅版画集《ミセレーレ》。後期は第2部が展示中。「法は過酷、されど法」。モノクロの塑像のよう。

 IV 連作油彩画《受難》と色刷版画集。連作油彩画《受難》。「受難」、「聖顔」。透明感ある積層から、絵具を盛り上げた立体的な世界へ。黒が沈んで谷のよう。黒く隈取られ、ホッペが膨らんだ顔。「燃ゆる灯火の芯のごとく…」。人のきらめき。奥に引き込まれる。「ここに、一つの世界が幕を下ろして消え失せ、別の世界が生まれる」。三つの十字架。劇場版エヴァンゲリオンのラストシーンを思い出す。そういえば、新劇場版の第2作はどうなったんだろう。「マリアよ、あなたの息子は十字架の上で殺されるのです」。こちらもエヴァ。「出現」(墓からでるキリスト)。復活!手を広げるキリスト、歓喜する人々。「聖顔」。正方形の画布。

 V 後期の油彩画(1935-1956)。「バッカス祭」。セザンヌを髣髴させる画面。前期にも水浴が2枚あったので、生涯ゼザンヌを敬愛していたのだろう。「キリスト(とパリサイ人たち)」。目を伏せるキリスト。左に目を見開く兵士。「受難(うつむいた)」。黒い涙を流すキリスト。「たそがれ または 鐘楼」。ムンクの街。「聖書の風景」。絵具の盛り上がりが藁積みのよう。

 黒く太い輪郭線と立体作品の如き色彩の盛り上がりが作り出す、圧倒的かつ原始的なパワーを感じる一時でした。

Posted by mizdesign at 20:53 | Comments [3] | Trackbacks [2]