2008年07月09日
●金沢21世紀美術館
絶対行きたい(というかとっとと行け)美術館ベストスリー最後の一つ、金沢21世紀美術館。開館4年目にして、ようやく訪問。設計はSANAA(妹島和世・西沢立衛)。
周辺を建物に囲まれた立地、高さを抑えた設計、円形のガラスファサードで囲まれた顔のないつくり。中に入ると「ワッ!」と広がる雑踏のざわめき。屋根とガラス壁で規定された街路=美術館という図式とその体現は衝撃的。4年を経てこれなので、登場時の驚きは想像を絶する。美術館と都市の関係を「拡張する」という点で、歴史に残る名作。
美術館の顔、レアンドロ・エルリッヒ「スイミングプール」。ガラスの回廊に囲まれた中庭で演じられる視線の交錯劇。装置を活かしきる舞台設定が何より秀逸。
白いハコ=展示室。美術館としてはカナメ、ここでは道端の露店みたいなもの?見た目よりも観客との関係性が大事。村上隆「シーブリーズ」の時間限定イベント、エルネスト・ネト「身体、宇宙船、精神」の弱く美しく繊細な空間体験は、ここで過ごした記憶を脳裏に焼き付ける。
ガラスのエレベーター。車椅子用押ボタンの「上」に健常者用ボタンを配するのを嫌い、文字通り支柱の上にボタンを配置。かご内奥手の操作ボタンも、コの字フレームの三方枠に車椅子用と健常者用を同様に納める。ついでにインジケーターパネルも途中で止めて、トーテムポール状に建てる。デザイン領域を押し広げるという点で、とても興味深い。
中と外を規定する円弧状ガラス面。中と外は分断され、透明性でもって再接続される。
建物はけっこう安っぽくて意外でした(安く作ったのではない)。それも含めて実現した「広場のような空間」、人々が行き交う景色。その進化の歴史は、青森県立美術館、十和田市現代美術館へと続きます。それにモエレ沼公園を加えて、新・絶対行きたい美術館ベストスリーです。