2008年06月03日
●東京アートツアー_0531 (乃木坂編)
代々木の次は乃木坂へ。
まずは国立新美術館。「アボリジニが生んだ天才画家 エミリー・ウングワレー展」を観ました。副題は「赤い大地の奇跡-5万年の夢に導かれ、彼女は絵筆をとった。」。およそ美術界の動向と縁遠いオーストラリア中部、ユートピアと名づけられた地域に生まれ、ほぼ生涯をその地で過ごしたアボリジニの女性「エミリー・ウングワレー」の回顧展。彼女がカンバスに描き始めるのは70代後半。そして亡くなるまでの8年間に、3千点とも4千点ともいわれる数の作品を残したそうです。
バティック(ろうけつ染め)の線的な要素の上に、箔押しするような点々。その独特のリズムと明るい色彩から始まり、線を埋め尽くすほどに密実な点描へ。
《カーメ-夏のアウェリェ》。全面を覆う点描は、抽象にも見え、具象にも見え、和風にも見え。
《大地の創造》。故郷の景色を大胆な画面構成と色彩で描く大作。一見抽象的な線や点が、実は彼女にとってかけがえのない景色を表している。その素朴さと飛躍のアンバランスさがなにより魅力。
《ビッグ・ヤム・ドリーミング》。縦横無尽に伸び絡み合うヤムイモの根。シンプルで明快な白と黒。そして複雑で入り組んだ線。
全編を通して感じるのは、溢れるイマジネーションをただキャンパスに転写してゆく天性の眼と技。それを西洋絵画の概念で定義しようと、解説が必死に追いかけていきます。会場構成もシンプルにまとまっており、新美術館で観た中で白眉な仕上り。
お次は「虎屋ギャラリー」へ。こちらで知った「源氏物語と和菓子展」を観ました。物語未読了の未熟者なので、興味はもっぱらお菓子へ。「若紫」の伏籠が抜群に良かったです。「波」の表現もなかなか。
「虎屋菓寮」であんみつ+抹茶グラッセをいただきました。写真は黒蜜ですが、頼んだのは白蜜です。このあと取り替えてもらいました。まったり濃厚で美味しかったです。和菓子はやっぱりこうでなくっちゃと勝手に納得。
そして「ギャラリー間」へ。「杉本貴志展 水の茶室・鉄の茶室」を観ました。ハイアットリージェンシー京都のラウンジ改装で、紙細工のような空間を創出。建築誌、デザイン誌等を賑わせたスーパーポテトの手がける茶室とのことで興味が湧きました。本日最終日で、けっこうな人の入り。ほとんどが建築を学ぶ学生っぽいのは昔と同じ。残念ながら、水の茶室は撮影不可。最終日は混むから?
鉄の茶室。廃鉄を組み合わせて貼り混ぜな感じを出したしつらえ。ムシロ敷きの床が良い感じ。茶室という「形式」を守りつつ、そのハコの崩して楽しむ「遊び」と読んでみた。重い鉄を薄くペラペラに見せ、貼り混ぜのランダムさがそれを助長する。
水の茶室。暗闇に水滴の滴るスクリーン。水滴の一本一本に光源を仕込んで、闇に浮かび上がる。幽玄で視覚的に美しい。茶室を自然との対話と考えると、暗幕で囲まれた密室に引き篭もるような構成に、個人的には?。
流行の商業デザインで作った茶室に見えました。伝統の打破という理解で良いのでしょうか。茶道については課題として持ち越し。
中庭にあったオブジェ。鉄と苔と青紅葉とコンクリートの壁。そして雨。
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今日、自宅に稽古にこられた70代の女性が、この二つのお茶会に参加されたとのことで、感想を伺いました。
1.鉄の茶室: 中では檻に入った猿のようだった!外から見ると、動物園の猿がお点前しているようだった。こちらはサンザンな評判。
2.水の茶室: 暗くなかったとのこと。おそらくカーテンが開いていたのでしょう。水の壁は触ってみると、水ではなかった。こちらは評判は悪くなかったようです。
とら様
こんにちは。
水の茶室は良いですか。なるほど。
やっぱり使うときは、灯り採りにカーテンを開くのでしょうか。
興味深いコメントありがとうございます!
こんにちは。。。
あれっ先日書いたコメントが…
パソコンの調子また良くありません最近。
ギャラリー間は行こう行こうと思いながら
結局行けずじまい。無念。
Tak様>
こんにちは。
ギャラリー間の今回の企画は、けっこう話題性があったみたいですね。
虎屋の和菓子とコンビネーション良かったです。
私もこれ見に行きましたが「水」の方は結構あり
かなぁ、と思いました(ま、今までこう言う建築家
やデザイナーがデザインする茶室と言う企画あまり
良いと思ったのが無かったので、余計)。
茶室って、伝統が長い物の中では新しい事を試す
事の出来る精神も持っていると思うので規範から
敢えて何かを外すのもあり、だなぁと。
悔やまれるのは茶会をやってる所を、見に行けな
かった事です。茶室は使われてこそ完成する物で
しょうから。それ見ないとなんとも言い切れず。
KIN様>
こんにちは。
水の茶室での茶会は見たかったですね。できることなら体験したかった。
印象が一変しそうですね。
エミリー、最初は何だ?とバカにして
いたのですが、実際に見たら、ステキでした。
一村雨様>
こんばんは。
エミリー・ウングワレー展は、解説は奇妙でしたが、内容はとても良かったと思います。
豊富な予備知識で堀を埋めて観る展示も良いですが、何もなくただ作品と向かい合う見方も好きです。
もっとも、その背後に浮かぶ政治的背景抜きで、「観た」といえるかは別の話でしょうが。