2008年07月01日
●東京アートツアー 木場-松涛-六本木
先週末の東京アートツアーの記録。
まずは東京都現代美術館で「屋上庭園」を観ました。
各所で内海聖史「三千世界」の評判を聞くので、「屋上庭園」をテーマにした現代美術展だと思ったら全然違った。「庭」を横糸に、「時間」を縦糸に綴る間口の広い展示でした。
「I グロテスクの庭」。現代アレンジの装飾を散りばめた内なる庭園。白地に黒い装飾が適度にさっぱりしていて観易い。「グロテスク」さが弱まってむしろマイナス?
「VIII 記憶の中の庭」。切り抜いた紙の模型、車、。降りしきる雪は紙吹雪?太さの安定しない手書きの輪郭線で縁取られた空間は、ペラペラな嘘っぽさと存在の確かさが共存して見飽きない。
「IX 天空にひろがる庭」。内海聖史《三千世界》と《色彩の下》。キレイなインスタレーション。
「X 庭をつくる」。さりげなく置かれた、須田悦弘の木彫生花(?)。直島で観た「碁会所」を思い出した。
柔らかくいえば間口が広く、一言で言えば散漫に思える展示でしたところで「屋上」はどうしたんだ?。
続いて「オスカール大岩:夢見る世界」。こちらはコッテリ大画面のフルカラー作品群。
《ホワイト(オス)カー (森)》。古い町並みと幻想的な空。ファンタジックな美しさと、細密な写実描写が、その美しさの先にどんな意図があるのか思いを馳せる。作家の術中にはまる心地良さ。
《バナナ》。そのまんまなキャンパス。
《くじらI》、《くじらII》。奥へ長い空間を上手く使った、1対の展示。潜水艦の解剖図かと思った。平面作品でありながら立体を感じさせる展示方法が、建築を学んだオスカールさんらしいと思った。それが徐々に平面のみの表現に移行していくのも、画家としての自信の表れかと興味深かった。
《野良犬》。廃墟、お花畑、幻影のような犬。その異様な組合せに疑問を抱きつつも、圧倒的な美しさに吸い込まれそう。
《ガーデニング(マンハッタン)》。廃墟のような大都市に重なるお花畑。壮大な墓地に生けた花にも見える。美しく、不気味。でもやっぱりキレイ。
《ファイヤーショップ》。24h営業の火(=戦争)屋。花火屋だったら良かったのだけれど。
2階に上がって映像。二つのインタビューと幾つかの作品紹介。インタビューが興味深かった。アトリエの様子も良い。通路に制作アイデアのようなスケッチとコラージュ。イメージに合うシーンを求めるように、貼り合わせられる写真、描き込まれるスケッチ。画面を作っているというスタンスが伝わってきた。コッテリ大画面のフルカラー作品群に圧倒されました。
現美の大味な空間とも良くマッチしていた。
続いて松涛美術館で、噂の「大正の鬼才・河野通勢展」を観ました。聞きしに勝る探究心と技巧の極地。以下、展示リストに書いたメモ書きです。けっこう意味不明。
I.裾花川と初期風景画。「長野風景(長野の近郊)」。うねる自然、マンガチックな顔。「川岸の柳」。勢いあるタッチ。上手い。「丘の上から俯瞰する」。寝そべる人。河野のペンが景色を塗り替える。「馬車と汽車」。汽車、人、馬車すらも塗り替える。
II.自画像と表現の展開。「バッカナール(バッカス祭)」。うねうねした線。西洋も描く。「好子像」。ニキビ、湿疹の写実。mkは何?「虞美人化粧之図」。中国。細い目。「髭男の習作」。上手い!ひげのおっさん。「小さい庭」。屋上庭園にぴったり。「怪物の頭」。細かい描画、描法に神が宿る。
III.聖書物語。「キリスト誕生礼拝の図」。つぶらな瞳。「十字架を背負うキリスト」。コミカルな表情。奇異な表情の人々。「日本武尊」。East meets west。
IV.芝居と風俗。「竹林之七妍」。すごい自信、春章。「蒙古襲来之図」。洛中洛外?「私も何か御役に立つそうです」。豚にロゴ。「三人車中」。せつない?デフォルメされた顔、口。「娘時代」。マトリョーシカ。「豚と紳士」。風刺画。「桃源郷に遊ぶ人々」。キレイな漢文。何でもこなす。
VI.挿絵と装丁。「『ノアの箱舟』口絵原画(左)(右)」。マンガ。雷鳴とどろき水妖怪が現れる。
景色を塗り替えてしまうような躍動する自然描写から始まり、多方面に興味を広げ、キリスト教宗教画を手がけ、そして挿絵の世界へ。一つの道に絞れば大成したであろう圧倒的な画力を持って、興味の赴くままに駆け抜けた一代記。異様に濃い展示でした。
建築家白井晟一、独自の言語で構成された重厚で濃密な建物は、美術品を納める箱としてとても良く機能していて圧倒的。展示室内にあるカフェでいただくケーキセットと紅茶の美味しさも絶品。これぞ美術館という一つの峰を極めている。
そして21_21デザインサイト。「チョコレート展」、「water展」と連敗続き。今度は凄いという噂に惹かれて三度訪問。第3回企画展 三宅一生ディレクション「XXIc.-21世紀人」を観ました。
ティム・ホーキンソン「ドラゴン」。偶然性が産み出したドラゴン。向かいに銀色の大きな円盤が展示してあって、それも同作家の作品とのこと。昨日送られてきたばかりでキャプションもないという偶発性が可笑しかった(スタッフの方に質問して知った)。こちらはタバコの箱の銀紙を繋ぎ合わせて作ったそうです。
三宅一生「21世紀の神話」。梱包紙が生み出すファンタジー。その手間と観客を包み込むような包容力に脱帽。
藤原大+ISSEY MIYAKE Creative Room「ザ・ウィンド」。dysonの掃除機を弄って、掃除機パーツと衣装パーツの双展示を見比べて、21世紀人の群れへ。見立てと創意と工夫が織り成すジェットコースターショー。面白い。
ベン・ウィルソン「モノサイクル」。淡々と続く開発プロセス、そして完成!夢のモノサイクルが走る!と思ったら、後ろで支える手が映っていて可笑しかった。
安藤空間を全く意識させない空間の密度に快哉。ようやくギャラリーとして機能し始めたと思った。