2008年06月17日
●大阪雑記
宿泊先は大阪。考えてみれば、大阪に立ち寄るのも10年ぶりくらい。ケーキセットを食べて一休みして、宿舎へ戻る。
小学校、中学校と同級生だった友人と、25年ぶりくらいに会いました。博士号をとったという近況に驚いたり、メタボな体形に会社員だねーと思ったり。大学の同級生と同じ職場、同じプロジェクトに参加したことがあると聞いてビックリしたり。
朝のホテルからの眺め。梅田スカイビルが朝陽に輝く。思ってたよりずっと格好良い。
バイキング形式の朝食。窓際の席に座ったら、自転車が植え込みに投げ込んであった。泥酔した人が植え込みに突っ込んだんだろうか。
●国宝 法隆寺金堂展@奈良国立博物館、法隆寺
愛知の次は奈良へ。待ちに待った「国宝 法隆寺金堂展」開幕。
一時間ほど早めに現地入りして、東大寺裏参道辺りを散策。
南大門の金剛力士立像。やはり運慶、快慶といえば、この像。その筋骨隆々の威容は、質実剛健な鎌倉彫刻の傑作として申し分なし。
そして奈良博へ。開館後10分ほど経った様子。特に列もなく、スムーズに入館。
1,300年を超える歴史を持つ法隆寺金堂の中に納められた仏様たち。その尊顔を明るい照明の下で観られる、今世紀最後の機会。一連の再現壁画を一点と数えれば、展示数わずかに17点。うち国宝、重文14点。混雑というほどの状態でもなく、一時間くらいで観終わるかと入場。その異様に濃密な展示品の数々に、足が全く進まなくなりました。
はじめに飛天。かろうじて焼損を免れた、飛鳥の至宝。七星剣の彫りを眺めて、再現壁画へ。印刷ながら見ごたえ充分。ガンダーラ仏の影響が強いのか、とても写実的な描画、鮮やかな色彩。こんな壁画が金堂を荘厳していたかと思うと、もう悶絶。焼損は本当に残念無念の極み。でも想像するに足る再現画と会場構成に感謝。
そして四天王の一つ、多聞天。玉虫の羽を敷いたとある杖の透かし飾りはよく分かりませんが、金堂にいよいよ踏み込んだという興奮。うっすらと残る色彩。平坦なつくりの顔立ちに大陸からの影響を感じ、壁画の写実性との違いに文化交流盛んな飛鳥の往時を思う。ボリュームのとり方は素朴なのに、目が離せない。
その後ろに控える、阿弥陀三尊像。天蓋、台座、仏様が揃っての展示はこの像のみ。天蓋を見上げ、双眼鏡で細部を観ていくと首が痛くなりますが、それでも目が離せない。見上げすぎにご注意。後で出てくるもう一つの天蓋が低い位置に展示されているので、細部はそちらで観ることをお勧めします。台座の彩色はうっすらと分かる程度。他の台座の方が保存状態良いです。三点揃った迫力が最大の見所。
その左右に前記のみの展示、毘沙門天・吉祥天像が控えます。特筆すべきは、吉祥天の彩色の保存状態。とても鮮やかな赤い色彩は本当に綺麗で、他の展示品の三倍は長く観ていたと思います。後期の四天王だけで良いと思っていると、このお二人には永遠に会えません(今世紀最後の公開だし)。髪飾り、冠に嵌めこまれたガラス玉(?)等の細部もお見逃しなく。
左手にもう一体の四天王、広目天。赤外線(?)撮影による、往時のお髭のあるお顔と見比べられます。今の、ボリュームが明快に分かる状態もなかなか良いです。
中の間の釈迦三尊像の台座と天蓋が分けて展示されており、その御本尊は法隆寺上御堂に仮安置中です。揃って観たいという気持ちは当然ありますが、お宝の展示を巡る綱引きを想像しても詮無いこと。単体でも見応えあるので、じっくりと観ます。天蓋の上に乗っている飛天の楽器を見比べ、鏡に写る天蓋裏の彩色を眺め、天蓋の裾に吊ってある装飾品の細部を間近に観る。
展示の照明は東博にならったのか、ずいぶんと垢抜けています。ガラス等の隔ての全くない展示方法も大胆。決して広くない室内で、混雑時に観客がぶつかったりしないかと心配になるほど。
一巡する頃には、精も根も尽き果てました。双眼鏡必須、充分な体調でのご鑑賞を強くお勧めします。前期、後期どちらがお薦めかは後期未見につき分かりかねますが、吉祥天の色彩美にこだわるか、四天王勢揃いにこだわるかで分かれるかと思います。まず前期に行って、興味が湧けば後期も行くのがベストでしょう。
公園向かいの「志津香」で釜飯を食べて一休み。
再度奈良博に戻って、特別陳列「建築を表現する―弥生時代から平安時代―」、平常展「仏教美術の名品」を観ました。残念ながら午前中の消耗と眠気で、集中力は散漫。信貴山縁起絵巻、一遍聖絵、六道絵、天寿国繍帳といった名品をかろうじて目に焼き付けました。
そして法隆寺へ。金堂展の半券で割引があります。
バスで移動したのが失敗。奈良公園から法隆寺まで1時間ほどですが、渋滞があってさらに30分かかりました。途中、運転手さんが「法隆寺へ行く方は、JR奈良駅からJRで行かれた方が早いです」とアナウンスをして下さったのですが、疲れていたので乗り換えなしのこちらを選びました。帰りはJRを利用しましたが、その速さと快適さにビックリしました。移動は絶対にJRをお薦めします。
拝観時間終了が迫る法隆寺で、金堂釈迦三尊像を観るべく一目散に西院へ。講堂の裏手にある上御堂でようやく御対面。奈良博で観た天蓋と台座を思い浮かべつつ、平坦な顔立ちが特徴の三尊像をじっくりと観ました。衣の表現も平坦ながら、それがかえって印象を深める。聖徳太子と現代を直接つなぐお姿に感無量。その右には薬師如来像。こちらの方が顔立ちが上下に若干締まっていて好印象。御名前は違えど、両手に結ぶ印は同じ。次から次へと舞い込む注文に答えるべく、事前に仏様の造立を進め、注文主の要望に応じて名前をつけ、顔立ちを整える当時の生産体制を想像しました。
大宝蔵院でズラリと並ぶ名宝に後ろ髪を惹かれながら、見所だけをとばしとばし観ていきます。有名な夢違観音、奈良博に展示されていた複製よりも状態が良く見える玉虫厨子、橘婦人厨子、金堂壁画の小片。そして何より百済観音。横から見ると、スラリと流れるような体の線が本当に美しい。
時間切れで東院は行けませんでしたが、それでもとても濃密で充実した一日でした。
追記:四天王残りの二体は、法隆寺で公開中とのこと。そうすると、毘沙門天・吉祥天像も後期は法隆寺で公開するかも(未確認)。もしそうなら、四天王を揃えて観られる後期の方がお薦めでしょう。ただし、人出も多いと予想します。